この愛がたとえ罪でも、あなたに出逢えてよかった。あなたをずっと愛しています。

吉乃

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門出の空、ふたりの鼓動

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外にはまだ夜の名残が残っていたが、地平の彼方には、うっすらと黎明の兆しが見え始めていた。

門の前で、老巫女が最後に声をかけた。

「この門の先は、神の加護なき地。今後あなた方が歩む道には、もはや神託の導きはありません」

ノルディスは振り返らず、ただ一言を残した。

「導きは、もう隣にある」

そしてふたりは、手を取り合って歩き出した。
誰のためでもない、自分たちのための未来へ向かって。

新しい夜明けが、ふたりの背をやさしく押していた。

そして──ふたりの鼓動が、静かに重なってゆく。
それはまだ不確かな未来だったが、かつて孤独に閉ざされていた心にとって、確かな光でもあった。

エリシアはふと足を止め、夜明けの空に手をかざした。
月はもう見えなかったが、どこかで見守っている気がした。

「これが、わたしたちの選んだ答え……なのですね」

ノルディスが小さく頷く。

「ああ。すべてを背負って、歩いていこう」

その言葉は、約束だった。
もう祈りだけに生きることなく、誰かに捧げられるのではない“ふたりの人生”を、ここから始めていく。

空は淡い光に染まり始めていた。


*

城下の道を抜け、朝靄のなかを進むふたりの姿は、未来の輪郭がまだぼやけたままの旅路を歩む者のようだった。本隊の騎士団は別道を進んでおり、ふたりは先に静かな帰還の途を選んでいた。
だが、その足取りにはためらいがなかった。

馬の背にエリシアを乗せ、ノルディスはその手綱を静かに引いていた。エリシアは、背中越しに彼のぬくもりを感じ、その静かな温かさに胸がそっと高鳴るのを覚えていた。
ノルディスもまた、腕の中に収まる彼女の存在に意識を向けていた。
彼女の髪からふわりと漂う柔らかな香りが、彼の胸に静かな安心感を灯し、同時に深い愛おしさがじんわりとこみ上げてきた。

「もうすぐ、見晴らしの良い丘に出る。そこで少し休もう」

エリシアは頷き、うっすらと笑みを見せた。

「……この風、とても懐かしい。まだ子どもの頃、神殿に入る前に母と来た丘と似ています」

「それは、いい記憶か?」

エリシアは少し考えた後、ぽつりと答える。

「ええ、とても。あの頃の私は……空の広さを、ただ喜んでいたんです」

ノルディスの横顔に、穏やかな光が差す。

「なら、もう一度喜んでいい。これからの空は、あなたのものだ」

やがてふたりは、小高い丘の上にたどり着く。

そこには朝の陽が広がり、霧が晴れゆく世界を見下ろすように、風が吹き渡っていた。

エリシアは馬を降り、風に髪をなびかせながら、しばし景色に見入った。
その横顔には、静かな強さが宿っていた。それは、この先に待ち受けるであろう困難をも、愛する人と共に越えてゆこうとする、揺るぎない意志の光だった。

「……この景色、夢のよう。でも、今こうして感じているすべてが……“現実”なんですね」

「夢を現実にするために、俺たちはここにいる」
ノルディスは隣に立ち、彼女の手を取る。

「もう一度、聞かせてほしい。あなたは……俺と共に、生きてくれるか?」

エリシアは頷いた。

「はい。たとえこの先にどんな運命が待っていても……あなただから、共に手を取り生きていきたいと思えたんです」

風が、ふたりの誓いを祝福するように吹き抜けた。

その風は、ふたりの背を未来へ押し出す“追風”だった。

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