迷い人と当たり人〜伝説の国の魔道具で気ままに快適冒険者ライフを目指します〜

青空ばらみ

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193. 親方にヒールをかける

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 なんとか親方をケルスさんと二人で説得して、奥の部屋でヒールを受けてもらえることになった。

 親方にできるだけ薄着になって寝てもらう。
 ケルスさんが親方の上半身を裸にして、ズボンも脱がし肌着だけにしていた。

 なんだかわたしも、もう慣れたかな?

 からだの状態を見る。

 親方は細かいケガを背中や肩にいっぱいしていた。

「親方? この中の傷で、勲章になるような思い出の傷ってある?」

「パールさん、それはどういう意味ですか?」

 親方より先にケルスさんが聞いてきた。

「ヒールをかけると古い傷が消えるから、思い出の傷は先に聞いて残るようにしようかなぁーって。ちょっと思ったんだよ」

「そんなことが、できるんですか?」

「わかんない。やったことないし……でも知らないで消すよりは、やれるかもしれないでしょ? 聞いておこうかなぁ~って」

「ハッハッハッ! そんなのは無いぞ! この傷や腰は昔からの付き合いで、あきらめているから気にせんでいい」

「わかった。じゃあ一度、わたしのヒールを試させてね」

「ああ、好きにしろ」

 親方に横になってもらって、わたしの後ろには椅子を用意してもらう。

 ケルスさんは親方を心配そうに見ている。

 まずは親方をじっと見つめて、どこが悪のか考えてみると……
 グレーのモヤが現れ、親方の全身にフワッと広がってスッと消えた。 
 うん、からだの様子がわかる。

 大丈夫だ。

 親方は疲労と腰と左肩かな?
 あとはたいした怪我じゃないし、病気もない。
 そういえば、左肩に傷跡があるな……

 よしっ!

 寝ている親方の肩と腰らへんに手をかざして……

「親方、カリンパニさんのからだ、とくに腰と左肩が正常に機能しますように……なおれっ! ヒール!!」

 願いを込めてヒールをかける。

 親方のからだ全体を、キラキラ優しい光が輝いて親方を包み込むと、一瞬キランっと輝きスッと消えた。

 わたしはやっぱり、椅子に座って休憩する。
 
「親方! どうですか? 腰の調子は大丈夫ですか?」

 肌着だけの親方に服を渡し、ケルスさんが不安げな表情で訪ねている。

「うぉっ!? これは?!」

 自分のからだの様子を確認しながらケルスさんから渡された服を着て、一度屈伸すると小刻みに震え出した。

「治ったぞっ! 治ったんだ……ハッハッハハ! 腰が軽い! 肩もほら、回せるぞー!!」

 親方は笑いながら、左腕をグルグル回している。

「親方~ 治ったんですね!? パールさんありがとう!!」

「パール! すごいぞ! ありがとう……感謝する……オレはもう諦めて……助かった……」

 ちょっと涙目の親方に、ああ……ホントに痛かったんだと思ってしまう……

「よかったね、親方。からだの調子がまだどこか、おかしなところはない?」

「ああ、大丈夫だ! これでまた、バリバリ好きなモノが作れる! ワッハッハ! 寿命が百年は伸びたぞっ!」

「アハッハ、それは良かった。いっぱい長生きしてよ、親方!」

「そうです。親方! もっといろいろボクに教えてくださいよ~ぉっ!」

「ああ、ああ。任せておけ、ケルス」

 なんだか二人はこれからそのまま森へ入っていくようで、準備をしだした。

 わたしはベビーベッドをひとつもらって、またいつものお土産セットに今回はリョジンボクの種も数個渡す。

「リョジンボクの種じゃないですか?! うわーっ まだ新しいっ!! 親方ーーっ、これ、ここで育ててみましょー!!」

 ケルスさんがすごくよろこんでくれた。
 森の奥で密かに育ててみるそうだ。
 持って帰って来て正解だな……
 
 そんなわたしもベビーベッドをみておどろく。

「うわぁ、親方ー!! これ、すごくかわいいベッドだね! 頭のところと足のところになる部分の木の飾り模様が、花と昆虫。木に果実って、かわいい!! うまく全体が絡まるように細かく掘られてるよ!」

