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6話
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「これは失礼、自己紹介がまだでした」
軽く謝罪した後、レリアは自己紹介をする。
「私は第六騎士団ローゼライ区担当隊の隊長を務める、一等騎士のレリア・ローゼンベルクです。以後よろしくお願いします」
「レリア・ローゼンベルク……貴殿が噂の訳アリ隊長、という事か」
それを聞いたファウルハイトの方は、すうっと目を細める。ファウルハイトがレリア達を歓迎していない事は火を見るよりも明らかであった。
「そちらがしたのだ、私も自己紹介しなければな。名はファウルハイト・ゾンネ。階級はそちらと同じ一等騎士。第七騎士団の団長だ」
よろしく、とファウルハイトが差し出した手をレリアがしっかりと握り、2人は握手を交わす。2人の顔には、張り付いたような笑みが浮かんでいた。
「それで、そのレリア殿が何故ここに?」
「例の脅迫状について興味がありまして。娘さんに無理を言って参加させてもらったのです」
「フレイツィヒ……またお前か」
ファウルハイトはその場にいたフレイに目を向けて、嘆息する。それを見たフレイは我慢ならないとばかりに父に食って掛かった。
「なんだよ。文句あるのかよ、親父! このレリアって騎士はちゃんと優秀だろ!」
「優秀であるからと言って、他の部隊からなりふり構わず手伝わせれば良いというものでは無い。お前ももう赤ん坊ではないんだ。それくらい分かるだろう」
「でも、捜査の指揮を取ってる奴も人手がいくらあっても足りないって……!」
「人手が足りないのなら、騎士団内部からこの件に割く人員を増やすだけの話だろう。外部からの人員は余計な混乱を招く。ましてや引き入れた相手が相手だ」
あっさりと切り捨てた父を、フレイは強く睨みつける。だがファウルハイトはそれを意にも介さない様子だった。そこまで言うと今度はレリアの方に向き直る。
「レリア殿、君の能力は噂に違わぬ素晴らしいものだ。若く才能があり、未来のある君がこの様な愚行をするべきではないよ」
「お褒めいただき光栄です。しかし、愚行というのは少々言葉が強すぎるのではありませんか? 撤回していただきたい」
「撤回? ……無理だね」
それまで表面上は笑顔を取り繕っていたファウルハイトが、険しい表情になった。それと同時に、一層語気を強める。
「本来第七騎士団に所属していない騎士が第七騎士団の業務に参加するのは、規定にない行為だ。例外的措置になる」
「今回の件は魔道教団が関わっている可能性が高いです。先日第六騎士団団長が襲われた件も考えれば、例外的な措置を講じてでも解決すべき重大な事項では?」
「まだ疑惑の段階だ。それに、君のとった行動は騎士団という組織を瓦解させかねない。論外だよ、論外」
ファウルハイトの怒りは最高潮に達したのか、彼は一段と大声でレリアを糾弾する。
「良いかね。組織というのは規律があって初めて成り立つ。その方が効率が良いから等と今回のような『例外』が積み重なっていけば、やがて規律は無力と化し、そして組織は崩壊する!」
「お言葉ですが、それはあまりにも極端な……」
「黙りたまえ! そもそも君は一等騎士だ! 捜査の指揮を執る者より階級が上の人間が介入すれば、指揮系統が大きく乱れる! 出ていきたまえ!」
取り付く島もない。それにファウルハイトの言っていることにはそれなりの理がある。そもそも、今回の件でのレリアの立場は、勝手に捜査に参加をした部外者に過ぎない。第七騎士団の指揮権はあくまでファウルハイトにある。これ以上はレリアにもどうすることもできず、引き下がるほかなかった。
「……そうですか、では我々はこれで失礼します。オルレア、フリージア、行きましょう」
だが、そんなことはフレイツィヒにとっては関係ない。彼女は顔を真っ赤にして、改めて父に反発する。
「……そもそも今回の件は親父、あんたが悪いんだろ! 脅迫状にあったじゃねえか、あんたが人殺しだって!」
「ふん、差出人も分からんそれの言い分を信用する気か? 所詮デマに過ぎんよ」
「はあ!?」
感情的になるフレイとは対照的に、ファウルハイトは今度は冷めた様子で返答する。
「大方、過去に第七騎士団に捕まった犯罪者か、その関係者の逆恨みだろう。あるいは、教団が私を貶めるためのものか。どちらにせよ真っ赤な嘘だ」
「なんだと、あんた……!」
「お、落ち着いてくださいフレイ様。ほ、ほら、フレイ様の好きなパウンドケーキをご用意しました! 一旦お茶にでもしましょう?」
激昂するフレイを止めようと、護衛を務めていた女騎士が割って入る。だがフレイは邪魔するなと言わんばかりに騎士を跳ねのけ、怒りをぶつける。
「そうやって、あんたは逃げる気かよ! 犯した罪からも、あんたに傷つけられた人たちからも!」
だが、それに対してファウルハイトは何処までも冷静であった。というより、レリアとの対応の違いから見るに、相手にしていないのかもしれない。
「大きな勘違いをしているな。──私は何の罪も犯していない。居もしない被害者など考える必要すらない」
その一言が、決定的になったのだろうか。目を見開いたフレイは、信じられない程醜悪なものを見たかのように嫌悪と怒りを滲ませた瞳で、ただただファウルハイトを睨んだ。
「……もう良い!」
フレイはそう吐き捨てると、ドタドタと何処かへ行ってしまった。
「娘の見苦しいところをお見せしてしまったね。……これ以上我が家の恥を晒したくない。君たちも帰ってくれたまえ」
