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4話・アヤカは素の性格も悪役令嬢になって来ました
しおりを挟む貴族令嬢だった私、アヤカが悪役令嬢クラスのジョブになってから翌日になりました。
15歳になり、私は子供から悪役令嬢へクラスチェンジした。魔法使いのウィザードとしての成人の儀式をするはずが、何故かいきなりクラスチェンジして「悪役令嬢」というジョブになったの!
魔法使いとしてのスキルはあるけど、悪役令嬢って何?
悪役って森とかにいるゴブリンなりスライムでしょ? それに令嬢は私の事だけど……まぁいいや。
たまに変なクラスになるのもあるようだし。月齢の関係でのミスでしょう。昨日のタロットは愚者のフールだった。故に、私のクラスも悪役令嬢というわけのわからないクラスになった。
でも、それは全てバクーフ王の娘のスズカ姫様の「呪い」でしかなかったの!
そんな事を忘れるように私は自宅でぐーぐー寝ていた。朝は苦手だから起きるのが辛い。けどお腹が空くから沢山食べたい。この二択はいつも迷うわ……。
朝日が差し込む自宅の二階のベッドで寝てる私は、何やら異様な重さを感じていた。
「ううっ……何か重いわ。凄く重く感じる何かが……」
とにかく重いし、ハァハァ変な声が聞こえるから眠いけど目を開けようとしたの。
(……ん? 誰かいるの?)
目覚めると、目の前の美少女は私にキスをしようとしていた!
「ぽえ!? 貴女はスズカ姫姫様! 何してるの!?」
「何ってガールズラブよ。私は男よりも女の子が好きだから」
「危なかった……さっきのはガチのガールズラブ展開じゃないですか。私は勇者様が好きなのです。男性が好きなノーマルですから」
「本当に?」
「……シツコイのよこの腐れ外道が!」
と、スズカ姫様……いや、スズカの鼻をエグるようようにツネっていた。悪役令嬢モードになってるわ……。
「何か悪役令嬢になってからイライラするし暴力的になってる。クラスチェンジしたのが性格にまで出てるわ……」
「ヒロインをケチョンケチョンにするのが悪役令嬢なの。それでいいのよぉ……それでいいのぉ……」
「いちいち舌を舐めるな。気持ち悪い」
「その言葉もいいのぉ」
ダメだ。
言えば言うほど快感を与えてしまう。
「私は毎朝日課のタロット占いがあるから。邪魔しないでね」
「私は邪魔しないけどね」
すると、私の部屋の扉がノックされお母さんが入って来た。
「こんな娘の汚い部屋で申し訳ありませんねスズカ姫様。とりあえず甘い物と紅茶をお持ちしました。お口に合うかどうかわかりませんがどうぞ」
ショートケーキと紅茶が運ばれて来た。
こんな女にはドブ水と、カラスも食べないパン屑で十分なのよ。
ニコニコとSSS級のお姫様モードのスズカは言う。
「あらお母様、私にはお構い無く。アヤカさんにはこれからのバクーフ王国の救世主ですから仲良くさせて頂きます」
「スズカ姫様にそこまで言っていただけるとは感謝感激です! こらアヤカ。いつまでもベッドにいないで貴女も感謝するのだよ」
「いや、スズカ姫は十番目の娘だからたいした権力無いし。嫁いだら終わりだし」
と、正論を述べたらお母さんに怒られた。
タロット占いはやめておこう。
今占っても悪い結果になりそうだし。
そんなこんなで私も着替えて、歯を磨いてから紅茶を飲んでショートケーキを食べる。
「朝からショートケーキ最高。スズカの口に合わないだろうから、私が食べてあげてもいいわよ?」
「もう悪役令嬢モードをマスターしつつあるわね。もしかして元々腹黒なのかしら?」
「……それはあえて否定しない。悪役令嬢になってからイライラするのが早いだけで人格まで変わってるわけじゃないから」
「いい答えね。やはり悪役令嬢は私の望むジョブのようだわ」
と、スズカはフォークに刺したイチゴを突き出し、私に問うの。
「ショートケーキのイチゴは最後に食べる派? 食べない派?」
「つまらない質問ね。私は交互に食べる派。クリームとスポンジを食べて口の中を甘くする。その次に酸味と甘みのイチゴを食べる。これぞ私のショートケーキ美学」
「その美学の方がつまらないわよ。ショートケーキのイチゴは最初に食べるの。アヤカの食べ方は飴と鞭ね。流石は悪役令嬢」
