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3話・過去からのシシャ西村唯
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「お前……何でここにいる?」
目の前には中学生時代の元カノの、西村唯がいた。相変わらずの金髪で、大きなイヤリングなどの派手な感じは変わっていない。目の前にいるのにも驚いているが、何故かこの女が誠高校の制服を着ている事にも驚いている。青いチェックのスカートは短く、白の半袖シャツの青いリボンはされておらず胸元が開いていた。
「何で? 私はここに引っ越して来たからよ。昔のよしみで仲良くしてよね。あの子みたいに」
「あの子って誰だよ?」
「さっき、プールに一緒に落ちてた子だよ。更衣室ですれ違ったから。今度は、清楚系女子を狙ってるの?」
「……」
近くに来ると唯のメイクは中学時代より派手な感じになっている。制服を着ていると清楚な感じではあるが、髪やアクセサリーに金を使っている感じがしてどこぞのアイドルのような感じがした。
「本当に引っ越して来たのか? その制服は誠高校の制服だぞ? そのスカートの左下には誠という刺繍があるから本物だ……どこで手に入れた?」
「信用無いわね。どこでも何も、私は二学期から誠高校の生徒だよ? 誠市に一昨日引っ越して来て、この誠高校の制服を着て外を歩いてみようと思ってね。この制服着てれば総司を探すのにも苦労しないだろうから。まず総司ならプール関係にいると思い来てみたの。そしたら、夜だから閉館してたけど入口にいた背の高い茶髪のイケメン君がここにいると教えてくれたんだよ。愛想良くてスタッフに囲まれてたけど、友達なの?」
「あの男は同じ一年の石田勇。石田勇は友達だ。余計な事はするなよ?」
「余計な事って何よ? まさか彼を狙っていると思ったの? フフ……私は昔から総司一筋よ」
「悪いがその手には乗らないぞ。お前に怒るエネルギーは無駄だ。それよりここはもう閉館してるんだ。とっとと帰れ」
「気が向いたらね」
唯はプールサイドを歩き出す。
この人をおちょくったような態度は相変わらずだ。そして、聞いてもいない話をし出した。
「……ねぇ、総司の将来の夢は何? 私は会社の社長を目指す事にしたの。社長になって人を使うのが優れた私のいるべき場所。そこに貴方もいていいのよ?」
「俺達の関係は終わっている。お前の目的に俺は関わらない。俺はお前の人をゴミと思う所が好きじゃないんだよ」
「権力、才能、名誉。この三つがあれば人などゴミ同然よ」
特に顔も声のトーンも変わらず人が聞いたら不快に感じる事を平然と言い放った。おそらく、唯は将来どこかの会社の社長になるのは間違いないだろう。けど、俺はもうこの女に関わる気はしないんだ。この女の下で働くなんて真っ平ゴメンだからな。
「プールサイドを無闇に歩くな。落ちても知らんぞ」
「落ちたら助けるのがプールスタッフの仕事でしょ? 貴方はそれでもプールスタッフ……きゃ!?」
「!?」
調子に乗っている唯はプールの中に落ちそうになった――。
「――っと! 危ない、危ない」
「……」
「助けてくれないんだ。さっきの子とはプールにまで落ちたのに」
「俺を試してるのか? そもそも東堂さんは彼女でもないし、彼女になる予定も無い。俺はずっとフリーのグレイだ」
「実際に確認してみないとわからない事もあるよ。あの子は助けたのに、私は助けてくれない理由は何?」
「お前が好きだからだ」
その言葉を高笑いのまま金髪の女は答えた。
「アハハハッ! そうやって、逆の事を言って本当の事にしてるの? 本当なら殴りかかって来るような事ばかり今のやり取りであったよね? 中学の時よりやけに落ち着いちゃって……ホント、面倒な男になったねアンタも」
スタスタと歩きて来た唯は俺に抱きつき、頬を撫でてから囁くように言う。
「あの時の続き。しようよ……」
「――ふざけんなよ!」
その言葉を聞いて、苛立ちを解放するように昔を取り戻してしまった。
『……』
けど、振り上げた拳はすぐに下ろした。
俺はもう昔の俺じゃ無い。
今はグレイの赤井総司なんだから。
溜息をしつつも、唯は今の俺という人間を知れたようで満足していた。
「振り上げた拳を下ろせたけど、やっぱ喧嘩番長的な所は変わって無いね。キレるとメチャクチャ強い。それがわかって良かった」
「そうか。なら帰れよ。学校でもお前と繋がる事は無いからな」
「身体が繋がれば、心も繋がれるわよ」
言いつつ、唯は俺のヘソの周囲を指で円を描くようになぞった。性的快感を覚えてしまう俺は、唯とエッチをしようとベッドに入った時を思い出す。その光景を思い出し、不意に唯を突き飛ばした。不意に加減したのか、それとも混乱しているのか唯はプールには落ちていない。
「俺はお前の苦しみに利用されるのは無理だ。人に苦しさを吐き出したいだけのお前とは繋がらない」
