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三章・チョウシュウ王子との婚約破棄編
46話・国が苦しい時こそパーティーです
しおりを挟む魔族によるバクーフ王襲撃事件で婚約イベントも盛り下がってしまい、バクーフ王国全体もあまりいい空気ではなかったわ。なので、王族や貴族などを交えたパーティーを開く事になりました。と言っても、歓迎パーティーと同じようなものだけどね。
バクーフ王の娘であるスズカの護衛として私はパーティー会場の隅に黒いドレス姿で立っているの。今日は外の景色を見れるベランダも魔族対策として封鎖されているわ。
(とりあえず魔族対策はバッチリでしょう。おそらくもう魔族はいないだろうけど、警戒は必要。そして、今日のタロットカード占いはタワーの正位置。衝撃的な事が起こる。ネガティブな事が起こる。これは警戒しとかないと。敵は魔族なのか、チョウシュウ王子なのか、スズカなのか……)
今日はゲストとしてニートさんも会場に来ているわ。目立ってはいけないから黒のスーツ姿だけど、金髪と青い瞳。長身でイケメンの為に目立ってしまっているわ。貴族令嬢のエサにならないといいけどね。
それに、ニートさんはチョウシュウ王子とは初対面ね。魔族を殴った功績で呼ばれているから少しみんなビビってるけど、イケメンだから興味がある人がチラホラいるわね。
とりあえず変な虫がつかないように、早めにチョウシュウ王子に紹介しておこうかしら。スズカもまだ来てない事だし。
「チョウシュウ王子。この方が魔族を殴って撃退させたニートジョブのニートさんです」
「初めましてニートジョブのニートです。今日はゲストとしてお招きありがとうございます」
「貴方がニートジョブのニートさんか。小生はチョウシュウ王国王子。今回は活躍だったね。我が国の酒もあるからたくさん飲んでくれたまえよ。自信過剰にね」
それから三人で少し話したわ。けど、あまりチョウシュウ王子もニートさんを好んでいないのか、話が盛り上がらないわ。もしかしたらマッスルブレインで得たデータが気に入らなかったのかしら?
ニートさんはスズカとの関係もあるからね。友達とは言え、チョウシュウ王子からすれば気に入らない人間の可能性もあるわ。
「では小生はこれで失礼するよ。ぐるぐるメガネを外してから貴族令嬢達がウルサイからね」
そのままチョウシュウ王子は貴族令嬢達との輪に入って行ったの。自分でも今の感じを感じていたニートさんは、
「やはり僕はチョウシュウ王子には会わない方が良かったかな? アヤカの婚約破棄についても、邪魔になるんじゃないか?」
「いえ、ニートさんは私の婚約破棄においての邪魔にはならないわ。今回の王子は他人の身体的・精神的データを予想してしまう王子だから下手な小細工をすると返って怪しまれる。そこが、今回婚約破棄を成立させるキーポイントよ」
スズカがかなりリードしている状況では、スズカの心の二面性から生まれるボロが出ないとならない。ヒロインモードになるスズカの行動で、チョウシュウ王子の気持ちを変えないとならないの。だから少し二人を泳がせておく必要もある。
「そのまま二人で泳いでいかれないようにね。僕はこの三人の貴族令嬢と仲良くするよ。アヤカもいい人を見つける事だ」
(私にはもう勇者様がいるのよニートさん!)
すでにニートさんは貴族令嬢達に囲まれてデレデレしていたの。デレデレしてんじゃないわよニートさん!
そして、やはりぐるぐるメガネを外しているチョウシュウ王子はモテモテになっているわ。金髪と青髪の共演になってしまっているパーティー会場ね。あのぐるぐるメガネとの素顔のギャップが凄いから仕方ないけど。
バクーフ王国からもバクーフ王襲撃事件の犯人が正式に魔族という事が発表され、チョウシュウ王国の疑いも晴れたの。バクーフ王やスズカも現れ、パーティーは盛り上がっているわ。
(魔族も出る事は無いだろうし、ここはスズカがどうチョウシュウ王子に対して出るかも判断材料ね。もう、このパーティー会場では何もしない可能性もあるけどね)
すると、チョウシュウ王子はスズカの方へ向かって歩き出していたわ。どうやら何か話しがあるようね。
「やぁ、スズカ姫。相変わらず素敵な女性だよ。突然だが一つ聞きたい事がある。スズカ姫はあのニートという金髪の男を知っているのか?」
「えぇ、ニートさんとは友人ですわ」
「じゃあ、アヤカ君とニートとの関係は? 恋人ではないだろう? あの二人の関係は何なんだ?」
「……チョウシュウ王子。何故そのような話を? 何か二人にありましたか?」
「いや、やけに親しい仲だと思ってね。クエストクラスとニートという関係じゃ、釣り合わないからね」
「あの二人は家がバクーフ森の中にあるので、近所というだけですよ。特に問題無い二人……です」
すると、スズカは少し頭を抑えていたわ。立ちくらみがしたのか、チョウシュウ王子に支えられていたの。
「立ちくらみかスズカ姫。君が倒れたら父上も心配する。特に魔族に襲撃された父上は色々と不安はまだあるようだ。スズカも心配じゃないか?」
「全く心配ではありません。私は王子と婚約出来るか出来ないかが、心配です」
「そうか……その答えは、最終的にはっきりとするよ。チョウシュウ王国王子としてね」
そして、パーティーは問題無く終わりとなったわ。でも私には問題が残ったの。パーティー終わりにチョウシュウ王子が話しがあるとして、人通りの少ない廊下に呼び出されていたの。周囲に気を使いながら王子は言うわ。
「どうやら小生はスズカ姫の本心は聞き出せないようだよ。キスまでしたがそれ以降も変化は無い。おそらくそれ以上の行為をしても変わらないと思う。残念だが、スズカの心にはたどり着けないようだ」
「そう……なのね。でもそれは時間をかけてクリアするしか無いわよ」
「それに、スズカはまるで父上の事を心配もしない。自分の婚約よりも、父上が襲撃されたなら父上の方が大事だろう? 婚約しか考えてない人形のようだよスズカは」
「チョウシュウ王子も、このバクーフでの生活でだいぶ変わったわね」
「恋をして、色々とわかってしまっただけさ」
そうして、チョウシュウはこの呼び出しの本題を告げたわ。それは私にとっても驚きの内容だったの。
「明日にでもパーティー会場にいたニートを呼び出してくれ。小生はニートに話したい事もある。勿論、スズカ君もいてくれよ」
「ニートさんを……?」
チョウシュウ王子は何故かニートさんを呼ぶ事を望んでいたわ。だから私もニートさんに頼んでみたの。そうして、チョウシュウ王子とニートさんは私との仲介で出会う事になったわ。
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