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11.カフェが完成して経営者になりました! 商談をします!
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やったー! とうとう念願のカフェが完成したわ!
発注業者からの報告を受けて、私は拳を天につきあげる。思えば雨の日も風の日もあった。なぜか攫われて副騎士団長に助けられたり、その後お父様に事業継続を続けることを説得するのに書斎を何度往復したことか!(お父様がご心配になられたのは当然だけど……。でも王国側で警備を強化して下さったこともあって、最終的には許可してくれたのだ)
ただし、建物が出来ても大事なのはこれからだ。
やっぱり内装は大事で、特に椅子やテーブルなんかはお店の雰囲気を決める。
予算は私の財布から出ている(自立するためにやっているんだから当たり前だ)ので、価格交渉に妥協は許されない。
と言うわけで、本日はお城に備品業者を招いて商談を行っていた。相手は優しそうな中年の商人である。
内心としては、ここの業者しか取り扱っていない商品であるため、発注は絶対ここにしたいと思っているのだが、価格が折り合わないのだ。完全に足元を見られているわね。
でも、それはよくあること。女だからとかもあんまり関係ない。駆け出しの事業者なんて、公爵家の令嬢かどうかなんてお構いなく、吹っ掛けてくるものだ。お父様の商談に付いて行くことが多かった私としてはそのことをよく知っている。むしろ、お互いが無茶な要求をしてからが、本当の商談まである。
「そちらで取り扱っていらっしゃるテーブル。本当に素敵ですね。今度作ったカフェにぴったりのイメージです。購入を前向きに検討したいと思っているのですが」
購入すると言ってしまっては言い値になってしまうので絶対ダメである。ああ、せめてもう一社くらい取り扱い業者があれば競合させられるというのに!
「ありがとうございます。私どもの商品は隣国より取り寄せた一点ものばかり。それに目をつけるとは、さすが公爵家の御令嬢アイリーン様はお目が高い。ご購入頂ける名誉に感激しているところでございます」
翻訳すると、値引き何てありえないぞ、と言ったところかな。
でも、丁寧な口調で微笑みを絶やさない。両者とも。だってこれは真剣勝負だから。余裕がない方が負ける予算をめぐる勝負だから!
戦いはここからだ!
「とはいえ、まだこの国では有名なブランドにはなっていない面もあると思いますが? あの一等地のカフェで使用されれば、それはそれは人々の目につくことでしょう」
悪くない提案じゃない?
「はっはっは、おっしゃられる通りです。ただ、他にも注文が来ている状態ですのでな。あそこだけが一等地と言うわけでもありませんし」
マジ⁉ どこの誰よ⁉ でもブラフかもしんないわね。ちょっとつついてみる?
「まぁそうなの? 先約があるのなら仕方ありませんわね。仕方ありません、直接、隣国の商業ギルドへお声がけしてみようかしら?」
「い、いえいえ。もちろんアイリーン様を優先するつもりですとも。はっはっは」
おや? さっきのブラフっぽいわねー。オッケー。ただ、あんまり買い叩くのは良くない。もう少し値引き交渉しようかと思ったけど、多少はしょうがないわねー。よし。
「あなたのところでは備品だけではなくて、手広く他の商品も取り扱っているでしょう? 内装関係や植栽の関係なんかも関連業者になかったかしら?」
「ええ、そうです。いや、それにしてもよくぞご存じで」
こんな小娘が、って顔ねえ。お父様にくっついて色々聞いていたおかげよね。
「内装と備品のレイアウトと、植栽のイメージを統一したいのよ。この意味分かる?」
「そのあたりも我がグループにご発注頂けると?」
「うん、そう」
これは別に思い付きではない。元々こういう交渉ができないかなと思って、そのための予算も確保している。あえて植栽の工事を遅らせたのは、そのためである。
「悪くないですな」
「あら、ほんと?」
「ええ、備品の粗利益はそれほど高くありませんからね。植栽の工事関連の利益は大きい。それに、カフェの雰囲気を統一するために、我がグループに一括して任せてもらった方が良い、というご提案も筋が通っています。職人たちも仕事をするなら一流のものを作りたいと考えますからね。そして、我がグループの利益も十分確保できると思います」
