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三章・チョウシュウ王子との婚約破棄編

47話・チョウシュウ王子はニートさんを呼び出したのです

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 チョウシュウ王子からニートさんを呼ぶように告げたられた私は戸惑いを覚えました。けど、一応ニートさんにも伝えてから了承を得ました。なので、今日はチョウシュウ王子とニートさんを会わせる事になったのです。その私はバクーフ王宮のチョウシュウ王子の部屋の前で王子を待っています。

(今回は今までの王子のようにニートさんの小屋に行くなどの接点は無かったのに何故? 婚約イベント盛り上げパーティーだけの出会いだったのに)

 チョウシュウ王子の散歩名目で私が護衛と監視をする事になり、王子を東地区のバクーフ森まで案内します。でも、森まで歩いて行く中でどうしても聞きたい事があるの。

「チョウシュウ王子とニートさんの繋がりは他にあるとは思えないのに、何故ニートさんを呼んだの? スズカに関係しているから?」

「それは君に関係してるからだよアヤカ君」

「私に……?」

「細かい話はニートと会ってから話そう。彼がいないと小生の話はしても仕方ないさ」

 そうして、私とチョウシュウ王子はバクーフ王国東の森にやって来たわ。小川が流れる場所にニートさんはいたの。丸太に座るニートさんはここだよと手を振ったわ。私達も丸太に座り、チョウシュウ王子は早速話し出したの。

「突然会いたいと言って、こうして会ってくれるのを感謝するよニートさん。早速だけど今回の話の件はニートさんとアヤカ君が兄妹以上の近しい存在なのかを知りたいんだ」

『!?』

 私とニートさんは驚きを隠せないわ。いきなり私達が兄妹かなんて言われたら驚くもの。それが他国の王子からの意見なら尚更よ。驚く私達を気にしないチョウシュウ王子は自信過剰に言ってるわ。彼の言葉を借りるならね。

「小生にはチョウシュウ王国王族に発現するオンリーマジック・ブレインマッスルがあってね。それは相手の心音や身体の筋肉の動き、呼吸などから身体的・精神的な状況を知る事が出来る能力だ。そして、マッスルブレインはアヤカ君とニートとのある関係性を示したんだよ」

「それで僕を呼んだのか。……話の続きを聞こうかチョウシュウ王子」

「続けるよ。小生の見立てではアヤカ君とニートさんは全く同じ光の魔力回路という事さ。人は一人、一人違う以上魔力というもの厳密に言えば多少の違いはある。魔力回路が全く同じ人間はこの世に一人もいない以上、君達には何かあると思ったんだ」

「待って、チョウシュウ王子。貴方は婚約イベントと外交に来ているんでしょう? 私とニートさんの関係なんてどうでもいいじゃない」

「いや、アヤカ。チョウシュウ王子の話を聞こう。ここまで知られているなら聞くべきだよ最後までね」

 どうやらニートさんはチョウシュウ王子の言いたい事がある程度わかっているような顔だわ。それを察しているチョウシュウ王子は、結論を言ったの。

「つまり、ニートさんは勇者の可能性があると言う事を言いたい。そして、アヤカ君は勇者の力を得ているという事もね」

 私が勇者様の力を得ている……?
 まさか背中にある勇者烙印の事まで感知しているのチョウシュウ王子は? ブレインマッスルのスキルでそこまで知られてしまってたのね。少し……いや、かなり許せない事だわ。

 不快な気持ちを噛み締めて、チョウシュウ王族に発現するスキル・マッスルブレインで感じていた事を話して来たの。私とニートさんは光の魔力の魔力回路が同じ。だから兄妹なのか? という事とニートさんが勇者ではないのか? という確信的な事を聞いているわ。

(……確かにニートさんと勇者様は年齢的にも同じだし、やはり先の王子達が言っていたようにニートさんは勇者様なの? この私の背中の勇者烙印は勇者様から与えられた印だし……)

 特に表情を変えないニートさんは丸太に座ったまま小川の流れを見つめている。私は混乱していてこの場から逃げ出したい気持ちがあったわ。この空気感は精神的に辛いわね。それを更に悪くするようにチョウシュウ王子は言う。

「アヤカ君の心拍数が上がり過ぎてるから早めの結論を願うよ。二人は兄妹なのか?」

「……」

 私はニートさんの言葉を待つ。勿論、兄妹のわけはないしこの答えにはニートさんが答えないとならない。そして、何故勇者様の光の魔力回路をニートさんが持っているのかも――。

 パン! と手を叩いたチョウシュウ王子は座っている丸太から立ち上がって言うの。

「小生も唐突に話を進めたのは謝る。凄まじい筋肉の収縮と激情を感じるよニートさん」

「……」

「人の二面性などはたまに感じる事もある。特にスズカ姫はその二面性が顕著だ。しかし、君達のようなまるでリンクしてるような感覚は今まで感じた事が無い。その理由が知りたいんだ。これはただの興味本位だ。

 そして、沈黙を保っていたニートさんも立ち上がり話す覚悟を決めたようね。今までどこか飄々としていて捉え所が無かったニートさんの真実を知ってしまう時が来たわ。私もそれについては知りたい。

「それでは答えようチョウシュウ王子。まず、僕とアヤカは兄妹ではない。そして僕は勇者――」

「興味本位で人は死にますわよチョウシュウ王子」

『!? スズカ!』

 そう、このバクーフ森の小川の前に突如スズカが現れたわ。特に散歩としか伝えてないからこの場所を特定するのも難しかっただろうに。そのスズカは走って来たのか髪は乱れていて、汗が流れているわ。顔も青ざめていてヒロインモードが解除された後のようなスズカの姿だった――。

「違いますわチョウシュウ王子。その二人は赤の他人です。そしてニートさんは勇者ではない。それは貴方のマッスルブレインならわかるはずよ。今はこの答えが真実。でしょうニートさん?」

「あぁ……今は今はスズカ姫の言った事が真実だ。そこに嘘は無いよチョウシュウ王子」

「そう……か。確かに勇者ほどの力は今のニートさんには感じない。わかった。二人の意見を信じよう。小生の興味本位で嫌な気持ちにさせてしまったね。何かお詫びを――」

「そんなのいらないわよチョウシュウ王子。それより王宮に戻るわよ。こんな郊外の森は魔族が潜んでたら危な……」

『スズカ!』

 突如スズカは倒れたわ!
 すぐにニートさんはスズカを担ぎ上げ、チョウシュウ王子はいち早く駆けてバクーフ王宮に今の事態を知らせに行く。私もスズカを背中に担ぐニートさんの横を小走りで駆ける。

(さっきのスズカは赤い瞳ではないスズカだった。つまり、ヒロインモードじゃないと言う事。まだ、婚約イベントも終わってないのにヒロインモードが解除されたの? しかも、ニートさんの真実がわかる時に現れるなんて……ニートさんとスズカには、やはり大きな秘密が隠されているんじゃ……)

 そう思いながら気絶しているスズカの顔を見つめていた。どうやらスズカは熱で倒れていたようで、翌日には回復したの。ヒロインモードのスズカとしてね。

 私はチョウシュウ王子の滞在最終日前日まで特に何もする事が出来ず、その最終日の夜にチョウシュウ王子と会う事になったの。
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