黒き死神が笑う日

神通百力

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データ化

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 私は真っ白な部屋で佇んでいた。広さは四畳半ほどしかなく、家具や電化製品の類は一切置いていない。正確には家具も電化製品もあるが、データ化して保存してある。
 壁に埋め込まれている機械を操作することで、家具や電化製品をデータ化したり具現化させることができる。使用する時だけ具現化させ、使用しない時はデータ化して保存しているのだ。
 データ化のメリットは置く場所に困らない点だ。ただデータが破損した場合、復元できないのが難点と言える。そうなったら同じ商品を購入するか、新調するなどしてデータ化させるしかない。
 私は立ち上がって機械を操作した。そろそろ夕飯の時間だ。リストから冷蔵庫を選択し、決定ボタンを押そうとした瞬間、電気と画面が消えた。どうやら停電のようだ。ものの数秒で電気と画面は点いた。しかし、冷蔵庫のデータは破損していた。
 すぐに財布の中身を確認したが、五千円しか入っていなかった。これでは冷蔵庫は買えない。
 冷蔵庫を購入するまでの間はその日の分の食料だけを買うしかない。冷蔵庫がないから、食料は保存できない。毎日買い物に行かなければならないが、こればかりは仕方がない。
 私は財布を持って外に出た。
 買い物に向かう道すがら、私は深くため息を吐いたのであった。
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