君の首

神通百力

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君の首

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 君ってさ、いつもマフラーをしているよね。
 年がら年中、ずっと巻いているね。

 マフラーが浮いているから気になるんだよね。
 ちゃんとマフラーが巻けていない点も気になっているんだよね。

 僕も浮いている時があるだって? 僕は浮いているんじゃなく、飛んでいるんだよ。
 君は浮いているけどね。

 夜だけじゃなく、昼もデートしたいだって? それは無理だよ。僕は太陽に弱いからね。夜しかデートできないんだ。ごめんね。

 どうしたんだい? お揃いの指輪を付けてみたいだって? 銀は苦手なんだ。苦手なものが多くて申し訳ない。

 一緒にいるだけで幸せだから別に良いって? そう言ってもらえて嬉しいよ。
 僕も君といるだけで幸せだ。

 次のデートの時はマフラーは巻かないでほしいな。どうしてかというと君の首を覚えていないからだよ。マフラー姿の君ばかり見ているからね。

 マフラーを巻いていなければ君の首がどんなだったかひと目で分かるからね。
 何で怒っているんだい? 本当に愛しているのかだって? もちろん僕は君を本気で愛しているよ。

 首を覚えていないのにって?
 だからさ、君の首を思い出すために、次のデートはマフラーを巻かないでほしいんだ。

 今からもう一度デートしようだって? 別にいいけど。
 マフラーは外してくれるのかい? 

 外すから早くデートしようだって? そうだね。
 それじゃ、マフラーを外してくれるかい?

 ああ、そんな首だったね。
 すっかり忘れていたよ。

 やっぱり君はそっちの方がステキだね。


 ねぇ、僕の愛しのろくろ首さん。

 ――えぇ、私の愛する吸血鬼さん。
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