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本編
07.もう結構です
しおりを挟む「っと、もう終了ですかー。残念。
では次はダンスレッスンなので速やかにレッスン室へゴーして下さいねー」
胡散臭い兄ちゃんはそう言ってそそくさと出て行く。
あー、ダンスなら任せて!得意!
全員で連れ立ってレッスン室へ移動するあたしたち。さっきみたいにオバサンに叩かれたらイヤだから、完璧令嬢のマネして走らないように、でも可能な限り早歩きで頑張って移動する。
いやきっつ!マジ超きっつ!なんでそんな済まし顔で全員これ出来てるわけ!?
それでも何とかレッスン室へたどり着き、用意されていた練習用ドレスとダンスシューズに着替える。そしてダンス講師が入ってきて………ってアンタかいっ逆三眼鏡!
「はい、ではまず基本のワルツの動きをブランディーヌ様と………そうですね、ではエドモン侯子にお願いしようかしら」
「「はい」」
呼ばれたふたりが中央に進み出て、備え付けのピアノで逆三眼鏡が奏でるワルツの定番曲に合わせて踊り出す。
ってオバサン楽器までできるわけ!?無駄に能力高くない!?
「はい結構。素晴らしい演技でした。では次、コリンヌ嬢とベルナール世子」
「了解した」
「えっ、え?」
なんでベルナール様!?この人ダンスが壊滅的にダメだってめっちゃ噂だから踊った事ないのに!ウソでしょミスできないじゃん!
「コリンヌ嬢。スマンがリードは任せた」
「いや無理ですよう!あたし相手に合わせて踊った事しかないですぅ!」
そんなこと、ダンス始まる寸前で言われたって、ムリぃ~!
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「もう結構です」
ダンスは結局、曲も半ばで冷めきった声を上げたオバサンによって強制的に止められちゃったわ。まあそれまで散々ムチで叩かれて、これ以上まともに踊れやしないんだけど。
ってかアンタなんでムチ持ってあたしたちに張り付いてんのよ!?ピアノは!?
………って思って見たら、いつの間に入ってきたのか演奏者の女の人がしれっとピアノ弾いてた。なんでよ!?あたしたちの時も逆三角眼鏡が演奏してれば良かったのに!
「ダンスにおいてもっとも重要なのは、互いに相手を信頼して委ねるということ。どちらか片方だけが良くても成立はしませんし、一方が他方に頼りきってもいけません。
なのに何ですか貴方がたは。どちらも相手に押しつけあって、協調性などまるでないではありませんか。先ほどのブランディーヌ様とエドモン侯子の何を見ていたのですか!?」
なんかオバサンがキンキン言ってるけど、叩かれた背中や腰や手足が痛くってそれどころじゃないんだけど!
「ちなみにダンス中にわたくしが叩いたのは全て動作のミスです。今はそれ以前の、心構えの話をしています。分かりますか?」
分かんないわよ!ダンスなんて適当に踊って場を壊さなきゃそれでいいじゃん!っていうかそもそもあたし殿下としか踊りたくないし!
「………はあ。その様子では解っていませんね。全く、まだ殿下とオーギュスト世子のほうが見ていられます」
と呆れたように呟かれて、見たら殿下とオーギュスト様が踊ってらした。
いや男同士!?ってか止められてもピアノ鳴り止まないなあって思ってたら、殿下たち踊ってたのね!?
「……………なあオーギュスト」
「なんです?殿下」
「私たちは、何故踊っているのだろうね?」
「他に相手がいないからでしょう?残っているのは私たちだけですからね」
「どうせ踊るなら、ブランディーヌのほうがまだマシだったな………」
「私だって好きで女性パートを踊っているのではないのですがね!?」
なんかふたりしてブツブツ言ってるけど、なんだかんだで息合ってるように見えるし意外と楽しそうにも見える。
ぐぬぬ、ちゃんと踊れたら男同士でもある程度サマになるって言いたいのかしら?なんかちょっと、ムカつく!
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