ファウルハイトも、そう一言だけ残して部屋から出ていく。後に残された者達は、2人が居なくなった後もただただ押し黙るだけであった。
軽く謝罪した後、レリアは自己紹介をする。
「私は第六騎士団ローゼライ区担当隊の隊長を務める、一等騎士のレリア・ローゼンベルクです。以後よろしくお願いします」
「レリア・ローゼンベルク……貴殿が噂の訳アリ隊長、という事か」
それを聞いたファウルハイトの方は、すうっと目を細める。ファウルハイトがレリア達を歓迎していない事は火を見るよりも明らかであった。
「そちらがしたのだ、私も自己紹介しなければな。名はファウルハイト・ゾンネ。階級はそちらと同じ一等騎士。第七騎士団の団長だ」
よろしく、とファウルハイトが差し出した手をレリアがしっかりと握り、2人は握手を交わす。2人の顔には、張り付いたような笑みが浮かんでいた。
「それで、そのレリア殿が何故ここに?」
「例の脅迫状について興味がありまして。娘さんに無理を言って参加させてもらったのです」
「フレイツィヒ……またお前か」
ファウルハイトはその場にいたフレイに目を向けて、嘆息する。それを見たフレイは我慢ならないとばかりに父に食って掛かった。
「なんだよ。文句あるのかよ、親父! このレリアって騎士はちゃんと優秀だろ!」
「優秀であるからと言って、他の部隊からなりふり構わず手伝わせれば良いというものでは無い。お前ももう赤ん坊ではないんだ。それくらい分かるだろう」
「でも、捜査の指揮を取ってる奴も人手がいくらあっても足りないって……!」
「人手が足りないのなら、騎士団内部からこの件に割く人員を増やすだけの話だろう。外部からの人員は余計な混乱を招く。ましてや引き入れた相手が相手だ」
あっさりと切り捨てた父を、フレイは強く睨みつける。だがファウルハイトはそれを意にも介さない様子だった。そこまで言うと今度はレリアの方に向き直る。
「レリア殿、君の能力は噂に違わぬ素晴らしいものだ。若く才能があり、未来のある君がこの様な愚行をするべきではないよ」
「お褒めいただき光栄です。しかし、愚行というのは少々言葉が強すぎるのではありませんか? 撤回していただきたい」
「撤回? ……無理だね」
それまで表面上は笑顔を取り繕っていたファウルハイトが、険しい表情になった。それと同時に、一層語気を強める。
「本来第七騎士団に所属していない騎士が第七騎士団の業務に参加するのは、規定にない行為だ。例外的措置になる」
「今回の件は魔道教団が関わっている可能性が高いです。先日第六騎士団団長が襲われた件も考えれば、例外的な措置を講じてでも解決すべき重大な事項では?」
「まだ疑惑の段階だ。それに、君のとった行動は騎士団という組織を瓦解させかねない。論外だよ、論外」
ファウルハイトの怒りは最高潮に達したのか、彼は一段と大声でレリアを糾弾する。
「良いかね。組織というのは規律があって初めて成り立つ。その方が効率が良いから等と今回のような『例外』が積み重なっていけば、やがて規律は無力と化し、そして組織は崩壊する!」
「お言葉ですが、それはあまりにも極端な……」
「黙りたまえ! そもそも君は一等騎士だ! 捜査の指揮を執る者より階級が上の人間が介入すれば、指揮系統が大きく乱れる! 出ていきたまえ!」
取り付く島もない。それにファウルハイトの言っていることにはそれなりの理がある。そもそも、今回の件でのレリアの立場は、勝手に捜査に参加をした部外者に過ぎない。第七騎士団の指揮権はあくまでファウルハイトにある。これ以上はレリアにもどうすることもできず、引き下がるほかなかった。
「……そうですか、では我々はこれで失礼します。オルレア、フリージア、行きましょう」
だが、そんなことはフレイツィヒにとっては関係ない。彼女は顔を真っ赤にして、改めて父に反発する。
「……そもそも今回の件は親父、あんたが悪いんだろ! 脅迫状にあったじゃねえか、あんたが人殺しだって!」
「ふん、差出人も分からんそれの言い分を信用する気か? 所詮デマに過ぎんよ」
「はあ!?」
感情的になるフレイとは対照的に、ファウルハイトは今度は冷めた様子で返答する。
「大方、過去に第七騎士団に捕まった犯罪者か、その関係者の逆恨みだろう。あるいは、教団が私を貶めるためのものか。どちらにせよ真っ赤な嘘だ」
「なんだと、あんた……!」
「お、落ち着いてくださいフレイ様。ほ、ほら、フレイ様の好きなパウンドケーキをご用意しました! 一旦お茶にでもしましょう?」
激昂するフレイを止めようと、護衛を務めていた女騎士が割って入る。だがフレイは邪魔するなと言わんばかりに騎士を跳ねのけ、怒りをぶつける。
「そうやって、あんたは逃げる気かよ! 犯した罪からも、あんたに傷つけられた人たちからも!」
だが、それに対してファウルハイトは何処までも冷静であった。というより、レリアとの対応の違いから見るに、相手にしていないのかもしれない。
「大きな勘違いをしているな。──私は何の罪も犯していない。居もしない被害者など考える必要すらない」
その一言が、決定的になったのだろうか。目を見開いたフレイは、信じられない程醜悪なものを見たかのように嫌悪と怒りを滲ませた瞳で、ただただファウルハイトを睨んだ。
「……もう良い!」
フレイはそう吐き捨てると、ドタドタと何処かへ行ってしまった。
「娘の見苦しいところをお見せしてしまったね。……これ以上我が家の恥を晒したくない。君たちも帰ってくれたまえ」
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