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3話・金髪イケメンのニートさん

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 悪役令嬢になった私は、バクーフ王の娘のスズカ姫様との出会いの後の出来事を家で思い出していたわ。バクーフ森の奥に住む金髪イケメンのニートさんの事を……。

「ゆ、勇者様?」

 ニートさんに出会った後、私は背中の勇者烙印の疼きがあったの。少し意識が飛んだ後に目の前にいたのは、十年前の記憶に近い勇者様がいた。

 なんでこんな森の中に勇者様が……?
 すると、その勇者様のような金髪の青年は言います。

「僕はただのニートだよ? 勇者なんて大それた人間じゃないよ」

「そ、そうだよね。勇者様がニートなわけが無い」

 どうやらこのニートさんは森で暮らしているらしく、私のファイアー魔法のぼや騒ぎをスライムに話されて来たみたい。サラサラの金髪に青い瞳。整った顔にスラッとしたスタイル。でもこのイケメンはニートなの。残念!

 ニートはクラスを選ばない人がなるクラスで、社会のはみ出し者だから街じゃなくて森に住んでいる。
森には食べられるモンスターがいて、アイテムが手に入る事もある。だからニートはモンスターを退治してる人もいれば、仲良くなる人もいる。

 特殊なクラスだと三十年童貞でいると、「童帝」になれるジョブもあるようなの。フラフラしてる、女を抱かない、自家発電しない事で日々パワーが上がるようね。自家発電の意味は私に聞かないでね?

(でも、この人はやはり勇者様の十年前に似てる。十年後は知らないけど)

 そうして、ニートさんに勇者様と勘違いした事を謝る。

「ごめんなさい!  ニートさんが勇者様に似てると思っただけなの。十年前に見た勇者様に似ていたからつい……」


「十年前か。それって、十年後の勇者様を知らないとも言えない」

「ニートさん余計な事はいいのです。とりあえずジョブについて働きましょう。私は運がいいのか悪いのか、支配者級のクエストクラスになれました。ニートジョブでは飢え死にしますよ?」

「突然、大人っぽくなったね。目もギラギラしてるし。僕の生活は問題無いよ。友達のスライムとたまに旅に出てレアアイテム稼いでるし、そこまでお金に困ってないんだ。森では水も食料も手に入るし、家も小屋だけど持ち家だしね」

「ニートさん中々強いんですね。普通のニートとは違います。それに友達がスライムなのも羨ましい」

「確かに君はクエストクラスにクラスチェンジしたようだね。知ってるだろうけど、ジョブのマスタークラスからは必ず従者が必要になるよ? 弟子の取る取らないは自由にだけど従者は必ず必要。僕のスライムのようにね」

「それは従者じゃなくて友達ですよね?」

「君は鋭いね。悪役令嬢というジョブはかなり良いジョブなのかも知れない」

 何故か悪役令嬢を褒められた。嬉しいけど、物事をハッキリ言い過ぎる性格になってきてるからこのまま行くとヤバイかも?

「モンスターを従者にするのも面白いと思いますが、モンスターを従者にするなんて魔族とかしかいないですから。私も誰を従者にするかは王様に会ってから相談します」

 すると、私はお腹が空いて鳴ってしまう。
 はわわわ……!  恥ずかしい!
 フフと微笑む金髪イケメンニートさんは、

「おそらくクラスチェンジして疲労しているんだ。このままじゃ家に帰れないだろう。お腹が空いたなら食事をしよう。スライム!」

「アイアイサー」

 スライムが森の中から現れて台車に変形したの。

「さぁ乗って。僕のスライムを助けてくれたお礼だよ」

「あ、それなら私の魔法で行けますよ。悪役令嬢ジョブはチートなので」

「君はチートかもしれないけど力の使い方は未熟だ。この森もモンスター以外の動物も人間も暮らしている。感情的に魔法を使うのはこれから気を付けよう」

「あ……はい」

 どうやらこのニートさんはやけに真面目なニートさんのようね。ちょっとニートに対するイメージが変わるかも。

 スライム台車に乗ると、スライムはゼリー状に崩れてしまった! パシャッと水が飛び散る。
 私の体重のせい!?
 いや、違うでしょ?

「あらら。今のスライムの光の魔力じゃ無理か」

「すみません! 私のせいですか!? それに服がビショビショに……」

「いや、君の闇属性の強さにスライムの光属性が耐えきれなかっただけだよ。服はボロだからいいさ」

 私は闇のヴェールで守られたようだけど、ニートさんの服はビショビショになる。濡れたニートさん、ちょっと色気が出てカッコいい……。

「やはり君は闇の魔力が強いね。スライムの光の魔力を強化するよ!」

 ハッ!  とゼリー状になるスライムに光属性魔力を注入して復活させた。す、凄い!  そしてニートさんは強化されたスライムに言う。

「スライム。僕の服を吸い取ってくれ」

「アイアイサー」

 ニートさんの股間に張り付いたスライムに、ニートさんの服が吸い込まれて行く。これって全裸コース?

「顔を隠さなくてもいいよ。僕の服は元々ボロいから捨ててもいいんだ。それに股間はスライムが完全ガードしてくれるから安心してくれ」

「はわわ……!  なんだ……」

 確かにスライムが下半身をガードしてるわ。確かに見えない……。別に見たくないけどね。ホントだよ?

「とりあえず僕も寒いから小屋へ急ごう。とりあえず君はスライムの台車に乗って」

 あっ!
 ああああああああ……あ!
私はお父さん以外では十年前に勇者様のしか見た事がないアレを見てしまった!

「……ニートさん。下!  下!」

「あら?  スライムが無くなってる!  あわわ!?」

 スライムをまた台車に変身させた事でニートさんの生々しいモノを見てしまいました。あぁ……やってまった。でも私のせいでは無い!

 とりあえず、謝られたけど問題無いわ。
 私達は歩いてニートさんの小屋に向かう事にしたの。

「スララ大丈夫?  私の肩に乗る?」

「?  大丈夫です。拙者はタフなので」

 ふと、ニートさんが聞いて来る。

「スララって何?」

「スライムだから……スララ。ダメでした?」

「いや、それはいいよ。素晴らしい名前だ」

「スライムっていっぱいいるし、友達なら名前が無いとね。ありがとうニートさん。名前付け許してくれて」

「いいんだよ。この出会いも運命だ。なら運命に従おう。全てが終わるまではね」

(運命……いいかも☆)

 ニートさんはニートだけど顔はカッコイイ。
 まさか女の人を騙してるヒモの人とか!?
 言葉使いも穏やかだし……。

 でも、そんな感じの人じゃないな。
 私も本当の勇者様にまた会いたい。
 浮気!  ダメ!  絶対!

 でも悪役令嬢なら、勇者様に会えても間違えて酷い事言うかも!  ピーンチ!

(ま、後で考えればいいや。お腹空いた。シチュー食べたい。ゴブリン肉のブロッコリーシチューがいいな)

 そうして、ニートさんの古い小屋で食事を頂いて私は自宅へ帰りました。

 と、まぁ昨日の記憶を思い出した所で今後の課題は悪役令嬢としての自分ね。それはバクーフ王の娘のスズカ姫様から今後の事を聞いて、頑張るしかないわね。

 ガールズラブ展開とかありえない!

 勇者様との愛があるんだし……。
 頑張れ悪役令嬢わたし
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