窓際騎士レリアの捜査記録

スライム小説家

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23話

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「オルレア、フリージア! 2人とも無事で良かった……」

 レリアは2人の無事な姿を見て安堵する。だが、2人は相変わらず剣呑な表情を浮かべていた。

「安心するのはまだ早いっスよ、たいちょー。戦いはまだ始まったばかりなんスから」
「ええ。暴徒の大半は武器も持たない貧弱な民間人ですが、裏切った衛兵や騎士は油断なりません」

 そう話すと2人は剣を構える。前方から暴徒達が迫ってきていた。

「たいちょー、連中がくるっスよ!」
「相手は民間人です。出来る限り殺害は避けたいですが……危なくなったら躊躇いなくやりましょう」
「あ……ああ、分かっているとも」

 迫り来る暴徒達を観察する。やはりどこからどう見ても民間人である。

(精神魔法で操られてでもいるのか……?)

「うがああああああ!」
「えひ、ひへへへへへへ!」

 正気ではない様子でかかってくる暴徒達。その濁った目は焦点が合わず、見るものをどことなく不安にさせる。

「何にせよ、戦うしかないか……行くぞ!」
「はい!」
「了解っス!」

 レリア達は、戦場に足を踏み入れた。



「あひゃああああああ!」
「邪魔だ、退け!」

 掴みかかってきた男を蹴り飛ばして、暴徒達に突っ込む。

「うおおおお!」
「神の為にぃぃぃぃ!」

 何人もの暴徒が掛かってくる。だが、対するレリアに動揺はない。

「まずはお前からだ!」

 真っ先に突っ込んできた男を一旦避けて、背後を取る。その首根っこを掴み上げると、男はあっさりと宙に浮いた。

「は、離せぇ! 何をするつもりだ!」

 男はじたばたするが、後ろから首を掴まれた状態なのだ。大した抵抗は出来やしない。

「何をするって……こうするんだよ!」
「うわぁぁぁぁ!」

 レリアはそう言うと、掴み上げた男をそのまま投げつけた。巻き込まれた暴徒達はもみくちゃになってしまった。
 だが、レリアは一息つく暇すら無い。別の暴徒達が彼女の前に立ち塞がる。

「ま、まだこんなに居るのか……」

 2人の様子を伺うと、多くの暴徒を相手取っただけあって、やはり疲れている。

「いくら何でも多すぎるっス!」
「まずいですね……」

 レリア達だけでは無い。他の騎士達にも疲れが見えるし、既に何人か倒れている者も居るようであった。

(倒れている連中、生きていれば良いのだが……)

 その時。

「どうやら困っている様だな」
「あたしらも力を貸してやるよ」

 突如として男女の声が聞こえた。レリアは反射的に振り返り、目を見開いた。

「ファウルハイト団長! それに……フレイ!」

 そこに居たのは、不仲なはずの親娘であった。



「ど、どうして2人がここに。というか、もう大丈夫なのか? ……色々と」

 そんなレリアの疑問に、フレイは笑いながら答える。

「お互い、腹を割って話したんだ。親父がなんであんな事をしたのか……全部教えてもらったよ」

 全部。その言葉にレリアは思わず、ファウルハイトを見つめる。だが、彼は何の反応も示さなかった。

「……親父のやった事に納得は出来ねえけど、理解はしたさ」
「そ、そうか……」

 ファウルハイトが何を思って動いていたのか。それをレリアも知りたかったが、今はそんな事を考えている場合では無かった。

「それより、あたし達も手伝うよ。この人数はあんたらだけじゃキツそうだしな」
「目の前で部下がやられるのを見ている訳にはいかん。私も戦わせてもらおう」

 2人ともやる気満々といった様子であった。それに触発されるように、第六騎士団の騎士達も奮起する。

「団長も参戦するとあらば、我々も頑張らねば!」
「フレイ様の為にも、もう一踏ん張りしますかね!」

──戦況は、あっという間に覆った。



「どりゃあああっ!」

 ファウルハイトの手によって、最後の暴徒が地面に叩きつけられる。周囲には死屍累々といった様子で、気絶した暴徒達が伏していた。
 見渡す限りの人の山。最後まで立っていたのは、レリア達の方だった。

「……我々の勝利だ!」
「うおおおおおおお!」
「団長おおおおおおお!」

 歓声を挙げる騎士達。興奮した様子で騒ぐ彼らの横で、レリアは大きなため息を吐いた。

「はぁ……やっと、終わったか」

 疲れ切った様子でレリアがそう言うと、オルレアとフリージアが近づいてくる。

「お疲れ様です隊長! 獅子奮迅のご活躍、流石です!」
「たいちょーってめちゃくちゃ強いっスよね。このぷにぷにのどこからそんな力が……」

 キラキラとした目でレリアを見つめるオルレア。レリアの二の腕を掴んで、不思議がるフリージア。
 こんな時でもブレない2人に、レリアは少しホッとした。

「やっぱり凄えんだな、あんた」
「ええ、あれ程の実力とはね。流石『緑風の懐刀』なだけあるわ」
「……フレイにローズか。君達こそ流石の実力だったよ」

 背後から話しかけてきたフレイやローズも混ざって、レリア達が話していると。

「……騎士の皆様、ご無事でしたか。それは良かった」

 遠くの方で、ファウルハイトに男が話しかけるのが見えた。

「あ、あの人……」
「うん?」

 驚いた様子のローズ。それに釣られてレリア達もそちらを見る。

「おかしな様子の者達が、屋敷に向かうのが見えまして。心配して見に来たんですよ」

 濁った瞳、痩せ細った体。それはアネモネの父だった。
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