『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人

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今日もアクアオッジ家は平和です

34 ⑨好きなら好きって言えばいいのに

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「アーサーが……ただの名前でお呼びすることをお許し下さいませね。おそらく彼の【スキルツリー】の恩恵だと思うのですけれど、沢山、本当に沢山の女性がアーサーの周りにおりましたわ」

 アクアオッジ家の三人がうんうん、と頷く。王子もアーサーの【交流スキル】の派生スキル、【フェロモン Lv10 MAX】のことを知っているので頷く。誇大表現でも比喩表現でもなく、単なる事実だった。
 当時領主館には、自分がアーサーに愛されていると誤解した女性が乗り込んできて、その対応に苦慮したものだ。そんなアクアオッジ家の面々を見てメイベルは続ける。

「アーサーはどんな女性にも優しくて、そのせいで誤解する方もとても多かった……。そして私も気が付いてしまったんです。彼が女性を見る目は人や動物たちに対する目と何ら変わりは無いということに。私に対する態度は少しは違っているかもと、思っていた時期があったかもしれませんが、自惚れる程のものでは無かった……あの眼差しは家族を見るものと同じだったのです」

(えっ? それは違うんじゃないかなあ?)
 メリルは首を傾げる。
 メイベルのことを口にした母さまの前で、アーサー兄さまは真っ赤になっていたし、言葉に詰まって、何も言い返せずにいた。
 あの顔は、たぶん……“好きな子の名前を不意に出されて、動揺した顔”だと思う。

 母アドリアナも何か言いたそうにメイベルのほうを見ている。
 二人の様子の変化にメイベルは気付かなかった。

「当時私は自分の【裁縫スキル】にとても誇りを持っておりましたの。デザイナーになることしか頭には無かったと申しますか。辺境伯ご一家の皆さまを前にして失礼だとは存じますが、次期辺境伯となる御方と愛を育むことなど考えられなかったのです」

 ちょっと寂しそうにメイベル子爵夫人はそこで語るのを止めた。

「今のお仕事がとても好きなのねメイベルちゃん。好きでないと分からない配慮がこの店には沢山あって素敵だもの」

「それは最高の誉め言葉ですわ。ありがとう存じます」

 母さまもアーサーのことにはもう触れないことにしたみたいだ。二人の問題だものね。それに好きなことを仕事にして自分の足でしっかり立っているメイベルはすごくカッコいい。あ、子爵夫人って言わないといけないんだった。でも精霊たちはちょっと不満そうだよね。

"アーサーってば何やってるのよぉ"

"鈍感男"

"ヒトってほんと面倒ねえ"

"ホントホント。好きって言うだけでいいのに"


 アーサー兄さまならもし結婚したとしても、好きな女性の願いならきっと叶えただろうにな。ちょっとずつズレたから今、こうなってるのかあ。上手くいかないもんだなあ。
 ……恋って、やっぱり面倒くさいものなのかもしれない。
 ほんとに、好きなら、好きって言えばいいのに。

 五つ目のお茶菓子を口に入れてモグモグするメリルの頬は、リスのように膨らんでいた。
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