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2話・青眼の東堂真白
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「ぶはっ! だ、大丈夫東堂さん!?」
「うん……ごめんなさい。仕事中邪魔しちゃったね」
「とりあえずプールから上がろう。東堂さんも制服がびしょ濡れだし」
東堂さんが滑った勢いで俺はプールに落ちた。プールから上がった二人は、びしょ濡れのまま少し気まずい空気になりそうだった。東堂さんの白いシャツからブラジャーが透けて見えて、俺も少し興奮してしまったからだ。
(まさか観察力の高い東堂さんの青眼に見破られてないよな。でも、そんな事は今は考えても仕方ない。俺はグレイなんだからな)
東堂さんはとても観察力があり、人の行動理由を探り当てる事が出来る。それは恋愛などにも応用されていて、誰が誰を好きかもある程度把握している女の子だ。
その観察力が青眼と言われる所以でもある。
とりあえず適当に話題を出しながら、謝って来る東堂さんを落ち着かせた。
「……えっと。東堂さん、今日はマコトプールに来る日だったっけ?」
「今日はたまたまね。石田君がパフェを奢ってくれるという耳寄りな話に誘惑されてしまって……」
「成る程ね。ま、いいんじゃない。誘惑されても石田はグレイだし」
「それは赤井君もそうだよね?」
「そうだね」
と、ずぶ濡れの東堂さんに答える。
東堂さんは運動神経は良くは無いが、平泳ぎでゆっくり泳ぐのが好きらしくマコトプールには週に一回は来ている。甘いものが好きなようで、密かにダイエットをしているのもあるようだ。ミスって体重計に乗ってる時に声をかけたら、大人しい東堂さんからまさかの殺気を感じたから確実だ。
「とりあえず着替えのジャージがあるから、それ着てよ。マコトプールのジャージだけど普段から着てる会員の人もいるから、帰り道でもそこまで恥ずかしくないと思う」
「ありがとう。ごめんね赤井君。今度来る時洗って返すよ」
「別にいつでもいいよ。それより、びしょ濡れだから早く着替えに行こう。女性更衣室は掃除が終わってるだろうから人もいないはず」
そうして、俺は東堂さんを着替えさせる為に女性更衣室に案内する。東堂さんとは学校でもたまに話し、マコトプールでも話してはいるが、完全に二人っきりというのはあまり無い。俺に対する恋愛感情的なものは感じない女だけど、俺はあまり自分の事は話さないようにしつつ会話する。
「夏休みももう終わりだけど、東堂さんはどこか旅行とか行ったの?」
「家族と京都と箱根に行ったよ。色々見て、食べて、食べて、食べたけど……日傘では暑さそのものは防げないからしんどかったけど美味しかった!」
「そこ、楽しかったじゃなくていいんだ」
「私の場合はね。私は食べ歩きで色々と人や季節を感じてネタを得るの」
「ネタを得る?」
「人と会話するネタとかね」
「東堂さんは大人しそうだけど、結構色々な人と話しているよね。人と関わったり、繋がりを求めているのかな?」
「人との繋がりはいいわよ。だって心が繋がれば、全て繋がれるでしょ?」
俺にとっては厳しい言葉だ。
恋愛に嫌気がさしている俺は、自分をグレイとして人と深く接するのを辞めている。今の状態は楽でいいと思っているからからな。そして、東堂さんは俺と勇の出会いについて聞いて来た。
「赤井君は石田君と仲良くしてるけど、グレイの二人は高校で出会ったんだよね? やけに仲良くなるのが早かったんじゃない? 初めはお互いの事を知らないわけだし」
「あぁ、その事ね……」
青眼の瞳で聞いて来る東堂さんに答えた。
あれは、まだ中学卒業してから誠市に引っ越して来た頃の話だ。都内から神奈川県誠市へ中学卒業と同時に引っ越ししていたんだ。その時、これから行く高校の近くを歩いていた男が不良に絡まれてるのを助けた。
