黒き死神が笑う日

ずっと

　僕はキッチンでオムライスを作っていた。あまり料理は得意ではないものの、食べれないレベルではない。オムライスの見た目は決して良くはなかったが、空腹を満たせればいいのだ。
「さあ、食べようか」
　僕はオムライスをこたつの上に置いた。流華るかはどことなく不満気な表情を浮かべた。見た目はまずそうかもしれないが、それなりに美味しいはずだ。
　流華は恐る恐るオムライスを口に運んだ。すぐに満足気な表情を浮かべる。どうやら美味しかったようだ。ただほんの一瞬だけ寂しげな表情を浮かべた。ズキリと心が痛んだ。流華の寂しさを埋めてあげられない自分に腹が立った。
　ふと壁に貼ってある写真が視界に入った。壁には十数枚の写真が貼ってある。それらの写真には同じ人物が写っている。妻と不倫相手だ。妻は僕には一度も見せたことがない笑顔を不倫相手に向けている。
　僕はずっと君を見てきた。君がすべてだった。なのに君は僕には目もくれず、不倫相手と遊び惚けている。僕に見向きもしないのはまだ許せる。だけど、流華を見向きもしないのは許せない。流華に寂しい思いをさせていることは許せないんだ。
　君は僕たちを捨てて不倫相手と一緒になった。流華は目が腫れぼったくなるまで泣き続けた。今でもその姿が目に焼き付いている。
　突然、手に温もりを感じた。見ると、流華が手を握っていた。目が合った瞬間、流華は僕を抱きしめた。
「私はずっとパパの側にいるから。見捨てたりしないよ。だからパパも私の側にずっといてね」
「……ああ、ずっと側にいるよ」
　僕は流華の言葉が嬉しくて思いっきり抱きしめた。

　ありがとう、僕の愛しい流華。