【R18】最強君とギャルJKの異世界建国記

霧水振猶

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4.転移

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「分かりました、私がおかしいで良いですから話を聞いて下さい」

 僕とレイナの前に現れた光の玉から発せられている女性の声は、どこか投げやりな雰囲気を漂わせながらそう言った。

「ユウト」

 そんな女性(?)を前にして、レイナにこそっと名前を呼ばれた。
 一瞬耳先での吐息に身体がビクっと硬直しかかったが、レイナの今までとは違う真剣な声で踏み留まる。

「それでアンタの話ってのは何だよ?」

 大体レイナの伝えたいことを察した僕は、彼女が会話をしている間にちょっとだけ靴のかかとの部分を浮かせて足を出す。
 
「やっと話を聞く気になってくれましたか。私は女神フィ、ちょ!」

 『女神』の辺りでちょっと得意気に自己紹介を始めようとした光の玉に向かって、サッカーのシュートを放つ要領で靴を飛ばす。
 多分僕からアクションを起こさなくてもレイナが気を引いてくれたんだろうけど、逃げるなら男の僕よりも女のレイナから逃げてほしい。

「レイナ!」

 そんな僕の気持ちを察してか、僕がレイナの名前を呼んだ時には既に彼女は入口のドアに向かって駆け出していた。
 僕の方には目もくれずドアから出ようとしたレイナは、およそ女性らしからぬ声を上げながら、見えない何かに遮られるように跳ね返って尻もちを着いた。

「あでっ!」

「レイナ!?」

 レイナの見るからに不自然な動きに声を上げた僕の背後から、先ほどとは打って変わって面倒そうな自称女神が話し掛けてくる。

「あーあー。もうこれ以上手間掛けさせないでくださいよー」

 溜息を吐いている自称女神を尻目に、立ち上がったレイナはドア付近の何もない空間をパントマイムの如くペタペタと触った後、そこをノックする様に手を動かすと何故かコンコンと音が鳴った。

「なんかあるわ、コレ」

「私の話が終わるまで貴方達はここから出られませんよ」

「女神が拉致監禁って神様から怒られたりしねぇの?」

 完全に逃走を諦めたらしいレイナは、光の玉が女神であることを認めたらしい。
 一応僕もドアから出ようとしてみたのだが、見えない何かに阻まれたので大人しく話を聞くことにする。

「話進めますよ、私は女神フィリア。地球の未来のために貴方達の前に現れました」

 いきなり仰々しい話方になった女神は、レイナの質問を完全に無視するらしい。

「貴方達がここで性行為に及ぼうとした時点で、地球の未来に悪影響を与えることが確定しました。よって、その未来を回避するために貴方達を別の世界に送らせていただきます」

「アホ?」

 レイナの突っ込みに全力で同意するしかないのだけど、女神の発言の中に特に気になる一文があった。
 『ここで性行為に及ぼうとした』ってことは、この女神が来なければ僕は童貞卒業できてたわけですよね?
 レイナが僕のチンコ気持ち良くしようとしてくれてたって、女神が認めましたよね?
 僕の童貞卒業を止めた女神に対して、ドス黒い感情が湧いてくる。

「ひっ。あ、あのユートさん?その願いもうすぐ叶いますから、どうぞ穏便に」

「本当?」

「は、はい」

 上下動を繰り返している光の玉は、女神が必死に頭を下げているようにも見えなくはない。
 
「分かった」

 女神に考えを読まれたことは置いといて、大事なのはレイナとの性行為にお墨付きを貰ったことだ。
 これで僕の童貞卒業は確定した!はず。

「ねぇ何の話?」

「何でもないよ」
 
 僕と女神の話の内容が分からないレイナを制しながら、頭の中はピンク色で一杯だった。
 あのレイナの身体を好き勝手にできるらしい。今すぐ後ろから抱き着いて、オッパイ揉みながら柔らかそうなお尻にガチガチのチンコ押し付けても大丈夫かな。

「あの、ユートさん?」

 本気で実行してしまいそうだったのだが、女神の言葉で我に返った。

「大丈夫です、続きどうぞ」

「では……というわけでお二人には別の世界に行っていただきます」

「説明になってねぇよ」

 レイナが完全にただのツッコミ役と化してしまっている。

「説明要りますか?」

「一から百まで」

「貴方達が性行為をした時点で、世界大戦が発生することが確定しました。よってこれを回避するためには貴方達を別の世界に送るしかありません。以上です」

「以上じゃねぇっつってんだろ!馬鹿か!」

「あーもうわかりましたよ。長くなりますからね」

 僕としては長くなるのは御免被りたかったけど、多分レイナの気が済まないだろうから大人しく話を聞いておいた。


◇◇◇


「要するに、アタシとユウトが意気投合した結果、将来的に有名になるアタシのボディガードのユウトにも注目が集まって、人間離れし過ぎたユウトの能力に目を付けた世界中の国がユウトを巡って戦争するってこと?」