「でも、私達の父親は同じ会社だよね。そこから繋がっているの。私がここに来た理由はわかった? そして、これから総司を落とす理由も?」
「知るか」
唯の父親が俺の父親と同じ会社なのは知っていた。最近、父の会社は都内よりも神奈川県の誠市のエリアでの営業活動拠点を重視していた。その為に唯も誠高校に転校する事になったようだ。
その唯はまたねと言わんばかりに手を振りながら歩き出す。
「欲しい物は手に入れる。手に入らなければ壊すだけ」
「お前……何を企んでいる? 誠高校で何をしたいんだ?」
「人生は退屈との戦いだから」
半身になって振り返る唯は言った。その黒い瞳は想像以上に欲深い真っ黒な目をしている。
「大人になる前に楽しましないと。子供の時にしか味わえない魔法の時間をね」
「……」
そうして、俺は過去からのシシャとの対面が終わった。夏休み明けから転校して来る、過去からのシシャとの二学期はすぐ先の話だ。イライラのあまり、腰にあった忘れ物の水鉄砲をプールに投げつけた。俺のイライラの波紋が、静かに広がっていった。
※
その日のバイト終わりの帰り道――。
突如現れた唯と、プールに落ちた東堂さんも帰り、俺は勇と帰り道を歩いていた。勇には東堂さんの件と唯の件は話した。勝手に二人も入れた事は謝られたが、過去に因縁がある唯との再会は運命の巡り合わせとしか思えなかった。それは、勇も同じ意見だった。
「総司。もう嘘は通用しないよ。過去が未来に牙を剥きに来たようだ」
「そんな牙とは縁切りしたいんだがな。耐えられん」
「忍の一字は衆妙の門だよ総司」
「耐え忍ぶ事を身に付ければ、どんな事でも身に付くか。まぁ、全て掃除してしまえばいい事だ」
そう、俺は全て掃除するだけだ。
邪魔するなら掃除する。
全力でな。
すると、勇は少し憂いを帯びた目で言う。
「半端者のグレイじゃダメだよ」
「あぁ……そうだな。明日のお寺の掃除も気乗りしないぜ。気乗りしない」
「え? だけどバイトよろしくね! 明日は営業デートがあるから!」
「……知らん。全ての人間を掃除してやりたい気分だからな」
お寺の掃除をしてくれないかも知れず、だいぶ困っている勇はそのままにしておく。
今日は本当に疲れた一日だった。
そして、それは嵐の前触れでしかないのもわかっている。
(……あの星も掃除してやりたいぜ)
空に浮かぶ星はやけに少なく、俺の希望はもう無いような錯覚さえ感じた。
学生の夏休みは変化の時。
まさか、この変化に過去が噛み付いてくるとは思いもよらなかった。
二学期になり、俺は過去と現在の自分と戦う事になったんだ。
目の前には中学生時代の元カノの、西村唯がいた。相変わらずの金髪で、大きなイヤリングなどの派手な感じは変わっていない。目の前にいるのにも驚いているが、何故かこの女が誠高校の制服を着ている事にも驚いている。青いチェックのスカートは短く、白の半袖シャツの青いリボンはされておらず胸元が開いていた。
「何で? 私はここに引っ越して来たからよ。昔のよしみで仲良くしてよね。あの子みたいに」
「あの子って誰だよ?」
「さっき、プールに一緒に落ちてた子だよ。更衣室ですれ違ったから。今度は、清楚系女子を狙ってるの?」
「……」
近くに来ると唯のメイクは中学時代より派手な感じになっている。制服を着ていると清楚な感じではあるが、髪やアクセサリーに金を使っている感じがしてどこぞのアイドルのような感じがした。
「本当に引っ越して来たのか? その制服は誠高校の制服だぞ? そのスカートの左下には誠という刺繍があるから本物だ……どこで手に入れた?」
「信用無いわね。どこでも何も、私は二学期から誠高校の生徒だよ? 誠市に一昨日引っ越して来て、この誠高校の制服を着て外を歩いてみようと思ってね。この制服着てれば総司を探すのにも苦労しないだろうから。まず総司ならプール関係にいると思い来てみたの。そしたら、夜だから閉館してたけど入口にいた背の高い茶髪のイケメン君がここにいると教えてくれたんだよ。愛想良くてスタッフに囲まれてたけど、友達なの?」
「あの男は同じ一年の石田勇。石田勇は友達だ。余計な事はするなよ?」
「余計な事って何よ? まさか彼を狙っていると思ったの? フフ……私は昔から総司一筋よ」
「悪いがその手には乗らないぞ。お前に怒るエネルギーは無駄だ。それよりここはもう閉館してるんだ。とっとと帰れ」
「気が向いたらね」
唯はプールサイドを歩き出す。
この人をおちょくったような態度は相変わらずだ。そして、聞いてもいない話をし出した。
「……ねぇ、総司の将来の夢は何? 私は会社の社長を目指す事にしたの。社長になって人を使うのが優れた私のいるべき場所。そこに貴方もいていいのよ?」
「俺達の関係は終わっている。お前の目的に俺は関わらない。俺はお前の人をゴミと思う所が好きじゃないんだよ」
