黒き死神が笑う日

神通百力

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人間抱き枕

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 僕はベッドの上で仰向けに寝そべっている姉さんを見下ろしていた。昔から姉さんのことが大好きだった。一人の女性として姉さんのことが好きだった。
 けれど姉さんは僕を嫌っていた。姉さんを女として見ていたから、気持ち悪がられていた。一年前に両親が事故死した今、姉さんを守れるのは僕だけだというのに。姉さんを異性として意識することの何がいけないのだろうか? 小さい頃はいつも僕を可愛がってくれていた姉さんはいったいどこに行ってしまったのだろうか? 
 僕はできることなら四六時中、姉さんと一緒にいたいと思っている。でも姉さんは僕と過ごすのを嫌がって毎日のように外出していた。
 僕が姉さんと過ごせるのは深夜の時間帯しかなかった。いつも姉さんは警戒心をむき出しにしているが、睡眠の時だけは無防備なのだ。姉さんが寝静まった頃を見計らい、こっそりと寝室に入って寝顔を眺めるのが僕の習慣になっていた。
 可愛い寝顔に見惚れていると、不意に姉さんの目が開いた。姉さんと目が合った瞬間、枕を顔面に投げられた。驚いて尻もちをついた僕を姉さんは殺意のこもった目で睨み付けてきた。
 僕は姉さんを落ち着かせようと愛の言葉を囁いた。するとなぜか姉さんは悲鳴をあげて僕を罵倒し始めた。いくら姉さんを愛しているとはいえ、さすがに僕も腹が立った。
 ふと気付くと僕は姉さんの首を絞めていた。慌てて両手を離すも、すでに姉さんは息絶えていた。
 僕はしばらく立ち尽くしていたが、ふと思い立って車で出かけ、いくつかの店を回って必要な物を準備した。
 それから一週間ほどの時間をかけて姉さんをはく製にすることに成功した。はく製に生まれ変わった姉さんは抱き枕として僕と新たな関係性を築いていくのだ。
 姉さんをベッドに入れると、僕は思いっきり抱きついた。
「愛しているよ、姉さん」
 僕は姉さんの耳元で囁くと、安らかな気分で目を閉じた。
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