女の子同士で気持ちよくなっちゃった私達…

SenY

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本編

第十一章:シーツの迷宮、恐怖と熱の境界線

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 雨が窓を叩く音が、部屋の静寂をよりいっそう深いものにしていた。
 六畳間のフローリングに敷かれたラグの上。明かりを消した暗がりの中で、テレビの液晶画面だけが青白く、不気味に揺れている。
 部屋の中には、食べかけのポテトチップスの袋と、ぬるくなったコーラのペットボトル。そして、私――サキと、親友のユウナを包み込む、大きな一枚の羽毛シーツ。

「……ねえ、次、絶対くるよ。絶対なんか出るって……っ」
「言わないでよ! もう、マジで怖いんだから……っ!」

 私たちは、まるで一つの生き物みたいにシーツの中で身体を密着させていた。
 画面に映っているのは、ネットのレビューで「トラウマ級」と話題になっていたサイコホラー映画だ。血飛沫が飛び、狂った殺人鬼が執拗に犠牲者を追い詰める、救いようのないバイオレンス描写の連続。
 私はホラーが大の苦手だ。でも、ユウナがどうしても見たいと言うから、断りきれずに付き合っている。

 ユウナの腕が、私の細い腰にぎゅっと回される。
 パジャマ越しに伝わる彼女の体温。
 ドクン、ドクン、ドクン……。
 私の心臓なのか、彼女の心臓なのか分からない、激しい鼓動がシーツの中で共鳴していた。

 ***

 少し前までの私なら、こんな状況で「女同士の体温」を意識するなんて、ありえないことだと思っていた。
 私は、いわゆる「普通の女子」だ。男の子が好きで、恋バナに花を咲かせ、同性愛なんて自分とは無縁の、どこか遠い世界の出来事だと思っていた。

 一年前、高校生の姉が同じクラスの女の子に告白された時、私はひどいリアクションをとってしまった。
『うげー、マジで? 女同士で告白とか、きもーい』
 あの時の姉の、悲しそうというか、呆れたような顔を今でも覚えている。
『……サキ。私はレズビアンじゃないから断ったけど、私の友達を悪く言うのはやめなさい。その子は、勇気を出して伝えてくれたんだから』
 ガチなトーンで説教されて、私はそれ以上何も言えなくなったけれど、心の隅では「やっぱり理解できない」という偏見がこびりついていた。

 それは親友のユウナも同じだった。
『アンタのことは大好きだけどさー、もしアンタがレズで、私のことそういう目で見てたら、マジで絶交だからね。超キモいし』
『こっちのセリフだよ、ばーか。女なんて、恋愛対象になるわけないじゃん』
 そんなふうに、私たちは「普通」であることを確認し合うように、冗談めかして牽制し合っていた。
 それが、親友として長く付き合っていくための、暗黙のルールだったはずなのに。

 ***

 映画は、最悪の恐怖シーンを迎えていた。
 逃げ場のない密室で、ヒロインが追い詰められる。凄惨な悲鳴。画面が真っ赤に染まる。
 私たちは「きゃああっ!」と声を上げ、たまらずシーツの中に顔を伏せた。

「……終わった? ねえ、もう終わった……?」
「わかんない、見てよユウナ……っ」

 恐る恐る、シーツの隙間から画面を盗み見る。
 すると、さっきまでの血生臭い雰囲気は一変していた。
 画面には、薄暗い寝室で重なり合う二人の美女。
 サイコホラーだと思っていたこの映画には、実は「官能的(エロス)」な要素も多分に含まれていたらしい。

 静かな部屋に、濡れたような吐息と、衣擦れの音が響く。
 画面の中の女優さんが、もう一人の女性の首筋に顔を寄せ、うっとりとした表情で喘いでいる。
 彼女たちの滑らかな肌が、汗で光り、複雑に絡み合う。
 チュプ、ンチュ……♥
 スピーカーから流れる生々しい水音が、私の鼓膜をダイレクトに震わせた。

(……え? なに、これ……)

 さっきまでの恐怖で、私の自律神経はズタボロだった。
 心拍数は上がり、呼吸は浅くなり、アドレナリンが大量に放出されている状態。
 そんな「極限状態」の中で、目の前に突きつけられた濃厚なレズビアン・ラブシーン。

 脳が混乱している。
 恐怖と、興奮。
 その二つが、脳内でぐちゃぐちゃにかき混ぜられて、境目が分からなくなっていく。
 怖い。でも、目が離せない。
 画面の中の女性が、恍惚とした表情で腰を跳ねさせるのを見て、私のお腹の奥が……ツン♥ と熱くなった。

「…………っ」

 ありえない。
 女同士のエロい姿を見て興奮するなんて、私はそんな「キモい」人間じゃないはずだ。
 そう自分に言い聞かせれば言い聞かせるほど、身体の反応は残酷だった。
 シーツに包まれた足の間が、じわじわと湿っていく。
 ユウナと密着している部分が、火傷しそうなほど熱い。

 私は、自分の右手が勝手に動くのを止められなかった。
 パジャマのズボンのウエストゴムに指をかけ、こっそりと中に忍び込ませる。
 誰にもバレないように。シーツの暗闇に紛れて。
 でも、自分の秘部に指が触れた瞬間、私は小さく息を呑んでしまった。

「んっ……♥」

 ビチョビチョだった。
 自分でも驚くくらい、蜜があふれている。
 自分の指先が、そこを少しなぞるだけで、脳天を突き抜けるような快感が走った。
 ビクッ♥ ビクビクッ♥