「ふふふ。ありがとう。じゃあ、商談成立ってことで?」
「もちろんです。アイリーンお嬢様。末永いお付き合いをお願いします」
「スプーンやフォークなんかの細かい備品はサービスしてくれないかしら?」
ピタ、と商人の動きが止まる、そしてその後、
「はっはっはっは! いや、いいでしょう! それくらいは別に問題ありません。いや、本当に凄いですな、アイリーン様は。公爵の御令嬢とは思えない交渉技術です。ぜひ、我がグループに欲しいところです」
「いえいえ。これくらいできないとカフェの経営なんてできっこありませんしね」
「その通りです。もし融資が必要でしたらご相談ください。我がグループは金融もやっておりますので」
「考えておくわ。二店舗目の時は頼らせて頂戴」
「アイリーン様でしたら、すぐでしょうな」
後日、書面を作成し双方のサインをすることを約束する。備品については値引きし、あわせて内装や植栽を注文する契約書である。商人を見送って私は人心地つく。
「いやぁ、運が良かったわねー」
私はテーブルに置かれた紅茶を飲みながら、ぼんやりと呟く。
公爵令嬢という地位を振り回せば、無理やりの値引きもできるのだが、それは私が今回の人生で自立して、自分の人生を取り戻す、というプランに反する。あくまで自分の予算、手腕、言葉、実力で物事を勝ち取って行かないといけない。今日はそのための大事な交渉だったと言って良いだろう。
正直、狙っていたテーブルなどの備品は、今日来てもらった業者しか取り扱っておらず、隣国の商人ギルドに掛け合っても、断られたり、あるいは開店までに間に合わない可能性もあった。だから、値引きは難しそうだなぁと半分諦めていて、最悪、割賦払いにしようとしていたのだ。
ただ、正直借金をするのは気が引けていたので、うまく予算内に収められないか資料を漁っていたところ、この業者がかなり手広くやっていることに気づいたのだ。建物の建設までは請け負っていないが、内装や植栽などの軽めの工事は請け負ってくれていることが分かった。ならば、そこもまとめて発注すれば、レイアウトのイメージも合うだろうし、何より値引きにも応じてくれそうである。これは実は渡りに船であった。よくあることなのだが、備品と内装のレイアウト、植栽などをバラバラの業者に発注した場合、ものすごくイメージがぐちゃぐちゃで統一感のないものが仕上がってくることがあるのだ。なので、出来れば一つの業者にお願いした方がいいのである。
だから今回は値引きできた上に、お店の外観、内観のクオリティを格段に上げることになるだろう。
「うふふふ、出来上がるのが楽しみだわ♬」
私は紅茶の香りを楽しみながら、もうすぐ出来上がる私だけの城に思いを馳《は》せたのだった。
ところで、
「あなたたちは何をしに来たんですか? 僕はアイリーンに会いに来たのですが?」
「私もそうです。殿下は公務があったはずと記憶していますが? で、バスク君、君もかい?」
「はい、そうです、ご無沙汰しております、キース様、クライブ様……。それで、皆さん偶然ここに居合わせて今の商談内容を聞いていたわけですね……」
「……」
無言。男三人。微妙な空気が流れていた。口火を切ったのはキース王太子殿下である。
「アイリーンはやはり素晴らしい女性ですね。公爵家の威光をかさにきて、商談をすることもできたでしょう。しかし、そうはしなかった。あくまで現実を見据え、そして予算や相手の利益なども含め考えた上で提案していました。あれほどの交渉が、我が国の貴族の中で出来る者がどれほどいるか……」
「はい。もちろん、才女であると思っていましたが、さすが私の心を奪った方だ。手練れの商人と互角にやりあう姿には、尊敬の念すら覚える」
「僕の義姉さんは本当に優しい方ですからね。無理強いをするつもりはないんでしょう。予算もご自身の品位保持費から捻出していると聞きます」
それを聞いて、殿下たちは大きく頷いた。
「さすが私の婚約者だな」
「ええ、さすが私の美しき鳥です」
「たった一人の愛する義姉が最高の女性であることを誇りに思います。もちろん、あと数年で義姉弟の関係ではなくなりますが」
バチバチバチバチバチ!
