黒き死神が笑う日

神通百力

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熊に痴漢された私

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 私は電車に乗ると、空席を探したが、やはり見つからなかった。朝の時間帯は通勤や通学中のサラリーマンと学生が多く、座れないことの方が多かった。今更ながら近くの高校に通うんだったと後悔している。
 私は仕方なく吊り革に掴まって席が空くのを待つことにした。何とはなしに窓の外を見ていると、誰かにお尻を触られた。私はイラっとして振り向き、絶句した。驚くべきことに満面の笑みを浮かべた熊が立っていた。
 恐る恐る視線を下げると、熊が大きな手で私のお尻を撫で回していた。まさか熊が痴漢するとは思わなかった。どうやって乗り込んだのかは知らないが、恐ろしくて『ち、痴漢です』と叫べなかった。周りの乗客も恐怖で顔が引き攣っている。
 熊は乗客の反応に構うことなく、私のお尻をしばらく撫で回した後、スカートをめくった。その瞬間、車内にいた男性たちは恐怖と喜びが綯い交ぜになった表情を浮かべた。どこの馬の骨ともしれない男性にパンティーを見られたことが恥ずかしかった。
 熊は鼻息を荒くし、両手で私のお尻を揉んだ。すると熊の手がパンティーの中に入り込んできた。獣特有のふさふさとした毛がお尻の表面に当たってこそばかった。
 それにしても熊に痴漢されるとは何て運が悪いのだろうか。いや、一生に一度あるかないかの体験だし、ある意味運がいいのかもしれない。できることなら体験したくなかったけれど。
 熊はしばらくお尻を堪能した後、今度は私の胸に手を伸ばして鋭い爪で制服を切り裂いた。制服が破れ、平らな胸が露わになった。
「グルルル……ふっ」
 え? この熊、今、鼻で笑った? 私の胸は熊にもバカにされるほど小さいのか。人間にバカにされるよりもショックだった。動物界にも通用しないレベルの胸だったなんて。
 それはさておき、男性共がバカみたいな顔をして私の胸を凝視していることに腹が立った。女子高生の胸を見れてラッキーとでも思っているのかもしれない。
 熊に胸を見られるのは別に構わない。熊は動物だから仕方がないし。だが、男性共はダメだ。だって同じ人間だもの。あとイヤらしい表情してるもの。あんな表情で見られたら誰だってイヤに決まっている。
 熊は興味を失くしたのか、私の胸には一切見向きもせず、またもお尻を揉んできた。そんなに私の胸は魅力がないのか。少しは興味を持って欲しかった。そうでないと晒し損だ。何のために胸を晒したのか分からない。自分の意思で胸を晒したわけではないけれど。
 何だか悔しくて私は俯いた。ため息をついて顔を上げ、私は目を見開いた。熊が一匹増えて二匹になっていた。分身の術か何かですか? と思ったが、よく見るともう一匹の熊は小柄な体格だった。
 気配に気付いたのか、熊は隣を見て私に視線を向けた。そして驚いたようにもう一度、隣を見た。見事なまでの二度見だった。熊でも二度見するんだと感心した。
「グルルルル!」
 熊は慌てた様子で唸り声をあげたが、小柄な体格の熊は怒っているかのように睨み付けていた。小柄な体格の熊は彼女なのかもしれない。
 そして小柄な体格の熊は熊の首根っこを掴み、ホームに止まった電車から降りていった。私も慌てて電車から降りた。目的の駅に着いたからだった。
 熊は引きずられながら、私に向かってウインクした。また明日と言っているように私には思えた。
 私は学校に向かいながら、明日に思いを馳せた。
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