15 / 33
15話
しおりを挟む
「……薔薇砂糖? 何だそれは?」
アベルの疑問に、ローズは答える。
「……魔法で抽出した薔薇の成分が入った、上質な砂糖よ。貴方だって知ってるでしょ」
「はあ? 何でたかが砂糖を紅茶に淹れるのにあんなビクビクしてたんだ? バカなのか?」
「何でって……そんなの私を取り締まりに来た貴方が1番知ってるでしょ」
そこまで話すと、ローズは悲しそうな表情を浮かべた。
「薔薇砂糖を作れるのは、高い魔法技術を持つ王国だけ。帝国と王国は犬猿の仲だから、これは帝国では禁制品なのよ」
「……じゃあそれは、フレイお嬢を殺す為の毒じゃないのか?」
恐る恐るアベルが問うと、ローズは信じられないと言わんばかりの様子で非難する。
「はあ!? さっきから貴方は本当に何を言ってるの!? 貴方こそ馬鹿なんじゃないかしら!」
少しキレ始めたローズに対して、言い訳するようにアベルは口を開く。
「いや、だって……君がフレイお嬢を狙ってるかもしれないって、騎士レリアから聞いたから……」
「なるほどね。彼女にあんな話をしたら、そりゃ疑われるわよね。あながち間違っているとは言えないし」
「何だって? 昔は本気で考えてたみたいな言い草だな、おい」
何かの聞き間違いかと聞き返すアベルに、ローズは語る。
「……昔はそんな事を考えたこともあったわ」
改めて薔薇砂糖を紅茶に入れると、ローズは窓の外を眺める。夕日が、窓越しに彼女を照らした。
「でもフレイ様も、あの娘と……アネモネとおんなじ。まっすぐで、勇敢で、どこまでも優しいの。そんな娘を恨める訳、無いでしょ?」
「……分かるよ」
2人して無言で、フレイの部屋に向かう。紅茶を持っているローズの代わりに、アベルがドアを開けた。
「フレイ様、頼まれてた紅茶が出来たわよ……あら?」
「うん?……お嬢?」
──そこには、誰も居なかった。
慌てて2人が周囲を探すと、机の上に1枚の紙が。
「こ、これは……!」
フレイが危ない。
唐突にレリアが口にしたその言葉を、ファウルハイトは強く否定する。
「む、娘が危ない?……あの娘はそんじょそこらの騎士では太刀打ち出来ないほどに強い! 私が鍛えたのだ、そんな事は有り得ん!」
「今回の場合は彼女自身の武力など全く役に立たない! むしろ逆効果だ!」
「待て、それはどういうことだ! 説明しろ!」
そう言うや否や、レリアは全速力で走り出す。それを追うようにファウルハイトも走る。
「待て! 何処に行く!」
「フレイを探しに行くんだよ!」
その行き先は、フレイの私室。だが、そこに居たのは焦った表情のアベルとローズだけだった。
「2人とも! フレイは何処に!?」
「わ、分からない……だが、机の上にこれが!」
アベルが指す先には、1枚の紙があった。何やら文字が書かれている。
『失う痛みを思い知れ』
「なっ……」
新しい脅迫状を見て絶句するファウルハイト。
「ま、まさか本当に娘が誘拐されたのか! そんな、有り得ん!」
アベルとローズもこれを見て平常心ではいられない様だった。
「わ、私が離れたあの一瞬で、何者かがフレイ様を……3度も屋敷に侵入されたというの!?」
「警備していた騎士達は何をしてたんだ? ああ、にしてもまさかフレイお嬢が誘拐されてしまうなんて……犯人の目的は何だ!?」
「……ファウルハイト、フレイが思い入れのある場所は何処だ!」
動揺するファウルハイトに、レリアは焦った様子で問いただす。
「な、何……? そんな話を今してどうする! 今はともかく、誘拐犯がどこに行ったかを考える必要が……」
「だから聞いてるんだろうが!」
「な、何を言っている! 全く意味が分からん!」
狼狽えるファウルハイト。その一方で、ローズはレリアの言おうとしている事を察したようであった。
「まさか……」
「ああ。3度の脅迫状を送ったのも、こうしてフレイが居なくなったのも……
──フレイ自身の仕業だろうよ」
アベルの疑問に、ローズは答える。
「……魔法で抽出した薔薇の成分が入った、上質な砂糖よ。貴方だって知ってるでしょ」
「はあ? 何でたかが砂糖を紅茶に淹れるのにあんなビクビクしてたんだ? バカなのか?」
「何でって……そんなの私を取り締まりに来た貴方が1番知ってるでしょ」
そこまで話すと、ローズは悲しそうな表情を浮かべた。
「薔薇砂糖を作れるのは、高い魔法技術を持つ王国だけ。帝国と王国は犬猿の仲だから、これは帝国では禁制品なのよ」