当の本人がいないところで。というか扉一つ隔てた場所で、それなりに大層な身分の男たちが微笑みながらも恋の争奪戦をやっているとはアイリーンは夢にも思わなかったのであった。
発注業者からの報告を受けて、私は拳を天につきあげる。思えば雨の日も風の日もあった。なぜか攫われて副騎士団長に助けられたり、その後お父様に事業継続を続けることを説得するのに書斎を何度往復したことか!(お父様がご心配になられたのは当然だけど……。でも王国側で警備を強化して下さったこともあって、最終的には許可してくれたのだ)
ただし、建物が出来ても大事なのはこれからだ。
やっぱり内装は大事で、特に椅子やテーブルなんかはお店の雰囲気を決める。
予算は私の財布から出ている(自立するためにやっているんだから当たり前だ)ので、価格交渉に妥協は許されない。
と言うわけで、本日はお城に備品業者を招いて商談を行っていた。相手は優しそうな中年の商人である。
内心としては、ここの業者しか取り扱っていない商品であるため、発注は絶対ここにしたいと思っているのだが、価格が折り合わないのだ。完全に足元を見られているわね。
でも、それはよくあること。女だからとかもあんまり関係ない。駆け出しの事業者なんて、公爵家の令嬢かどうかなんてお構いなく、吹っ掛けてくるものだ。お父様の商談に付いて行くことが多かった私としてはそのことをよく知っている。むしろ、お互いが無茶な要求をしてからが、本当の商談まである。
「そちらで取り扱っていらっしゃるテーブル。本当に素敵ですね。今度作ったカフェにぴったりのイメージです。購入を前向きに検討したいと思っているのですが」
購入すると言ってしまっては言い値になってしまうので絶対ダメである。ああ、せめてもう一社くらい取り扱い業者があれば競合させられるというのに!
「ありがとうございます。私どもの商品は隣国より取り寄せた一点ものばかり。それに目をつけるとは、さすが公爵家の御令嬢アイリーン様はお目が高い。ご購入頂ける名誉に感激しているところでございます」
翻訳すると、値引き何てありえないぞ、と言ったところかな。
でも、丁寧な口調で微笑みを絶やさない。両者とも。だってこれは真剣勝負だから。余裕がない方が負ける予算をめぐる勝負だから!
戦いはここからだ!
「とはいえ、まだこの国では有名なブランドにはなっていない面もあると思いますが? あの一等地のカフェで使用されれば、それはそれは人々の目につくことでしょう」
悪くない提案じゃない?
「はっはっは、おっしゃられる通りです。ただ、他にも注文が来ている状態ですのでな。あそこだけが一等地と言うわけでもありませんし」
マジ⁉ どこの誰よ⁉ でもブラフかもしんないわね。ちょっとつついてみる?
