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健忘症
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私は机の中に紙が入っていることに気付いた。紙には『秋塚百合、家の場所は学校の裏手、屋根は青色。健忘症で五十分ごとに記憶がリセットされる』と書かれていた。辺りを見回すと、場所は学校のようだった。この紙はいったい誰が書いたのだろうか?
「秋塚、分からないことがあったら何でも言ってくれ」
考え込んでいると、誰かが私に声をかけた。顔を上げると、髪を茶色に染めた端正な顔立ちの少年が立っていた。
「えっと……」
「ああ、俺は夏野健太って言うんだ」
「健太君だね」
忘れないように机の中に入っていた紙に名前をメモしようとしたら、すでに書かれていることに気付いた。私が書いたのだろうか? だとすれば健太君とやらはすでに私に接触していたのかもしれない。少なくとも五十分以上前に。
「健太君、今は何の時間なのかな?」
「今は休み時間だよ。次は音楽だから、そろそろ移動した方がいいな。ちょっと待っててくれ」
健太君はそう言うと、教室を出ようとしていた生徒に声をかけた。いったいどうしたのだろうか? それにしても健太君は親切な男子だと思う。何も覚えていない私に声をかけてくれるのだから。健太君が何回くらい声をかけてくれたのかは分からないが、そのたびに私はどんな感情を抱いたのだろうか?
「おまたせ、それじゃ、移動しようか」
「うん」
私は頷くと椅子から立ち上がり、健太君は歩き出した。すると健太君のポケットから紙が落ちた。私は何気なく紙を拾い、驚愕した。紙には『夏野健太、健忘症で一日ごとに記憶がリセットされる。四列目の一番後ろに座っている秋塚百合も健忘症で五十分ごとに記憶がリセット。家は学校の裏手で屋根は青色』と書かれていた。
「ああ、そっか。私の机の中に入っていた紙は健太君が書いたんだね」
素人目に見ても、この紙と机の中に入っていた紙は明らかに筆跡が同じだった。健太君が生徒に話しかけたのは音楽室の場所を聞くためだったのだろう。
「ああ、そうだよ。改めて音楽室に移動しようか」
「うん、そうだね」
私は健太君の手を握った。健太君は顔を真っ赤にしながらも、音楽室に向かって歩き出した。五十分後には今までの会話も忘れてしまうけど、新鮮な気持ちで健太君に会えるなら、それもいいかもしれない。
――何回も健太君に恋できるということに他ならないのだから。
「秋塚、分からないことがあったら何でも言ってくれ」
考え込んでいると、誰かが私に声をかけた。顔を上げると、髪を茶色に染めた端正な顔立ちの少年が立っていた。
「えっと……」
「ああ、俺は夏野健太って言うんだ」
「健太君だね」
忘れないように机の中に入っていた紙に名前をメモしようとしたら、すでに書かれていることに気付いた。私が書いたのだろうか? だとすれば健太君とやらはすでに私に接触していたのかもしれない。少なくとも五十分以上前に。
「健太君、今は何の時間なのかな?」
「今は休み時間だよ。次は音楽だから、そろそろ移動した方がいいな。ちょっと待っててくれ」
健太君はそう言うと、教室を出ようとしていた生徒に声をかけた。いったいどうしたのだろうか? それにしても健太君は親切な男子だと思う。何も覚えていない私に声をかけてくれるのだから。健太君が何回くらい声をかけてくれたのかは分からないが、そのたびに私はどんな感情を抱いたのだろうか?
「おまたせ、それじゃ、移動しようか」
「うん」
私は頷くと椅子から立ち上がり、健太君は歩き出した。すると健太君のポケットから紙が落ちた。私は何気なく紙を拾い、驚愕した。紙には『夏野健太、健忘症で一日ごとに記憶がリセットされる。四列目の一番後ろに座っている秋塚百合も健忘症で五十分ごとに記憶がリセット。家は学校の裏手で屋根は青色』と書かれていた。
「ああ、そっか。私の机の中に入っていた紙は健太君が書いたんだね」
素人目に見ても、この紙と机の中に入っていた紙は明らかに筆跡が同じだった。健太君が生徒に話しかけたのは音楽室の場所を聞くためだったのだろう。
「ああ、そうだよ。改めて音楽室に移動しようか」
「うん、そうだね」
私は健太君の手を握った。健太君は顔を真っ赤にしながらも、音楽室に向かって歩き出した。五十分後には今までの会話も忘れてしまうけど、新鮮な気持ちで健太君に会えるなら、それもいいかもしれない。
――何回も健太君に恋できるということに他ならないのだから。
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