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第十話『潅水』
しおりを挟む彼女の部屋が整頓されている印象なのは、物が少なかったからかもしれない。
大型のテレビモニターが壁際に置いてあり、適度に物がのせられる四角い卓袱台とベッドの間には、抱きまくらみたいな、大きくて長いクッションがあり、それに丁度寄りかかれる位置の床に、フワフワの座布団がいくつか置いてあった。
ベッドの上の布団セットは薄いピンクだが、あとは全部クリーム色だ。
カーペットも座布団もクッションも、卓袱台もテレビも、いやテレビは黒いか。最近のテレビは外枠がないので、壁紙からなにから全部が白っぽいと、テレビまで同じだと錯覚してしまう。
俺と彼女はベッドに立てかけられた大きく長いクッションに並んで寄りかかり、分厚い座布団に尻を埋めた。
ケーブルテレビでやってる映画を観ながら、酒と菓子を口に運ぶ。
飲食物は近所のコンビニに寄って買ってきたので、たっぷりあった。
絶対こんなに飲めないし、こんなに食べられない。
二人ともテンションがあがってしまい、買いすぎてしまったのだ。
なんというタイトルの映画かは忘れたが、中途半端なところから観たってのに、まあまあ面白い。
特に会話もなく、夢中になって観ていると、俺の肩になにかがふわりとのった。
見ると、彼女の丸い頭の、艶々の黒髪の生え際がすぐ目の前にあった。
髪の上品な甘い匂いの奥に、人間の体温の匂いが混じる。
なんか、同棲してるみたいだなと嬉しくなり、寝てしまった彼女には触れずに、俺はまた映画に意識を集中させた。
「ねぇ」
肩から声がして跳び上がりそうになる。
「起きてたんだ?」
あきらかにビクンとしたのをごまかすように訊く。
「うん」とだけ答え、黙る彼女。
会話が止まったことよりも問題は、まだ彼女の頭が俺の肩にのったままだということだ。
なにも言わない。髪の毛の匂いと重さだけがずっと肩の上にある。
また寝ちゃったのかな?
なんだよ、半分寝言みたいなもんじゃ──「キスしてもいい?」
耳を疑い、肩にのった彼女の脳天に顔を向ける。
俺の鼻先で苦味と甘味をブレンドしたフェロモンを漂わせていた彼女の脳天が、ふわりと上を向く。
半開きのぽってりとした唇が、俺の肩の陰から日の出のようにのぼってきた。
とろんとした、のぼせたような目つき。
近いなと思った途端に、額と額がこつんと当たる。
前髪どうしが、サラサラと交じる。
鼻と鼻がちらちらと擦れる。
唇からハアハアと小刻みな息が漏れ、彼女の口中の湿り気が俺の鼻腔に生々しい匂いを運ぶ。
人の口の匂いだ。
人の頬の匂いだ。
俺の唇のシワを、彼女の唇のシワが舐めるように擦る。
ぞくりとした。
「んんっ」
勢いをつけるような嬌声とともに、彼女が俺の唇に吸い付いてくる。
ざらりとしてぬめりけのある舌が、歯を押しのけて侵入してくる。
絡み合い、唾液が交換され、混ざって共有の体液になる。
彼女の舌は、独立した生き物のようにウネウネと動いた。
俺の膝にのせられていたはずの彼女の掌が、いつの間にか太ももを撫でるようにして、股間へと進んでいく。
指先が男の膨らみに触れると、背中の産毛が一斉に逆立った。
撫でられ、揉まれ、さすられて、痛いほどに勃起してしまう。
興奮しているのか、彼女の湿った股間が、俺の膝頭にグリグリと押し付けられている。
唇と舌が上下左右に動き、互いの口の周りまでを味わい始める。
頬が唾液で濡れ、鼻や耳へと濡れる範囲が広がる。
彼女は唇をちゅぱちゅぱと鳴らしながら、頭を少しずつ首から胸、胸から腹へと下降させていった。
ずっとさすり、揉んでいた俺の痛苦しいあそこを、ジッパーを下げて開放する。
唇が、ぬろぬろと俺のを包み込み、ちゅぽんと音を立てては舌で先端を味わい、滲み出る体液を吸い取るようにした後、また根もとまで舌と唇を密着させて包む。
さっき口中で蠢いていたあの柔い舌が、同じ動きで悪戯を続ける。
生暖かい頬の内側と舌が、波のようにうねって俺の濡れたものをねぶる。
彼女の黒髪がひねるような動きで上下するたび、俺は快感で声をあげた。
彼女のシャツを捲りあげて、スベスベの背中をさすり、ホックを外して胸を護るものを剥ぎ取ると、両腕を背中から回して抱き締め、着痩せに隠されていた揺れる釣り鐘に指を食い込ませて、ゆっくりと揉み潰した。
──つづく。
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