「まぁそうなの? 先約があるのなら仕方ありませんわね。仕方ありません、直接、隣国の商業ギルドへお声がけしてみようかしら?」
「い、いえいえ。もちろんアイリーン様を優先するつもりですとも。はっはっは」
おや? さっきのブラフっぽいわねー。オッケー。ただ、あんまり買い叩くのは良くない。もう少し値引き交渉しようかと思ったけど、多少はしょうがないわねー。よし。
「あなたのところでは備品だけではなくて、手広く他の商品も取り扱っているでしょう? 内装関係や植栽の関係なんかも関連業者になかったかしら?」
「ええ、そうです。いや、それにしてもよくぞご存じで」
こんな小娘が、って顔ねえ。お父様にくっついて色々聞いていたおかげよね。
「内装と備品のレイアウトと、植栽のイメージを統一したいのよ。この意味分かる?」
「そのあたりも我がグループにご発注頂けると?」
「うん、そう」
これは別に思い付きではない。元々こういう交渉ができないかなと思って、そのための予算も確保している。あえて植栽の工事を遅らせたのは、そのためである。
「悪くないですな」
「あら、ほんと?」
「ええ、備品の粗利益はそれほど高くありませんからね。植栽の工事関連の利益は大きい。それに、カフェの雰囲気を統一するために、我がグループに一括して任せてもらった方が良い、というご提案も筋が通っています。職人たちも仕事をするなら一流のものを作りたいと考えますからね。そして、我がグループの利益も十分確保できると思います」
「ふふふ。ありがとう。じゃあ、商談成立ってことで?」
「もちろんです。アイリーンお嬢様。末永いお付き合いをお願いします」
「スプーンやフォークなんかの細かい備品はサービスしてくれないかしら?」
ピタ、と商人の動きが止まる、そしてその後、
「はっはっはっは! いや、いいでしょう! それくらいは別に問題ありません。いや、本当に凄いですな、アイリーン様は。公爵の御令嬢とは思えない交渉技術です。ぜひ、我がグループに欲しいところです」
「いえいえ。これくらいできないとカフェの経営なんてできっこありませんしね」
「その通りです。もし融資が必要でしたらご相談ください。我がグループは金融もやっておりますので」
「考えておくわ。二店舗目の時は頼らせて頂戴」
「アイリーン様でしたら、すぐでしょうな」
後日、書面を作成し双方のサインをすることを約束する。備品については値引きし、あわせて内装や植栽を注文する契約書である。商人を見送って私は人心地つく。
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私はテーブルに置かれた紅茶を飲みながら、ぼんやりと呟く。
公爵令嬢という地位を振り回せば、無理やりの値引きもできるのだが、それは私が今回の人生で自立して、自分の人生を取り戻す、というプランに反する。あくまで自分の予算、手腕、言葉、実力で物事を勝ち取って行かないといけない。今日はそのための大事な交渉だったと言って良いだろう。
正直、狙っていたテーブルなどの備品は、今日来てもらった業者しか取り扱っておらず、隣国の商人ギルドに掛け合っても、断られたり、あるいは開店までに間に合わない可能性もあった。だから、値引きは難しそうだなぁと半分諦めていて、最悪、割賦払いにしようとしていたのだ。
ただ、正直借金をするのは気が引けていたので、うまく予算内に収められないか資料を漁っていたところ、この業者がかなり手広くやっていることに気づいたのだ。建物の建設までは請け負っていないが、内装や植栽などの軽めの工事は請け負ってくれていることが分かった。ならば、そこもまとめて発注すれば、レイアウトのイメージも合うだろうし、何より値引きにも応じてくれそうである。これは実は渡りに船であった。よくあることなのだが、備品と内装のレイアウト、植栽などをバラバラの業者に発注した場合、ものすごくイメージがぐちゃぐちゃで統一感のないものが仕上がってくることがあるのだ。なので、出来れば一つの業者にお願いした方がいいのである。
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「はい、そうです、ご無沙汰しております、キース様、クライブ様……。それで、皆さん偶然ここに居合わせて今の商談内容を聞いていたわけですね……」
「……」
無言。男三人。微妙な空気が流れていた。口火を切ったのはキース王太子殿下である。
「アイリーンはやはり素晴らしい女性ですね。公爵家の威光をかさにきて、商談をすることもできたでしょう。しかし、そうはしなかった。あくまで現実を見据え、そして予算や相手の利益なども含め考えた上で提案していました。あれほどの交渉が、我が国の貴族の中で出来る者がどれほどいるか……」
「はい。もちろん、才女であると思っていましたが、さすが私の心を奪った方だ。手練れの商人と互角にやりあう姿には、尊敬の念すら覚える」
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それを聞いて、殿下たちは大きく頷いた。
「さすが私の婚約者だな」
「ええ、さすが私の美しき鳥です」
「たった一人の愛する義姉が最高の女性であることを誇りに思います。もちろん、あと数年で義姉弟の関係ではなくなりますが」
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