それはケンカの強いオネエだったんだ。
「大丈夫か? 加勢したつもりだったけど、加勢しなくても良かったな」
「いや、イケメンに助けられてサンキューだよ。たまに現れるんだよね。僕は女にモテるから嫉妬した男がね。僕は女なんて好きじゃないのに」
「お前、まさかテレビとかネットで噂のオネエってやつか?」
「僕の事はオネエじゃなくてグレイにしておいてね。グレイゾーンのグレイって事で!」
やけに明るいオネエ……いや、グレイと思いつつ俺もそのグレイに納得していた。
「確かに女は面倒だ……面倒過ぎる……」
俺は少し前の元カノとの出来事を思い出す。それを、目の前のグレイは神妙な顔で見ていた。
(もう、あんな思いはしたくない。なら、俺も……)
ふと、気の合いそうなグレイの男に興味を持って言っていた。このグレイを利用すれば元カノや女との関係も断ち切る事が出来るだろうと言う希望を込めて――。
「俺も今からグレイだ。俺もお前と同じ事にしておけ」
というエピソードだが、東堂さんには勇が転んだ所を助けたという事にしておいた。変な武勇伝は必要無いし、グレイの件を話すわけにもいかない。東堂さんとは、このまま穏やかな関係でいたいからな。
わざわざ勇が東堂さんをここに連れて来た意味がわからない俺は、その意味を自分なりに考えていた。
(勇のヤツめ……俺は東堂さんに恋愛感情は無いぞ? ただ、他の女と違い自然体でいられて楽なだけだ。ったく、勇は余計な事をする。本当はグレイじゃないから、普通に女を好きになれって事だろうが、今はそんな気分じゃないんだよ)
東堂さんに着替えてもらっている最中、俺はプールの最終確認をしようと歩き出す。すると、どこかで聞いた事のある声が俺の足を止めた。金髪で大きなイヤリングをした、少し派手な少女が誠高校の制服を着て立っている。
「久しぶりじゃん総司。相変わらず掃除好きなんだね。過去なんて水に流して、また楽しもうよ私と」
「……西村唯。何故、ここにいる……?」
それは、俺の昔の「彼女」だった女だ。
現在を生きる俺に、過去からのシシャが現れた。
「うん……ごめんなさい。仕事中邪魔しちゃったね」
「とりあえずプールから上がろう。東堂さんも制服がびしょ濡れだし」
東堂さんが滑った勢いで俺はプールに落ちた。プールから上がった二人は、びしょ濡れのまま少し気まずい空気になりそうだった。東堂さんの白いシャツからブラジャーが透けて見えて、俺も少し興奮してしまったからだ。
(まさか観察力の高い東堂さんの青眼に見破られてないよな。でも、そんな事は今は考えても仕方ない。俺はグレイなんだからな)
東堂さんはとても観察力があり、人の行動理由を探り当てる事が出来る。それは恋愛などにも応用されていて、誰が誰を好きかもある程度把握している女の子だ。
その観察力が青眼と言われる所以でもある。
とりあえず適当に話題を出しながら、謝って来る東堂さんを落ち着かせた。
「……えっと。東堂さん、今日はマコトプールに来る日だったっけ?」
「今日はたまたまね。石田君がパフェを奢ってくれるという耳寄りな話に誘惑されてしまって……」
「成る程ね。ま、いいんじゃない。誘惑されても石田はグレイだし」
「それは赤井君もそうだよね?」
「そうだね」
と、ずぶ濡れの東堂さんに答える。
東堂さんは運動神経は良くは無いが、平泳ぎでゆっくり泳ぐのが好きらしくマコトプールには週に一回は来ている。甘いものが好きなようで、密かにダイエットをしているのもあるようだ。ミスって体重計に乗ってる時に声をかけたら、大人しい東堂さんからまさかの殺気を感じたから確実だ。
「とりあえず着替えのジャージがあるから、それ着てよ。マコトプールのジャージだけど普段から着てる会員の人もいるから、帰り道でもそこまで恥ずかしくないと思う」
「ありがとう。ごめんね赤井君。今度来る時洗って返すよ」
