迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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117. 宿屋の売店

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 馬車は軽快に走る。

 心と気持ちが、ウキウキはずむ。
 さっきとはなんだか、空気まで違う気がするよ!

 ホントにしばらく走っただけで宿屋に着いてしまった。

 降りて宿屋を見あげ、ちょっと固まってしまう。

 大っきな宿屋っ!
 すごく立派な宿屋で、ビックリ……

 大きさも作りもピアンタの上等な宿屋をゴツゴツさせて、木をそのまま強調させた感じ。
 それに少し威圧感もあるから、つい見上げてしまった。
 すごいな……
 さすがは国境沿いの宿屋。
 古いリゾート地の宿屋にきたような雰囲気もところどころあるから、それだけでもピアンタ王国とはぜんぜん違う。

 中に入ると、またビックリ!
 すごく広々としていて椅子とテーブル以外あまり無駄なモノ、装飾品も少ない。
 
 一階は食堂。
 あとは売店のような場所が少しあるだけだ。
 もしかしたら、たくさんの人を収容できるようになっているのかも……
 ここはやっぱり国境近く要の宿屋なんだと思ってしまった。
 あとでもっと見てみよう。

 まずはお腹が空いているので昼食みたいだ……
 ここのシチューがおいしいと、ガントが教えてくれる。
 みんなそのシチューとパンに決めた。
 それとハーブ水にデザートは、リンゴのパイ。
 ソードが全部頼んでくれる。
 ありがたい。
 
 うわっ、たしかに…… おいしい!

 宿屋の見た感じと国境近くということで、もっと素朴でアライ味付け、ピアンタの宿屋オヤジさんの味付けを想像していた。
 なのにどちらかというと、トムさんが作る手の込んだ上品な味の料理でおどろかされる。

 険しい森林の中の宿屋とは思えない……
 それだけラメール王国がすごいのか?
 それとも、ピアンタ王国が田舎だったということなのかな…… 

 デザートのリンゴのパイは、ホントにおいしかった。
 王都アストに来てから三年近く食べていない味。
 トムさんが特別に作ってくれていたパイが、ここにあるなんて感激だ!
 わたしがあんまりうれしそうに食べていたから、ガントが聞いてきた。

「パール、うまいか? もしかして初めて食べたのか?」

「すごくおいしいよ! リエール辺境伯領にいた頃は食べていたよ。 でもアストにきてからは、あの宿屋では出てこなかったから……三年食べてなかったんだ。ここの料理はなんだか、リエール辺境伯領を思い出すよ」

「そうなのですか? お口に合ってよかったですね」

「ここの料理長は、むかし王宮で働いていた人だからな。うまいんだよ」

「そうなんだ……」

 それでこんなに繊細でおいしい味付けなんだな。

 今日はこれでみんな解散、自由行動となる。

 部屋のカギをもらって明日の朝食までは各自が好きなときに下の食堂で食べ、出発時間の七時に馬車に集合。
 時間はこの宿屋にも大きなボンボン時計があるし、三人とも懐中時計を持っているそうでわたしも時間のわかるリングがあるから安心だ。

 それに鐘で時間を細かく知らせるのは、ピアンタ王国独特だとソードに教えてもらう。
 ラメール王国では、六時と十二時に一日四回。
 お城の鐘が鳴るだけだそうだ。
 お城で働く人たちに交代する時間を知らせるためみたい。
 この国では時計がそんなに珍しくないのかも?
 みんなはわたしが時計の魔道具を持っているのを知っているから、出発時間まで自由に過ごさせてもらう。

 まずは、部屋のチェックから……

 うわーっ!
 お風呂付きだよ!
 これはグレードの高い部屋なのか? 
 それともラメールでは、これが普通なの?

 ウソみたい。
 お風呂のお湯は魔石で出せるようになっている……
 魔道具の国、ラメール王国。
 すごいよ!
 
 トイレだって各階に共同だけど、魔道具のトイレがちゃんとあるし……
 ピアンタは一体……なんだったんだぁ!?
 ハァー、ちがいすぎる……     

 気を取り直してメリッサお姉さんからもらった、持ち手の長い布の袋にひざ掛けを一枚と、革の中袋もひとつ。
 あとは小さな革袋にお金を適当に入れて。
 さあっ! 買い物するぞっ! 
 心ウキウキ、売店へ。

 そこには数種類のジャムとハチミツが、キレイに並べてあった。

 リンゴのジャムにベリーのジャム。
 これはハチミツ? バター?
 少し変わっているのかな?
 値段もジャムは、一ビン銅貨五枚。
 ビンは全部同じ大きさで、大人のこぶしほどの大きさ。
 ガントたちじゃなく、女性のこぶしだけど十分だ。
 ハチミツも二種類?
 よくあるハチミツと……
 このバターみたいなハチミツは、古いのかな?
 いや、違う……

「いらっしゃいませ!」

 声をかけてきた女の子は、子ども?

「こんにちは! 今日着いたの? お土産に買っていかない? 少しぐらいなら、おまけするよ!」

 ほっほぉーっ? おまけすると、いうことは……
 いっぱい買わないとねっ!
 お婆さんには敵わないけど、この女の子なら……
 かけ引き、頑張れそうだぞ…… 
 こんどこそ!

「おいしいそうだよね! あなたが作っているの?」

「わたしはまだ、お手伝いかな? 」

「そうなんだ。あなたはここの子? わたしと同じぐらいだよね。いくつなの?」

「わたしの家はここの隣の土地で、養蜂をしているんだよ。それでここの売店に置かせてもらっているの。今年で九歳よ!」

「へーっ。じゃあ、わたしのひとつ下ね。わたしはもうすぐ十歳」

「そうなんだ。同じ歳か年下だと思ったよ」

 くぅっ! たしかに背は負けているけど……

「あなた背が高いよね……ハチミツは背が伸びるのかな?」

「さあ? でも、このハチミツはすごいんだよ! ホントは一ビン銀貨四枚はほしいんだけど、それでは高すぎてだれも買ってくれないから仕方なく、銀貨三枚にしているハチミツだからねっ!」

 たしかに、銀貨三枚でも高い。
 横には普通のハチミツが、銀貨一枚で売っている。
 もともとハチミツは高価なモノだけど。
 なにがちがうのか聞いてみた。 

 この固まって白っぽいのは古いからじゃなく、そういう種類なんだそうだ。
 採取後二、三日で自然にバターのように凝固する『硬蜜』というモノらしい。

「これは、数十年間うーん? もっとかも? 味も色も香りも変わらないんだよ!」

「えっ、そんなに!?」

 ラメール王国でもこの辺でしか採取できない、特別なハチミツみたいだった。

「これはね。ヤハッシという植物の蜜で、花期も四十日ぐらいだから流蜜は二十五日前後しかないし、天候によって流蜜量がすごく変わるの。だからどれだけ採取できるかもわからない、ホントに貴重なヤハッシのハチミツなんだ」

 特別に一口、味見させてもらう。

 んっ? 
 口の中に入れた途端……と、とろけたぁ!?

 うわーっ! これは、すごいよ。
 こんなすごいハチミツが、こんなところにあったなんて……

 これはーーっ! 買いだーーっ!!

 

 
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