黒き死神が笑う日

神通百力

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 一週間前に森に行き、虫取りをしてからというもの、どうにも膝の感覚がおかしい。木に躓いて転んだことが原因だろうか? いや、これは痛みというよりは内側をくすぐられているような感覚だ。
 私はため息をつきながら、絆創膏を貼り替えた。転んだ時に膝を切ったのだ。傷の周辺がむず痒い。
 膝を撫でまわしながら辺りを見渡した。ここ最近、やけに虫の数が多い気がする。今日だけでもすでに何匹かは捕まえていた。虫取りに行った日を境に、虫の数が増えたように思う。
 それはさておき、膝の感覚がおかしいのは何かしらの菌が入り込んだからかもしれない。だとしたら病院に行った方がいいだろう。
 私は家を出ると、近くの病院に駆け込んだ。

 ☆☆

「――ここに黒い影があるのが分かりますか?」
 先生はレントゲンの膝の部分を指差した。先生の言うように、黒い影があるのが見て取れた。黒い影はいくつかあり、球体のような形をしていた。
「その黒い影は何なんですか?」
 私は膝の病気にかかったのではないかと不安になった。黒い影が一つだけではないことがより不安をかき立てた。
「これはです。傷口から入り込んだのでしょう。いくつかは孵化していますね」
「虫の……卵? 孵化?」
 私は背筋がゾッとするのを感じ、吸い寄せられるかのように膝を見つめた。孵化した虫が内側で飛び回っていたから、くすぐられているような感覚がしたのか。虫が増えたのは私の膝から湧き出していたからだろう。
 絆創膏を剥がして軽く膝の周辺を押してみると、傷口から
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