『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人

文字の大きさ
8 / 58

8 兄と精霊と、夜のサンドイッチ

しおりを挟む
「……はは。メリルは怖がりだなあ。ミョルダの背中に隠れてても丸見えなんだけど」
 メリルはミョルダにしがみついていたが、彼女はフンッと鼻を鳴らしてくつろぎ体制に入った。一人と一頭は声の主が誰か分かったからだ。

「な、なんだあ。ウィルかあ。怖がらせないでよ。わたしが怖がりって知ってるくせに」
「それなら普通に部屋で休めばいいのに」
「それはそうなんだけど、ミョルダは特別なんだもん」
「確かにそれはそうか」

 きゅう舎の入口がたいまつのような火で明るくなったかと思うと、メリルの二卵双生児の兄ウィルフレッドがやってくる。

「なんだ、ってひどいなあ。アーバンが新作サンドイッチ作ったって聞いたから来たんだ。ちょうだい」
 そう言って、壁のたいまつ置きによいしょっと背伸びしてたいまつを置いてくると、メリルの隣に座ってくる。
 返事を待たずにひょいとウィルフレッドは、料理長アーバンとその弟子クインの作ったサンドイッチを、パクっと口にいれてモグモグした。
 大変大食いのメリル用なのと、料理人二人がここぞとばかりに新作サンドイッチを作り上げたので、ウィルフレッド一人が加わったところでびくともしない量ではある。

 メリルは何とも思わなかったけれど(食べ物を奪われたことじゃなくて)、ウィルフレッドの周りにはポヤポヤとたいまつの明かりのような光と丸っこい光がフワフワと浮いている。
 彼の側に居たがる、火の精霊と光の精霊が付き従っているのだ。

 光の精霊はちっちゃい人型で羽根が真珠色でとても綺麗だし、火の精霊はトカゲの形をしていて、飛ぶ、というより浮いてる。たまに後ろ足だけで立ってて、短い手がとても可愛い。

"ほんとメリルってば怖がりよね"
"怖がりの割には行動が破天荒だがな"

(むう。いつも思うけど、精霊ってわたしには容赦なくない?) 
 メリルはそう思ったが、嘘が言えない精霊だからこそ、的を得ている……と思うようにしている。

 ウィルフレッドは家族の中でも特に変わっていた。
 いつでも飄々としていて、いつでも人けのない場所にいたりする。居所がメリル以外掴めない。
 必ず精霊がくっついてるのもあって、メリルにはすぐに居場所が分かるのだけれど、他の家族は見つけ出せないのだ。

 メリルが両親に自分のスキルのことを【魔法スキル?】と伝えてあるように、ウィルフレッドもまた【精霊スキル?】と伝えてある。きちんと鑑定したわけじゃないので、疑問形なのは仕方ない。

「……モグモグ。アーバンが新作サンドイッチを作ってみたいって言ってたけど、このツナときゅうりのやつ、ドレッシングがすごい美味しい。トン(でもなく)ウマ(いね)」

「僕にはちょっとだけ甘酸っぱいかな。ツナマヨとか言ってた気がする」

「ンマー。あ! こっちのサーモンペーストとオリーブのサンドイッチもすごく美味しいよ」

「どれどれ……。サーモンペースト初だけどこれは……美味い」

「魚がたくさん獲れるようになって、美味しい加工品が増えたね」

「うんうん。北の海に漁に出る漁村に人が増えて、アイデア加工品が増えたんだって、料理長が言ってた」

「そうなのかあ。魚は流通がもっとしっかりしたら新鮮なお魚も食べられそうだよね」
 
 しばらく二人はモグモグとサンドイッチを頬張る。ツナマヨにサーモンペースト、刻みキャベツ入りまでどれも絶品だ。料理長たちの本気が感じられる。

 火と光の精霊がぽわんぽわんと光ってくれているおかげで、手元も明るくてサンドイッチが美味しく見えるのもポイントだ。
 たまに火の精霊が、パン部分をちびこい手でちょいっと触って、ホットサンドイッチにしてくれるので、味変されてペロリといけちゃう。

 ここ数年で漁村の漁獲量はうなぎのぼりだ。漁村の近くには町も出来た。おかげで魚の流通も増えて、その加工品も簡単に食べられるようになっている。ツナマヨはメリルの大好物になった。

しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

SSSレア・スライムに転生した魚屋さん ~戦うつもりはないけど、どんどん強くなる~

草笛あたる(乱暴)
ファンタジー
転生したらスライムの突然変異だった。 レアらしくて、成長が異常に早いよ。 せっかくだから、自分の特技を活かして、日本の魚屋技術を異世界に広めたいな。 出刃包丁がない世界だったので、スライムの体内で作ったら、名刀に仕上がっちゃった。

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界ママ、今日も元気に無双中!

チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。 ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!? 目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流! 「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」 おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘! 魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

水神飛鳥の異世界茶会記 ~戦闘力ゼロの茶道家が、神業の【陶芸】と至高の【和菓子】で、野蛮な異世界を「癒やし」で侵略するようです~

月神世一
ファンタジー
「剣を下ろし、靴を脱いでください。……茶が入りましたよ」 ​ 猫を助けて死んだ茶道家・水神飛鳥(23歳)。 彼が転生したのは、魔法と闘気が支配する弱肉強食のファンタジー世界だった。 ​チート能力? 攻撃魔法? いいえ、彼が手にしたのは「茶道具一式」と「陶芸セット」が出せるスキルだけ。 ​「私がすべき事は、戦うことではありません。一服の茶を出し、心を整えることです」 ​ゴブリン相手に正座で茶を勧め、 戦場のど真ん中に「結界(茶室)」を展開して空気を変え、 牢屋にぶち込まれれば、そこを「隠れ家カフェ」にリフォームして看守を餌付けする。 ​そんな彼の振る舞う、異世界には存在しない「極上の甘味(カステラ・羊羹)」と、魔法よりも美しい「茶器」に、武闘派の獣人女王も、強欲な大商人も、次第に心を(胃袋を)掴まれていき……? ​「野暮な振る舞いは許しません」 ​これは、ブレない茶道家が、殺伐とした異世界を「おもてなし」で平和に変えていく、一期一会の物語。

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

【完結】まもの牧場へようこそ!~転移先は魔物牧場でした ~-ドラゴンの子育てから始める異世界田舎暮らし-

いっぺいちゃん
ファンタジー
平凡なサラリーマン、相原正人が目を覚ましたのは、 見知らぬ草原に佇むひとつの牧場だった。 そこは、人に捨てられ、行き場を失った魔物の孤児たちが集う場所。 泣き虫の赤子ドラゴン「リュー」。 やんちゃなフェンリルの仔「ギン」。 臆病なユニコーンの仔「フィーネ」。 ぷるぷる働き者のスライム「モチョ」。 彼らを「処分すべき危険種」と呼ぶ声が、王都や冒険者から届く。 けれど正人は誓う。 ――この子たちは、ただの“危険”なんかじゃない。 ――ここは、家族の居場所だ。 癒やしのスキル【癒やしの手】を頼りに、 命を守り、日々を紡ぎ、 “人と魔物が共に生きる未来”を探していく。 ◇ 🐉 癒やしと涙と、もふもふと。 ――これは、小さな牧場から始まる大きな物語。 ――世界に抗いながら、共に暮らすことを選んだ者たちの、優しい日常譚。 ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

処理中です...