「別にいつでもいいよ。それより、びしょ濡れだから早く着替えに行こう。女性更衣室は掃除が終わってるだろうから人もいないはず」
そうして、俺は東堂さんを着替えさせる為に女性更衣室に案内する。東堂さんとは学校でもたまに話し、マコトプールでも話してはいるが、完全に二人っきりというのはあまり無い。俺に対する恋愛感情的なものは感じない女だけど、俺はあまり自分の事は話さないようにしつつ会話する。
「夏休みももう終わりだけど、東堂さんはどこか旅行とか行ったの?」
「家族と京都と箱根に行ったよ。色々見て、食べて、食べて、食べたけど……日傘では暑さそのものは防げないからしんどかったけど美味しかった!」
「そこ、楽しかったじゃなくていいんだ」
「私の場合はね。私は食べ歩きで色々と人や季節を感じてネタを得るの」
「ネタを得る?」
「人と会話するネタとかね」
「東堂さんは大人しそうだけど、結構色々な人と話しているよね。人と関わったり、繋がりを求めているのかな?」
「人との繋がりはいいわよ。だって心が繋がれば、全て繋がれるでしょ?」
俺にとっては厳しい言葉だ。
恋愛に嫌気がさしている俺は、自分をグレイとして人と深く接するのを辞めている。今の状態は楽でいいと思っているからからな。そして、東堂さんは俺と勇の出会いについて聞いて来た。
「赤井君は石田君と仲良くしてるけど、グレイの二人は高校で出会ったんだよね? やけに仲良くなるのが早かったんじゃない? 初めはお互いの事を知らないわけだし」
「あぁ、その事ね……」
青眼の瞳で聞いて来る東堂さんに答えた。
あれは、まだ中学卒業してから誠市に引っ越して来た頃の話だ。都内から神奈川県誠市へ中学卒業と同時に引っ越ししていたんだ。その時、これから行く高校の近くを歩いていた男が不良に絡まれてるのを助けた。
それはケンカの強いオネエだったんだ。
「大丈夫か? 加勢したつもりだったけど、加勢しなくても良かったな」
「いや、イケメンに助けられてサンキューだよ。たまに現れるんだよね。僕は女にモテるから嫉妬した男がね。僕は女なんて好きじゃないのに」
「お前、まさかテレビとかネットで噂のオネエってやつか?」
「僕の事はオネエじゃなくてグレイにしておいてね。グレイゾーンのグレイって事で!」
やけに明るいオネエ……いや、グレイと思いつつ俺もそのグレイに納得していた。
「確かに女は面倒だ……面倒過ぎる……」
俺は少し前の元カノとの出来事を思い出す。それを、目の前のグレイは神妙な顔で見ていた。
(もう、あんな思いはしたくない。なら、俺も……)
ふと、気の合いそうなグレイの男に興味を持って言っていた。このグレイを利用すれば元カノや女との関係も断ち切る事が出来るだろうと言う希望を込めて――。
「俺も今からグレイだ。俺もお前と同じ事にしておけ」
というエピソードだが、東堂さんには勇が転んだ所を助けたという事にしておいた。変な武勇伝は必要無いし、グレイの件を話すわけにもいかない。東堂さんとは、このまま穏やかな関係でいたいからな。
わざわざ勇が東堂さんをここに連れて来た意味がわからない俺は、その意味を自分なりに考えていた。
(勇のヤツめ……俺は東堂さんに恋愛感情は無いぞ? ただ、他の女と違い自然体でいられて楽なだけだ。ったく、勇は余計な事をする。本当はグレイじゃないから、普通に女を好きになれって事だろうが、今はそんな気分じゃないんだよ)
東堂さんに着替えてもらっている最中、俺はプールの最終確認をしようと歩き出す。すると、どこかで聞いた事のある声が俺の足を止めた。金髪で大きなイヤリングをした、少し派手な少女が誠高校の制服を着て立っている。
「久しぶりじゃん総司。相変わらず掃除好きなんだね。過去なんて水に流して、また楽しもうよ私と」
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