「意味わからないわよ。下衆下民が!」
アゴを掴んで見下した。
また悪役令嬢モードになってしまった。
こんな話をしながらも、プリスセスモードのスズカ姫様はやっぱり全てがSSS級なのが良くわかったの。基本的なオーラや佇まいが違う。天性のモノ以上に、訓練された気品がある。だからこそ、美貌と品性を使ってどこかの王国へ嫁いで行く。
王様の娘を嫁がせる事により、相手国と戦争の火種になるのを防ぐ意味と、他国の内部を見るスパイの両方の役割がある。
王族と貴族の令嬢の違いを知ったの。
(王族もただ市民の税であぐらをかいてるわけじゃないのね。十番目ながらスズカはちゃんとSSS級のお姫様を演じている。そこだけは認められるわ)
そして、王族はまるで金の使い方が違うというのをまず思い知らされたの。
「郊外の森に貴女の住処を用意したわ。少し古い建物けど、そこまで気にしないタイプでしょ?」
スズカはバクーフ王国東側近郊の森の一角にある、古い建物を用意してくれた。話を聞く限り、古いとは言えかなりの豪邸で、一人で住むには広すぎると感じたわ。
でも、もう成人であり、それもクエストクラスなので両親とは住めないの。イージージョブなら自宅で暮らせるけどね。まだ王への挨拶は済ませてないけど、仮にもバクーフ王国のクエストクラスの人間だから王国に仕えるのが使命なの。
「そんなわけで、早めに引っ越してね。私の父バクーフ王と会う日にはもう引っ越せる準備をしときなさい。そこで初夜を迎えましょう」
「初夜? それは無いです。スズカは女だし。男女の行為は出来ません」
「残念ね。これから悪役令嬢として私の婚約者の他国王子との婚約破棄が成功しない場合があったとする。その時「呪い」としてガールズラブ展開になるの。その時は、私の股間にアレが生えるのよ」
「アレが生える……ぽえ!?」
私はアレを想像してしまった!
子供の頃、勇者様に命を助けてもらった時に一度だけ勇者様のアレを見ているの。私の命を助けてくれる時に裸だったし。今でも鮮明に覚えてるわ……って今は関係無いわね。
そういえば、昨日バクーフ森のニートさんのも見てしまった……。
「でもスズカ。アレが生えたらガールズラブ展開じゃないじゃん?」
「私は私のままだからガールズラブ展開なの。ピー奴隷という事。または愛玩動物」
「自分でピー入れるな。とにかくガールズラブ展開にならないよう、私は「悪役令嬢」として活躍するわよ。クエストクラスなら仕事にも困らないし、モンスターが出ても負ける事も無いでしょ。クエストクラスになれた事だけは感謝する」
「いいわねぇ……感謝しつつ私の腹に一撃かますアヤカ。素敵でペロペロしたいわ」
「うん。ありがとう。散れ」
とりあえず悪役令嬢らしくビンタをかましてあげたわ。
ペロペロされたら気持ち悪いから。
でもこのドSでドMには喜びでしかないのがムカつく!
「たまらないわ……悪役令嬢のビンタ。もう一度して」
「一億ゼニーくれたらね。それに私は男が好きよ。ノーマルなの。勇者様ラブなの。だからスズカの呪いを解く日までガールズラブ展開は絶対避けるわ」
「貴女の悪役令嬢としての力が私に幸福をもたらすの。せいぜい頑張りなさい」
「とんだ呪いだ。呪いたい」
悪役令嬢というジョブはウィザードクラスの延長線上にあるクエストクラスだから悪くわは無い。けど、呪いのせいでスズカから孕まされガールズラブ展開になるのは無理。だから必ず呪いは解く。
呪いを解く条件・真実の愛である「トゥルーラブ」を見つける事。
でも悪役令嬢としてトゥルーラブを見つけるのって難しいよね? 私の呪いを解く条件としては、とてもハードモードのようです勇者様。でも勇者様に出会えれば一発でトゥルーラブをゲットだわ!
そして、私はスズカに案内されてバクーフ王国近郊の東側にある、バクーフの森の建物に到着したの。それは二階建ての古びた建物だったわ。古いけど格式がある別荘のような建物で素敵なの。
「ぽよ? これがこれからの私の家……デカイ! とっととスズカに迫る他国王子との婚約破棄をして、ここを勇者様との愛の巣にしてやるわよ!」
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