「……じゃあそれは、フレイお嬢を殺す為の毒じゃないのか?」
恐る恐るアベルが問うと、ローズは信じられないと言わんばかりの様子で非難する。
「はあ!? さっきから貴方は本当に何を言ってるの!? 貴方こそ馬鹿なんじゃないかしら!」
少しキレ始めたローズに対して、言い訳するようにアベルは口を開く。
「いや、だって……君がフレイお嬢を狙ってるかもしれないって、騎士レリアから聞いたから……」
「なるほどね。彼女にあんな話をしたら、そりゃ疑われるわよね。あながち間違っているとは言えないし」
「何だって? 昔は本気で考えてたみたいな言い草だな、おい」
何かの聞き間違いかと聞き返すアベルに、ローズは語る。
「……昔はそんな事を考えたこともあったわ」
改めて薔薇砂糖を紅茶に入れると、ローズは窓の外を眺める。夕日が、窓越しに彼女を照らした。
「でもフレイ様も、あの娘と……アネモネとおんなじ。まっすぐで、勇敢で、どこまでも優しいの。そんな娘を恨める訳、無いでしょ?」
「……分かるよ」
2人して無言で、フレイの部屋に向かう。紅茶を持っているローズの代わりに、アベルがドアを開けた。
「フレイ様、頼まれてた紅茶が出来たわよ……あら?」
「うん?……お嬢?」
──そこには、誰も居なかった。
慌てて2人が周囲を探すと、机の上に1枚の紙が。
「こ、これは……!」
フレイが危ない。
唐突にレリアが口にしたその言葉を、ファウルハイトは強く否定する。
「む、娘が危ない?……あの娘はそんじょそこらの騎士では太刀打ち出来ないほどに強い! 私が鍛えたのだ、そんな事は有り得ん!」
「今回の場合は彼女自身の武力など全く役に立たない! むしろ逆効果だ!」
「待て、それはどういうことだ! 説明しろ!」
そう言うや否や、レリアは全速力で走り出す。それを追うようにファウルハイトも走る。
「待て! 何処に行く!」
「フレイを探しに行くんだよ!」
その行き先は、フレイの私室。だが、そこに居たのは焦った表情のアベルとローズだけだった。
「2人とも! フレイは何処に!?」
「わ、分からない……だが、机の上にこれが!」
アベルが指す先には、1枚の紙があった。何やら文字が書かれている。
『失う痛みを思い知れ』
「なっ……」
新しい脅迫状を見て絶句するファウルハイト。
「ま、まさか本当に娘が誘拐されたのか! そんな、有り得ん!」
アベルとローズもこれを見て平常心ではいられない様だった。
「わ、私が離れたあの一瞬で、何者かがフレイ様を……3度も屋敷に侵入されたというの!?」
「警備していた騎士達は何をしてたんだ? ああ、にしてもまさかフレイお嬢が誘拐されてしまうなんて……犯人の目的は何だ!?」
「……ファウルハイト、フレイが思い入れのある場所は何処だ!」
動揺するファウルハイトに、レリアは焦った様子で問いただす。
「な、何……? そんな話を今してどうする! 今はともかく、誘拐犯がどこに行ったかを考える必要が……」
「だから聞いてるんだろうが!」
「な、何を言っている! 全く意味が分からん!」
狼狽えるファウルハイト。その一方で、ローズはレリアの言おうとしている事を察したようであった。
「まさか……」
「ああ。3度の脅迫状を送ったのも、こうしてフレイが居なくなったのも……
──フレイ自身の仕業だろうよ」
0
あなたにおすすめの小説
春に狂(くる)う
転生新語
恋愛
先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。
小説家になろう、カクヨムに投稿しています。
小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/
カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
触手エイリアンの交配実験〜研究者、被験体になる〜
桜井ベアトリクス
恋愛
異星で触手エイリアンを研究する科学者アヴァ。 唯一観察できていなかったのは、彼らの交配儀式。
上司の制止を振り切り、禁断の儀式を覗き見たアヴァは―― 交わる触手に、抑えきれない欲望を覚える。
「私も……私も交配したい」
太く長い触手が、体の奥深くまで侵入してくる。 研究者が、快楽の実験体になる夜。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる