黒き死神が笑う日

神通百力

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腹頭病

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「私の病気は治せないんですね?」
「ええ、現代の医療技術では完治は不可能です。定期的に水を抜くしかありません」
 先生の言葉にため息をつくと、私は自分のお腹を見た。下腹部が異常に膨れ上がり、人間の頭のような形になっている。全体が軽く湿っていた。私の病気は『腹頭病ふくとうびょう』だった。何らかの原因で体内の水分が下腹部に一気に押し寄せる病気らしいが、詳細は分かっていないようだ。
「それでは水を抜きますので動かないでください。痛いと思いますが、我慢してくださいね」
 先生はそう言うと、私の下腹部にメスを当てて横に引いた。少量の血とともに水が一気に流れ出した。水の流れに呼応するかのように、下腹部は徐々に萎んでいく。やがて下腹部は通常の状態に戻った。
 先生に下腹部を手当てしてもらった後、私は家に帰った。
 その後も、下腹部が膨れるたびに、先生に水を抜いてもらった。だが、そんな生活に嫌気が差し、病院に行くのを止めた。病院からの電話にも出なかった。
 それから二ヶ月が経過し、私の下腹部はパンパンに膨れ上がり、破裂した。
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