「権力、才能、名誉。この三つがあれば人などゴミ同然よ」
特に顔も声のトーンも変わらず人が聞いたら不快に感じる事を平然と言い放った。おそらく、唯は将来どこかの会社の社長になるのは間違いないだろう。けど、俺はもうこの女に関わる気はしないんだ。この女の下で働くなんて真っ平ゴメンだからな。
「プールサイドを無闇に歩くな。落ちても知らんぞ」
「落ちたら助けるのがプールスタッフの仕事でしょ? 貴方はそれでもプールスタッフ……きゃ!?」
「!?」
調子に乗っている唯はプールの中に落ちそうになった――。
「――っと! 危ない、危ない」
「……」
「助けてくれないんだ。さっきの子とはプールにまで落ちたのに」
「俺を試してるのか? そもそも東堂さんは彼女でもないし、彼女になる予定も無い。俺はずっとフリーのグレイだ」
「実際に確認してみないとわからない事もあるよ。あの子は助けたのに、私は助けてくれない理由は何?」
「お前が好きだからだ」
その言葉を高笑いのまま金髪の女は答えた。
「アハハハッ! そうやって、逆の事を言って本当の事にしてるの? 本当なら殴りかかって来るような事ばかり今のやり取りであったよね? 中学の時よりやけに落ち着いちゃって……ホント、面倒な男になったねアンタも」
スタスタと歩きて来た唯は俺に抱きつき、頬を撫でてから囁くように言う。
「あの時の続き。しようよ……」
「――ふざけんなよ!」
その言葉を聞いて、苛立ちを解放するように昔を取り戻してしまった。
『……』
けど、振り上げた拳はすぐに下ろした。
俺はもう昔の俺じゃ無い。
今はグレイの赤井総司なんだから。
溜息をしつつも、唯は今の俺という人間を知れたようで満足していた。
「振り上げた拳を下ろせたけど、やっぱ喧嘩番長的な所は変わって無いね。キレるとメチャクチャ強い。それがわかって良かった」
「そうか。なら帰れよ。学校でもお前と繋がる事は無いからな」
「身体が繋がれば、心も繋がれるわよ」
言いつつ、唯は俺のヘソの周囲を指で円を描くようになぞった。性的快感を覚えてしまう俺は、唯とエッチをしようとベッドに入った時を思い出す。その光景を思い出し、不意に唯を突き飛ばした。不意に加減したのか、それとも混乱しているのか唯はプールには落ちていない。
「俺はお前の苦しみに利用されるのは無理だ。人に苦しさを吐き出したいだけのお前とは繋がらない」
「でも、私達の父親は同じ会社だよね。そこから繋がっているの。私がここに来た理由はわかった? そして、これから総司を落とす理由も?」
「知るか」
唯の父親が俺の父親と同じ会社なのは知っていた。最近、父の会社は都内よりも神奈川県の誠市のエリアでの営業活動拠点を重視していた。その為に唯も誠高校に転校する事になったようだ。
その唯はまたねと言わんばかりに手を振りながら歩き出す。
「欲しい物は手に入れる。手に入らなければ壊すだけ」
「お前……何を企んでいる? 誠高校で何をしたいんだ?」
「人生は退屈との戦いだから」
半身になって振り返る唯は言った。その黒い瞳は想像以上に欲深い真っ黒な目をしている。
「大人になる前に楽しましないと。子供の時にしか味わえない魔法の時間をね」
「……」
そうして、俺は過去からのシシャとの対面が終わった。夏休み明けから転校して来る、過去からのシシャとの二学期はすぐ先の話だ。イライラのあまり、腰にあった忘れ物の水鉄砲をプールに投げつけた。俺のイライラの波紋が、静かに広がっていった。
※
その日のバイト終わりの帰り道――。
突如現れた唯と、プールに落ちた東堂さんも帰り、俺は勇と帰り道を歩いていた。勇には東堂さんの件と唯の件は話した。勝手に二人も入れた事は謝られたが、過去に因縁がある唯との再会は運命の巡り合わせとしか思えなかった。それは、勇も同じ意見だった。
「総司。もう嘘は通用しないよ。過去が未来に牙を剥きに来たようだ」
「そんな牙とは縁切りしたいんだがな。耐えられん」
「忍の一字は衆妙の門だよ総司」
「耐え忍ぶ事を身に付ければ、どんな事でも身に付くか。まぁ、全て掃除してしまえばいい事だ」
そう、俺は全て掃除するだけだ。
邪魔するなら掃除する。
全力でな。
すると、勇は少し憂いを帯びた目で言う。
「半端者のグレイじゃダメだよ」
「あぁ……そうだな。明日のお寺の掃除も気乗りしないぜ。気乗りしない」
「え? だけどバイトよろしくね! 明日は営業デートがあるから!」
「……知らん。全ての人間を掃除してやりたい気分だからな」
お寺の掃除をしてくれないかも知れず、だいぶ困っている勇はそのままにしておく。
今日は本当に疲れた一日だった。
そして、それは嵐の前触れでしかないのもわかっている。
(……あの星も掃除してやりたいぜ)
空に浮かぶ星はやけに少なく、俺の希望はもう無いような錯覚さえ感じた。
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