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深紅のまなざしの記憶
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エリシアはそのまま、玉座の間の脇へと案内された。
謁見が終わるとともに、女官のひとりがそっと近づき、無言のまま丁寧に一礼すると、彼女を小さな部屋へと案内した。
扉が軋みを立てて閉じられると、静寂が支配した空間にふわりと重みが降りた。
エリシアは何も問わず、ただ足を踏み入れる。
天井は高く、窓は厚く、外の音がほとんど聞こえない。
外見は美しいが、まるで小さな聖堂のような静寂。
(これは……閉じ込められているのと、変わらないわ。美しいけど、まるで、何もかもを遠ざけるための牢獄みたい‥)
そう思いながらも、エリシアは声を出さなかった。
胸の奥に渦巻く不安や戸惑いを、言葉にしてしまえば崩れてしまいそうで、ただ唇を閉ざしていた。
侍女が部屋の支度を整えるあいだ、彼女はただ黙って、窓辺に立つ。
重く閉ざされた石の城壁。
外の景色は見えず、遠く鐘の音だけがかすかに響いていた。
胸の奥には、まだ玉座の間の熱が残っていた。
あの人の目……あの一瞬に、何を見て、何を感じていたのかしら?
私を見て、どうしてあんな、哀しげで、優しさを秘めたような眼差しをされた様な気がしたけど‥‥気のせいよね‥)
言葉を交わしたのは、ほんのわずか。
けれど、あの瞬間に感じた空気は、確かに何かを告げていた様に感じ取れた。
彼は、私をどう見ていたのだろう。
神託の道具か。政の駒か。それとも
(まさか、それ以外の何かがあるわけないわ……)
その思考を振り払うように、エリシアは目を閉じた。
その夜、眠りにつこうとした彼女のまぶたの裏には、
燃えるような深紅の瞳が、ずっと残っていた。
朝が訪れても、曇り空のせいか、城内はなお深い影に包まれていた。
エリシアは目を覚ました後もしばらく寝台に横たわり、天井を見つめていた。
胸の奥に残るものが、まだ消えていなかった。
(忘れられない……あの人の目は、確かに私の心に触れた)
燃えるようでいて、どこか哀しげだった。何かを語ろうとして、何も言えなかったような――
あの目を、彼女はもう一度見たいと思ってしまった。
言葉ではなかった。表情でもなかった。
けれど、あの一瞬のまなざしにだけは、偽りがなかった。
人の目は嘘をつけない――そう教えられてきた。
彼の瞳には、聖姫でも未来視でもない、“ただの自分”が映っていた気がした。
それがどれほど危うく、そして尊いことか……胸の奥が、静かに震えていた。
「聖姫様、朝の支度をいたします」
女官の声に、現実へ引き戻される。
「ありがとう。……お願いするわ」
言葉を発しながら、あの短い謁見の一瞬が、どうしてこれほどまでに心に残っているのかを自分でも測りかねていた。
謁見が終わるとともに、女官のひとりがそっと近づき、無言のまま丁寧に一礼すると、彼女を小さな部屋へと案内した。
扉が軋みを立てて閉じられると、静寂が支配した空間にふわりと重みが降りた。
エリシアは何も問わず、ただ足を踏み入れる。
天井は高く、窓は厚く、外の音がほとんど聞こえない。
外見は美しいが、まるで小さな聖堂のような静寂。
(これは……閉じ込められているのと、変わらないわ。美しいけど、まるで、何もかもを遠ざけるための牢獄みたい‥)
そう思いながらも、エリシアは声を出さなかった。
胸の奥に渦巻く不安や戸惑いを、言葉にしてしまえば崩れてしまいそうで、ただ唇を閉ざしていた。
侍女が部屋の支度を整えるあいだ、彼女はただ黙って、窓辺に立つ。
重く閉ざされた石の城壁。
外の景色は見えず、遠く鐘の音だけがかすかに響いていた。
胸の奥には、まだ玉座の間の熱が残っていた。
あの人の目……あの一瞬に、何を見て、何を感じていたのかしら?
私を見て、どうしてあんな、哀しげで、優しさを秘めたような眼差しをされた様な気がしたけど‥‥気のせいよね‥)
言葉を交わしたのは、ほんのわずか。
けれど、あの瞬間に感じた空気は、確かに何かを告げていた様に感じ取れた。
彼は、私をどう見ていたのだろう。
神託の道具か。政の駒か。それとも
(まさか、それ以外の何かがあるわけないわ……)
その思考を振り払うように、エリシアは目を閉じた。
その夜、眠りにつこうとした彼女のまぶたの裏には、
燃えるような深紅の瞳が、ずっと残っていた。
朝が訪れても、曇り空のせいか、城内はなお深い影に包まれていた。
エリシアは目を覚ました後もしばらく寝台に横たわり、天井を見つめていた。
胸の奥に残るものが、まだ消えていなかった。
(忘れられない……あの人の目は、確かに私の心に触れた)
燃えるようでいて、どこか哀しげだった。何かを語ろうとして、何も言えなかったような――
あの目を、彼女はもう一度見たいと思ってしまった。
言葉ではなかった。表情でもなかった。
けれど、あの一瞬のまなざしにだけは、偽りがなかった。
人の目は嘘をつけない――そう教えられてきた。
彼の瞳には、聖姫でも未来視でもない、“ただの自分”が映っていた気がした。
それがどれほど危うく、そして尊いことか……胸の奥が、静かに震えていた。
「聖姫様、朝の支度をいたします」
女官の声に、現実へ引き戻される。
「ありがとう。……お願いするわ」
言葉を発しながら、あの短い謁見の一瞬が、どうしてこれほどまでに心に残っているのかを自分でも測りかねていた。
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