「そんな感じです」

 簡潔に纏めてくれたレイナとそれを肯定する女神。

「アホくさ」

 レイナはまともに取り合うつもりはないらしいが、常々自分を抑えて生きてきた身としては、絶対に無いとも言い切れない。
 多分、僕はそれぐらいヤバイ。

「ユートさん、さっきの喧嘩どのぐらいの力でやりました?」

「さっきの?んー……十パーセントぐらいかな」

 今日はレイナのお陰で普段よりは力が入ってたと思う。

「マジで?」

「うん」

「それ、証明できる?」

 信じていないらしいレイナを納得させるために思い浮かんだ方法は、待たされ続けて溜まったリビドーが溢れだした邪な方法だった。

「何しても良い?」

「アタシが痛くなけりゃ良いけど」

「言質取ったからね」

「え?うわ!」

 大声を上げたレイナは、その場で自分の身体を抱き抱えながら蹲った。
 
 犯人は僕。
 レイナの背中にあるブラのホックを一瞬で外して、元の位置に戻ってきただけ。
 まさかこんな所で、ブラのホックの外し方を予習しておいたのが生きるとは思わなかった。

「どう?」

「……信じる」

 何故か自慢げな僕に対して、レイナの瞳は冷ややかだった。



「それで、私の話は信じていただけましたか?」

 レイナがブラを止め直すのを待って、女神が問いかけた。

「まぁユウトが完全に人間辞めてるのは良く分かった。でもそれで戦争なんて起きる?」

「貴方と意気投合してなければ起きませんよ。レイナさんが居なかったらユートさんは秘密裏に拉致されて実験動物になって終わりですから」

「それは嫌だなぁ」

 その未来だけは切実に回避したい。いや、もう回避成功してるのか。

「アタシが居るとなんでユウトは助かるの?」

「まずユートさんがハニートラップに引っ掛からなくなります。そうなるとレイナさんがユートさんを引き渡すしかなくなるのですが、レイナさんは絶対に拒否しますので秘密裏に事を進めることはその時点で不可能になります。結果、国同士の話に発展して……っていう形ですね」

 ハニートラップに引っ掛かる僕は多分童貞なんだろうなって、知らない自分にちょっと同情してしまう。

「人権団体とか仕事しろよ」

「科学の発展には犠牲はってやつです」

 話を聞いて大きく溜息を吐いたレイナは、今までと違いちょっとだけ納得した表情に見えた。

「まだ全然信じられねぇけど、アタシが気に入った相手を手放さないっていうのは合ってるんだよねその話」

 チラっと流し目でこっちを見てくるレイナは、綺麗を通り越して男の僕がドキッとするぐらいの美しさをしている。
 そんなレイナに見惚れていたのを悟られないように僕も質問してみることにした。
 
「僕の力をここで取り除いて一般人にするとかはどうですか?」

「無理ですね。人間の身体に直接干渉するのは掟に反します」

「そうですか……」

 一番簡単な解決策を提示したつもりが、考える間もなく一蹴されてしまった。

「それなら僕だけ別の世界に行かせてもらえれば」

「それはナシ」

 女神に対して投げかけた僕の提案は、何故か別の人によって即座に否定された。

「え?」

 思わず首を傾げながらレイナを見ると、彼女はちょっとだけ照れくさそうに僕から顔を背けた。

「アタシがユウトを気に入ったから、それはナシ。お前が行くならアタシも一緒に行く」

 心臓が一際高く跳ね上がり、鼓動がハッキリと耳まで届く。
 こんなに胸が高鳴るのはいつ以来だろう。

「いやぁ、青春ですね~」

 声だけでニマニマしている表情が伝わってくる女神の言葉に対して、珍しくレイナがツッコミを返さない。

「まぁでもレイナさんにも楽しんでいただけると思いますよ。あっちの世界なら国王になるのも夢じゃないと思いますから」

「ちょっとそれ詳しく」

 光の玉が一頻りフワフワと僕達の周りを煽るように飛び回った後、女神が発した言葉にそっぽを向いていたレイナが全力で反応した。



「一言で言えば、異世界転移ってやつな」

 女神の話を聞いた僕とレイナの感想は完全に一致していた。

「レイナってそういうの詳しいの?」

「オタク系にって話?流行りモノには一通り目を通すタイプだから。詳しいってほど知らないけどね」

「レイナってなんかその、意識高い人だったりする?」

 僕の質問に対して、レイナはちょっとだけ曇った表情を見せた。

「それちょくちょく言われんだけど、アタシおかしいか?」

「いや、おかしいってことはないと思うけど……」

 語尾に(笑)とかよく付けられるけど、アレはそういう自分に酔ってたり実力が伴ってない人間に使われるやつだし。
 少なくとも僕から見たレイナは、仕事できるキャリアウーマンっぽい。制服着てるけど。

