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その後01 - 3対1じゃ部が悪いので実力(まほう)で黙らせてやろうじゃないか
しおりを挟む暇さえあればトレーニングをしている恋人と親友はトレーニングルームにいるというので、これまた親友のキーラとそちらで勉強をしようと本とお茶セットを持って向かった。
滅多に入る事がないシャルフのトレーニングルームは広くて色々な器具が置いてある。何かを競い合っているのか恋人のウィゼルドと親友のナージャがランニングマシンで物凄く真剣に走り込んでいる。
「ああ、あれ唯一ウィゼルド君に勝てるそうよ」
「そういえば勝てないのがあるって言っていたけれど、ランニングか」
ウィゼルドはなんでも大抵簡単にこなしてしまうし、他のシャルフよりも優れているんだけれど…足はそこまで速くない…らしい。僕からしたら速いんだけれど。
終わったらしい2人がマシンから降りてタイムを見ている。
「うわっマジか!!」
「おお、縮まったな」
「何でタイム縮まってきてるんだよ!私の唯一勝てる種目なのに!」
「いや、だがまだまだ15秒の差がある」
「たった15秒だよ!最初1分半あっただろ!?」
僕達はテーブルとかのある休憩スペースにお茶セットを置いて椅子に座ってそのやり取りを見ている。
「なんだか、足が遅いのが気になるからって師匠に聞いてたけれど、流石に師匠はそこら辺専門じゃないからってどうやらスポーツ選手にアドバイスもらったみたいで」
「ああ、なるほどね…その道のプロに…ウィゼルド君って本当努力惜しまないわよね…」
「ナージャの方が頑張っていると僕は思うけれどね…」
「そうなのよね、それが心配になることもあるのよ…ウィゼルド君に対抗してトレーニングしすぎてなんじゃないかしらって」
「無理して体壊してもよくないからねぇ…」
「何かしてあげられる事はないかしらねぇ」
「そうだねぇ」
2人して腕を組んで悩んでいると僕達の恋人達が寄ってきた。
「そこで何を悩んでいるのだ?」
「悩んでいるキーラも可愛い!」
「んもう、ナージャったら…嬉しいわ」
「流石ナージャだな…すぐ恋人褒める」
「俺がシャロン褒めると嫌がるではないか…褒めてもいいのか?」
「え、嫌だ」
「まあ、恋人を褒めたい気持ちはないの?シャロン」
「うーん…無くはないけれど…人前ではちょっと…」
「私達は褒め合うわよ?」
「キーラ、こいつらつい最近手を繋げるようになったばかりだよ、無理だよそんなハードル高いこと」
「ああ、そうね…まだまだお子様ですものね」
急にあっちのカップルが煽り出してきたぞ。だが、僕は冷静沈着だ、そういう煽りには反応しないんだからな。
「キスもまともに出来ないで一生清いカップルなんだろうな…」
「あら、可愛いじゃないの」
「してるからね!そんくらい!」
「へぇ」
「そうなのー?」
「うわ、違う!そうじゃなくてだね!あの!」
しまった、つい反応してしまった…ウザップルが面倒くさくなってきてしまった。
「慌てているシャロンもまた可愛いな」
「…はい…?」
「いつもと違う面が見れるのは嬉しいものだ」
「まっ…そんな…こと…」
「あ、シャロンが真っ赤よ」
「おお、おお、本当に可愛いじゃん、真っ赤っかー」
「もー!ウィゼルドー!」
「はははっ」
3人にからかわれている僕可哀想じゃない!?
僕の大好きな人達が楽しそうなのは嬉しいけれど、それは僕をいじって楽しそうにしているじゃない時に見たいものだ!
「3人とも纏めて麻痺魔法で動けなくしてやろうか?」
「やだ、シャロンが怖いわ」
「からかうのはこれくらいにして、私はも少しトレーニングしてこよっと…」
ナージャは逃げていった。
「口に出して、褒めたかったんだ」
「周りに他に人がいないからまだいいけれど」
「俺はいつでもシャロンを褒めたくてうずうずしているんだからな」
「僕だって、君を褒めてる、心の中では」
「ほう」
「あらー、口に出してご覧なさいよ、シャロンー」
「…真剣な、顔…かっこいい…」
「…」
「…」
「何で2人とも黙るわけ!?言えって言ったでしょ!?」
「は、走ってくる…!!」
「あらまあ…ゆでダコみたいじゃない、ウィゼルド君」
走っていった恋人は後ろからでも分かるくらい赤くなっていた。
「で、なんで黙るんだろうか」
「照れたんでしょうに…私は貴方が本当に口に出してくるとは思わなかったから驚いただけよ…そうやって素直に伝えてあげた方が相手は喜ぶわよ」
「…2人の時にちゃんと言うようにする…しかし、言ってみたけれど、今のは厳しかった…」
「ふふっ貴方もゆでダコだものね」
キーラが嬉しそうにお茶を用意しているから、言い返すのやめた。
まだまだ付き合い始めて半年…素直になれるのはもう少し待ってもらいたいね…。
・・・・・・
うちのウィシャロにナジャキラ達を気に入っていただけたら嬉しいです!
BL小説大賞エントリー中ですので少しの間小話上げていくのでお付き合い下さいませ!
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