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01.魔力なしだからとパーティ追放されました
しおりを挟む「おいレイク、話がある」
リーダーの戦士ソティンに呼び出されて、何事かとついて行ってみれば。
「役立たずのオメェはもう用済みだ。さっさと荷物まとめて出て行きやがれ」
探索者のレイクは、所属する冒険者パーティ“雷竜の咆哮”がパーティとして借りているルームシェア用賃貸アパートのリビングで、追放を言い渡されてしまったのだった。
「いや役立たずて」
「役立たずだろうが。この“魔力なし”が」
レイクやソティンたちが生きているこの世界は、森羅万象の全てが魔力で構成されている、と言われている。それは自然も自然現象も動植物も、エルフやドワーフや人間を含めた人類も、さらには神々でさえも例外ではない。だから人類は当然に、誰しもが魔力を持って生まれてくる。
けれど人類の中で人間だけは、総人口のおよそ1割ほどの割合で、その身を構成する最低限の霊力しか持たず、魔術に回せる余分な霊力を持たない者が存在する。そうした者たちを俗に“魔力なし”と呼ぶ。レイクはそんな“魔力なし”のひとりだ。
ちなみに霊力というのは、人体を構成する魔力を特別視してそう呼び分けているだけだ。人類は他の動植物とは違い、神々が自分たちに似せて作った特別な生き物なのだから選ばれし存在である……という一種の選民思想的な考え方だが、かつて世界の過半を支配していた古代帝国時代からある思想で、それが現代にまで受け継がれている。
なお一般的には、“魔力なし”だからといって差別されることはない。十人にひとり程度いるものだから特段珍しいわけでもないし、魔術が使えないだけで肉体的、精神的には他の大多数の人々と何ら変わらないので、特に問題視されないのだ。
ただ、中にはこのソティンのように、魔力なしの人間を見下すような連中もいる。ソティンは特にプライドが高く、山間の辺鄙な集落で生まれ育ったにしては人より霊力量が多かったものだから、それを鼻にかける面があった。
「お前、まだ魔力なし差別言ってんのか」
「お前、じゃねえ!リーダーと呼べといつも言ってるだろうが!だいたいお前、俺様の子分のくせして生意気な⸺」
「その子分で魔力なしの俺の手を引いて田舎から連れ出して、一緒に“雷竜の咆哮”を立ち上げてここまで名を売ってきたくせに、今更何言ってんだ」
「うるせえ黙れ!せっかくあんな田舎から連れ出してやったのに、感謝もしないわ文句は言うわ」
「当たり前だろ。俺はあの集落で暮らすつもりだったんだから」
「おまけになんだ、この使途不明金は」
ソティンが放り出した書類に、さすがにレイクも眉を寄せる。
「……これはお前、使途不明金じゃなくて事前調査費だ」
「なんの事前調査だ!そういう名目でお前がくすねてるんだろうが!」
「バカ言うな。受けたクエストの行路の確認とか事前の情報収集とか危険排除とか色々」
「そんなの信用できるか!」
頭ごなしにそう言われて、さすがにレイクが鼻白む。黙ってしまった彼を見て、ソティンがニヤリと嗤う。
「言い訳もできねえってことは、やっぱりそうなんだな」
「いや、待て、違⸺」
「もういい!ただでさえ“魔力なし”の役立たずのくせに、パーティの資金まで横領していたお前をリーダーとして許すことはできない!よってレイク、お前を“雷竜の咆哮”から追放する!」
どうやらもう、レイクが何を言おうと追放は決定事項のようだ。そうと悟って、レイクは内心でため息をつくしかない。
「それにだ、新たに優秀な探索者の加入が決まったんでな!戦闘はからっきし、魔術も使えず荷物持ちとしても役に立たないヒョロガリのお前をここまで無理して使ってやってきたが、もう我慢ならん!とっとと荷物をまとめて出ていけ!」
小さな集落で物心ついた頃からずっと一緒に育ってきて、村を出てからもふたりで頑張ってきたレイクとソティン。一緒に頑張ってきた、はずだった。
だがひとつ歳上で、いつでも兄貴風を吹かせてきた彼にそこまで言われて、レイクはキレた。
ソティンはそれまで黙って傍らに控えていたピンクの髪の可憐な少女の腰を抱き寄せて、得意げな顔をする。
「最後に紹介だけしてやる。新たに加入する探索者のイオスだ。お前と違って魔術も使えるし、戦闘の補助も得意だそうだ。ちょうど、前に加わっていたパーティが解散することになって⸺」
「ああ、そうかよ」
ソティンが鼻の下を伸ばしつつ少女探索者の紹介を続けていたが、レイクはもう聞いていなかった。
「分かった、んじゃ出ていくわ。今まで世話になったな」
「⸺まあ、だが、お前だってそんな急に行く宛もないだろう⸺」
「私物は持っていくけど、パーティの共有財産は置いてってやる。それでいいだろ?」
「⸺今ここでドゲザして泣いて詫びるなら、特別に残留を認めてやらんでも⸺」
「じゃ、今まで世話になった。あとは達者で頑張れよ。じゃあな!」
ソティンが何か長々と喋っていたが、レイクは構わずに部屋を出て扉を閉めた。バタン。
そしてその音で、ようやくソティンが気付く。
「まあ俺様は優しいからな⸺ってあれ?」
「リーダー?あの人ならもう出て行っちゃいましたよぉ?」
「…………は?」
そして抱き寄せるままに自分にしなだれかかってくる、冒険者とも思えない可憐な少女イオスの言葉で、ようやくソティンは目の前からレイクが居なくなっていることに気付いたのだった。
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