「そ、そう」

 レイナが一転晴れやかな表情を見せた所で、またも女神からの茶々が入る。

「また青春ですか?」

「そういうやつじゃないから」

 「本当ですか~?」って感じで顔の周りをゆっくりと飛び回っている球体に向かって試しにパンチしてみたけど、何の手応えも無い。

「ゴホン。それではお二人とも異世界に行っていただけるということでよろしいですか?」

 わざとらしく咳払いした女神は、僕達二人に問いかけた。

「実験動物になるぐらいなら僕はそれでいいかな」

「異世界も面白そうだし、ユウトが行くならアタシもいいよ」

 異世界に行く選択をした僕達に対して、女神は少し安堵したようだった。

「ありがとうございます。それではお二人に女神の加護をプレゼントさせていただきます」

「「加護?」」

「所謂チートとかそういうやつです。叶えられる範囲になりますが、一応希望はお聞きしますよ」

 いきなりチートが貰えると言われてもパッと思い浮かばない。
 そんな僕とは反対に、レイナは直ぐに女神に聞き返した。

「それ、地球で叶えて貰うってのはアリ?」

「地球でっていうのはどういうことですか?」

「アタシの家族とかダチの記憶、その他諸々アタシが生きてた証拠ぜーんぶ消してくれないかなーって」 

 レイナのおどけたような声音とは裏腹に、顔は何処となく寂しそうに見える。
 そんなレイナを察したのか、女神もちょっと困ったように聞き返した。

「本当に良いんですか?」

「悲しませたくねーし。両親のことは姉貴に任せて大丈夫っしょ」

 多分、強がりなのを指摘してもレイナは認めないし、考えを変えることもないだろう。そう思った僕は、全然関係無いことを口にした。

「お姉さん居るんだ」

「年の離れた姉貴でさ、超美人で優秀でカッコいいのよ。今度起業するって」

「レイナのお姉さんっぽい」

「自慢の姉貴なんで」

 姉のことを口にするレイナは本当に自慢気で、さっきまでの空気はちょっとだけ薄れていた。

「それでは、レイナさんへは女神の加護の代わりに地球での痕跡を消す。ということにさせていただきます。ユウトさんはどうしますか?」

 レイナの願いを聞いた僕も、既に願いは決まっていた。

「僕は必要ないので、僕の分をレイナに譲れますか?」

「それは……」

「僕が居なくなっても悲しむ人は多分居ないし、別に異世界で俺ツエ―がしたいわけじゃないので。それとも僕って異世界だと凄く弱かったりしますか?」

「いえ、強い方だと思いますけど……」

 自分の身とレイナを守れるぐらいなら、加護はなくていい。
 たった今会ったばかりのレイナに、僕は自然とそんな感情を抱いていた。

「アタシは貰える物は貰うよ?」

「どうぞどうぞ」

 そんな僕達の会話を聞いていた女神は、深々と溜息を吐きながら許可を出した。

「分かりました。特例で許可します。普通は皆さんチート欲しがるんですけどねぇ」

 後に続いたユウトさんは存在がチートですけどっていう台詞は、聞かなかったことにしておく。
 
「じゃあ考えるからちょっと待って」

「はい?」

「一番欲しいのは貰えるの決まったから、次は最大限貰える物貰わないとね」

 女神の返事に答えたレイナは、何だか凄く生き生きしていた。
 これはまた長くなるかもしれないと思った僕と同じで、女神ももう諦めたらしい。

「お手柔らかにお願いします……」

◇◇

「やっと終わりましたね。それでは転移させていただきます」

 レイナと長々とチート交渉を続けて完全に声が疲れ切った女神に対して、レイナは満足気にホクホクとした顔をしている。
 僕は途中からレイナの顔と胸とお尻と太腿しか見てなかった。

「オッケー」「はい」

 答えると同時に手足の感覚が徐々に無くなり、その部分が光の粒子として空間の中に消えていく。
 自分の体が消えていく奇妙な感覚に囚われている中、女神が重要なことを告げてきた。

「転移先なんですけど、ユウトさんの加護無しにおまけして、良い所にしておきましたので」

「良い所ってどういうことですか?」

 安全な所とかなら理解できるのだが、良い所っていうのは一体どういうことなのだろう。

「それは着いてからのお楽しみということで」

 聞いても教えてくれないだろうなと思うと同時に、僕の下半身の感覚は段々と薄くなっていく。
 
「最後に聞きたいことがあるんだけど」

 僕への話が終わった後そう切り出したレイナに、女神はもう交渉には応じませんよといった雰囲気で問いかけた。

「まだ何かあるんですか?」

「アタシがユウトに勝つ可能性ってあった?」

「ありましたよ。途中で不意打ちを仕掛けなければ落とし穴に落ちてましたから。それなら私もここに来なくて良かったんですけどね」

 それを聞いたレイナは、心底楽しそうに笑いながら、

「負けたアタシ、大正解じゃん」

 そんな言葉を聞いた時に、僕の意識は完全に地球から消え去った。
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