「どっち側からも使える。 男の子でも、女の子でも大丈夫なように飾り模様がしてあるぞっ」

「マークたちよろこぶよ~! ありがとう!!」

「ハッハハ! パール! パール用のは、もっとすごいぞ! あと一カ月と少しで出来上がるから、また取りにこい」

「わかった。まだ生まれてもいないから、そんなに急がなくても大丈夫だよ。それに生まれてもすぐではそんなに連れまわしたりしないだろうからね」

「パールさん。次のベッドはパールさんの赤ちゃんまで使える、すごいベッドですよ!」

「うわーっ?! そうなんだ! でも、なんだかこの頃、わたしが結婚するまでとか、わたしの赤ちゃんとか、そんな夢みたいな話が出てくるからおかしくって! わたしまだ十歳だからねっ!」

「ハッハハ! 百年ぐらいは、すぐだぞ!」

「えーっ?? ホントかな?」

 みんなで笑い合って話し、親方のお店をでてきた。


 あとはメリッサのところにも寄ってモナルダから預かっていた荷物を渡し、また代わりの荷物を受け取って、今回は魔力ポーションを少し購入する。

 メリッサともっとおしゃべりしたかったけど、急ぎのお客さんが来たようなので残念だけどお店を出てきた。
 この頃なんだか忙しいんだと、メリッサがコソッと愚痴って呟いていたのが笑える。

「そこそこの忙しさがいいのに……」

 プッフ。

「少し早くピアンタまで来れるようになったから、またすぐ来るよ!」

「パール、無理はダメよっ。わたしたちの時間は長いんだから、ホントに無茶しないでね」

「うん。そうだね……わかったよ」

 わたしにしか聞こえないぐらいの小さな声で忠告してくれる、ありがたい……

 メリッサのところも早く終わって、しばらく通い慣れていた懐かしい道をアストの森へ向かって歩いてみる。

 公園まで来て、広場で少し休憩。
 そこで前に好きだった果実水が売っていたので、ひとつ買って飲んでみることにした。

 ハッ! まさかっ……

 わたし、口が肥えてる……?

 ライの料理長とトムさんたちの味に舌が慣れたんだ……

 ちょっと自分の変化におどろく。

 今日は素直にアストの森で練習用の薬草をとって、そこからワープで自分の新しい家まで戻っていくことにした。


  ♢♢♢


 わたしの家とマークたちの宿屋、そしてライの家にモナルダの家。

 四つの家をシーナが赤ちゃんを産むまでは、グルグルまわって規則正しく生活することに決める。

 いつ生まれてもいいように、一週間のわたしの居場所がマークたちにもわかりやすいよう、三日間モナルダの家で薬師の勉強、次の二日間はわたしの家とマークの宿屋を行ったり来たり。
 そして残り二日間はライの家へ行く。

 ソードにそう伝えると……

「モナルダのところに三日いるなら、ここにも三日いてはどうですか? 別に一週間で区切る必要もないでしょう? もっと大きなひと月単位で考えても良いのですから……パール付きの侍女たちはこれからもそのままにしておきます。せっかく仲良くなったのですし、急にあまり会えなくなると寂しがりますよ」

 プラムとシルエラがうなずいている……

「なるほど、そうか。別に一週間にこだわることはないのか……わかった。ここも三日にするよ。3、2、3だね!」


 しばらくはこれで生活して、シーナの赤ちゃん誕生を楽しみに待つことにした。

 あと一ヶ月もないそうだ……

 ホントに、楽しみだなぁ~!











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