【完結】魔力なしの役立たずだとパーティを追放されたんだけど、実は次の約束があんだよね〜〜なので今更戻って来いとか言われても知らんがな

杜野秋人

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08.吹き渡る自由の風

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「いやあ、いいパーティ名に決まって良かったよ。⸺“吹き渡る自由の風”、うん、実にいい!」

 ニコニコと上機嫌なジュノは、ここ数年で見せたこともないほど晴れやかな笑顔である。

「まあ、ちょっと先代勇者パーティと似ちまったけどな」

 先代の認定勇者ユーリが率いて10年前に解散したパーティは、その名を“輝ける五色ごしきの風”という。これからパーティ名を名乗るたびに、それに憧れた名付けだと誤解される可能性はきっとあるだろう。

「うん、そうだなレイク」
「ていうか、もうパーティ組んで四日目だけどな」
「うん、そうだなレイク」
「まだパーティ組んでから何のクエストもこなしてないけどな」
「うん、そうだなレイク」
「なのになんでそんな上機嫌なんだ?」
「いやあ、それにしてもいいパーティ名に決まって良かったよ。⸺“吹き渡る自由の風”、うん、実にいい!」

 こんな調子で、まだパーティとしての実績は何も上げてないにも関わらず、ジュノはあれからずっとニコニコと嬉しそうにレイクの腕に抱きついている。そろそろちょっと離れてほしいレイクである。
 だって今の彼女は鎧を着けていないから、さっきから腕に触れる感触が気持ちよくて困る。

「まあとにかく、気に入ってもらえて何よりだ。何となく、自由って言葉を使いたいなと思ったんだ」
「レイクは性格やスキルや仕事ぶりだけでなくセンスも最高だな!やはりそれでこそ私の見込んだ男だよ!」
「……いや、今もってなんでそんなに気に入られてるのかサッパリ分からんのだが?」

 実績は上げていないものの条件は整ったということでジュノの“凄腕アデプト”昇進の申請は出していて、現在その結果待ちである。まだ実績がないということでギルド支部長が渋っているらしいが、ジュノのこれまでのギルドへの貢献などを鑑みれば、申請が通るのも時間の問題だろう。

「だけどまあ、所属メンバーがふたりだけってわけにもいかねえよな」
「どうしてだ?私はレイクとふたりきりでも一向に構わんが?」

 むしろ望むところだと言わんばかりのジュノである。

「そういうわけにもいかんだろ。戦闘ではどうしたって魔術が必要になるし、怪我や被毒の可能性を考えたら青加護の法術師は必要だろ」

 この世界ラティアースの森羅万象を構成する魔力マナは大きく黒、青、赤、黄、白の五種類に分かれていて、五色それぞれに固有の特色を持っている。人類や神々も含めて森羅万象の全てがその五色いずれかに分類されていて、各色の影響を受けている。それを『加護』という。
 青の加護の特色は癒やしや静謐、冷静さなどだ。ゆえに癒やしの魔術を使えるのは青加護の者たちだけである。魔術にも傷を治す[治癒]の術式や毒など状態異常を癒やす[解癒かいゆ]の術式などがあるから、青加護で魔術を扱えるなら法術師でなくとも構わないが、どっちにしたってレイクは白加護、ジュノは黄加護なので癒やしの魔術が扱えないのだ。

 ちなみに青加護以外の法術師が役に立たないのかと言えばそんな事はなく、生命力や回復力を司るのは黒加護だし、邪気や瘴気を浄化するのは赤加護になる。法術師はイェルゲイルの神々の権能“神異しんい”をその身に下ろすことで様々な奇跡を起こす『法術』が使えるため、そういう意味でも法術師の加入は必須と言っていい。
 ついでに言えば、どの加護にも不可欠な特色があるため、例えば冒険者パーティなどは五色の加護を全て揃えた5人パーティがもっともバランスが良いとされている。

「そんなのはポーションを買っておけばいいじゃないか。[治癒]も[解癒]も[回復]も、ポーションには何だってある。魔術だって巻物ウォルメンがあればレイクにも使えるぞ」
「不必要な経費は減らせって言ってんだろ」

 冒険者ランクが高く収入が安定しているものだから、ジュノはすぐに何でも買おうとする。パーティを組んだからには改めさせないとな、と決意を新たにするレイクである。
 特に巻物ウォルメンなんていくらすると思ってるんだ。巻物自体の値段もさることながら、一度使えば白紙に戻るし、パーティに魔術師がいない現状では白紙の巻物に術式を書き込んでもらうだけでも金がかかるのに。

「…………おふたりとも、イチャイチャするなら帰ってからにしてくれません?」
「いやだからイチャイチャしてねえぞルーチェ」
「なんだ、嫉妬か?もしかしてルーチェもレイクを狙ってたのか?」
「いや私自分より背の低い人には興味ないんで。っていうかそれでイチャイチャの自覚ないとかどんだけ……」

 実はレイクにも薄々分かってはいる。考えないようにしているだけだ。
 だってこんなのジュノとチビでやせっぽちの自分とでは客観的に見ても釣り合わないし、同じことを考えるフリウルの全ての男性冒険者からあの手この手で狙われるのは目に見えている。そんな怖い現実を受け入れる勇気はないし、向き合う覚悟もまだできてない。
 でも当のジュノが自分を逃がす気がなさそうなのがまた怖い。万が一密室で組み敷かれでもしたら、間違いなくそのまま。きゃーこわーい。

「…………微妙に鼻の下伸びてるし。やっぱりコイツも男だったか……」
「ん、何か言ったかルーチェ?」
「独り言ですよーだ!」
「…………なんで不機嫌なんだよ?」

「…………そろそろいい加減にしないと、夜道で後ろから刺されますからね!?」
「なんだよそれ怖ぇな!」

 などと、3人が色事漫才を繰り広げているのはギルドの受付カウンターの前である。まだ日中だが周りには冒険者の姿も何人か見えていて、特に男性陣からの視線が刺さる刺さる。


 と、不意に入口扉が音を立てて勢い良く開かれた。何事かと思って目を向けたら、そこに立っていたのはトランクを両手に引いたセーナだった。





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