「……サキ?」

 隣で同じシーツにくるまっていたユウナの声。
 私は心臓が止まるかと思った。

「あ、えっ、なに……?」
「アンタ……まさか、エロいこと考えてる?」

 ユウナの顔が、至近距離にある。
 暗がりの中でも、彼女の瞳が濡れているのが分かった。

「ち、ちが……これは、映画が……っ」
「嘘。アンタの肩、すごい震えてる。……アンタ、今、パジャマの中に手、入れてたでしょ」

 指摘された瞬間、全身の血が引いていくのを感じた。
 バレた。
 終わった。絶交だ。キモいって言われて、明日から学校にも行けなくなる。

「……ごめん。私、おかしいんだよ、たぶん。映画のせいで、なんか変に、なっちゃって……っ」

 涙声で謝る私を見て、ユウナは軽蔑の言葉を吐かなかった。
 それどころか、彼女は私の手をシーツ越しにぎゅっと握りしめてきたのだ。

「……責めてないよ。……だって、私もなんだもん。ヤバい……完全に、濡れちゃってる……」
「えっ……?」

 ユウナの告白に、私は耳を疑った。
 彼女も? あんなに「女同士なんてキモい」って言ってた彼女も?

「さっきの怖いシーンで、サキと密着してて……そしたら急にエロいシーンになったから。なんか、頭がバカになっちゃったみたい。サキの匂いとか、体温とかが、全部……なんか、エロく感じちゃって……っ」

 ユウナの声も、熱っぽく震えていた。
 私たちは、お互いに「普通」という仮面を被り続けてきたけれど。
 恐怖とエロスのカクテルによって、その仮面は無惨に剥がれ落ちてしまったらしい。

「……私たち、女の子同士なのに……こんなの、おかしいよね」
「……うん。おかしいよ。絶交レベルだよね、これ……」

 そう言いながらも、私たちの身体は、さらに深く密着していった。
 ユウナの脚が、私の脚の間に割り込んでくる。
 パジャマの布越しに、彼女の「そこ」の熱さがダイレクトに伝わってきた。

「サキ。……ちょっとだけ、確かめてもいい?」
「なにを……?」
「女の子の手って、本当に気持ちいいのか。……男より、いいのか」

 ユウナの手が、私のパジャマの裾から忍び込んできた。
 さっき自分の指で触ったのとは違う、他人の指の感触。
 でも、その指は驚くほど優しくて、冷たいはずなのに触れられた場所が火を噴くように熱くなる。

「ひゃうんっ!?♥ ユウナ、そこっ……!」
「あ……サキ、ここ、すごい熱い。……ヌルヌルだよ?」

 ユウナの指が、私の花弁を割り開く。
 ヌチュ……♥
 卑猥な音がシーツの中に閉じ込められる。
 恥ずかしい。死にたい。でも、気持ちいい。
 今まで男の子と付き合って、触られた時よりも、何百倍も身体が反応しているのが自分でも分かる。

「あっ、あぁっ……ユウナっ、やだっ、そんな優しくしないでぇっ……♥」
「サキ、すっごい可愛い声……。私のことも、触って……?」

 私は誘われるまま、ユウナのパジャマの中に手を伸ばした。
 彼女のそこも、既に大洪水だった。
 お互いに、必死に言い訳していたけれど、身体はとっくに「女の子同士の快楽」を求めていたのだ。

 チュプ、チュプチュプ……♥
 二人の指が、お互いの蜜壺を掻き回す。
 ホラー映画のBGMが不気味に流れる中、私たちはシーツの檻の中で、だらしない喘ぎ声を漏らし続けた。

「んぅぅぅっ!♥ ユウナっ、ユウナの指、そこっ、深いっ……!♥」
「サキもっ、すごい上手いっ……! ああっ、男の人にされるより、全然いいっ……♥」

 お互いの粘膜を愛でる感触。
 同じ身体の構造をしているからこそ分かる、最適解の指使い。
 私たちは夢中で、お互いの快感を探り合った。

 パジャマのシャツがはだけ、胸と胸が直接重なり合う。
 ムニュッ♥
 柔らかい脂肪同士が押しつぶされる感触に、さらに興奮が加速する。

「ああっ、くるっ、サキ、私イッちゃうっ! イッちゃうよぉぉッ!!♥」
「私もっ! サキと一緒にイきたいっ! ああっ、あぁぁぁぁぁぁぁッ!!♥」

 私たちは互いの名前を叫びながら、絶頂の波に飲み込まれた。
 ビクンッ!! ビクビクビクッ!!♥
 シーツの中で重なり合ったまま、激しい痙攣が止まらない。
 視界が明滅し、脳の奥底が溶けていく。
 オーガズムの波が去った後、残されたのは、汗と愛液の匂い。
 そして、どうしようもないほどの「親密さ」だった。

 ***

 映画のエンディングロールが流れている。
 私たちは、ぐったりとしたままシーツの中で抱き合っていた。

「……ねえ。絶交、する?」

 私が弱々しく聞くと、ユウナは私の胸元に顔を埋めたまま、小さく首を振った。

「……無理。こんなに気持ちよくされちゃって、今さら絶交なんてできないよ」
「だよね……。私も、ユウナなしじゃ、もう満足できないかも……♥」

 女の子同士なのに。
 キモいって思ってたはずなのに。
 
 私たちは、暗闇の中でそっと唇を重ねた。
 レモンサワーの味と、ほんの少しの鉄の匂いがする、初めての「女の子同士」のキス。
 それは、どんな映画のシーンよりも、私たちの現実を甘く、残酷に変えてしまった。

「……明日から、どうする?」
「とりあえず、もう一回しよう? 今度は、もっと明るいところで、サキの顔をちゃんと見ながら……♥」

 ユウナの意地悪な提案に、私は頬を赤らめながら、こくりと頷いた。
 シーツの迷宮は、まだ私たちを逃がしてくれそうになかった。

(第十一章 完)
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