【完結】翠くんは、可愛いがられたい

日月ゆの

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43.どうしようもなく嬉しかった

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 高熱を出した僕は、恭くんに自室のベッドへ運ばれ、伊織くんが呼びに行った白井先生に診てもらうことに。

 寝不足とストレスでの熱。
 風邪の症状も無く、胸の音も、呼吸状態も正常だから、と白井先生の診断です。
 解熱するまで休むよう指示された僕は、ゴロンとベッドへ横になっています。
 38.7℃もあったので念の為、解熱剤を処方されました。

 それが昨晩のこと。今は、1日寝たことと解熱剤を服用したので微熱になりました。

 相変わらずの脆く弱っちい僕の体です。
 でも、初めて本心を口に出し、伊織くんと仲直りできた僕は、ちょっとは強くなれたのでは。
 意地っ張りで強情だ、と伊織くんに言われてしまいましたが。

 そう言う伊織くんも同じ性格をしていると思います。
 従兄弟同士、似たような性格ってことなんでしょう。
 だからこそ、拗らせていたとも言えますが。
 もつれた僕達の関係を、玄くんがいとも簡単にするする解いてくれました。 

 あの日偶然玄くんに出会ったことで僕はいろんなことに気づくことができました。

 ノラさんと玄くんと一緒に過ごすお昼休憩は、陽だまりの温もりが体も心も包み込む優しい時間。

 頭の中はその温もりを感じる甘さに絡めとられたみたいに玄くんでいっぱいで。
 いきなり僕の中で玄くんの存在が大きくなってしまったんです。

 しかし、今までの自分にはない、まとまりのない感情が手に余っていたんです。

 過去の記憶の中に閉じこもった思い込みで、玄くんへの気持ちを押し潰し逃げることしかできなかった。

 でも、玄くんはとんでもない優しく眩しい言葉を力強く手渡してくれた。

 わがままな僕でも良い。
 そして、俺も翠の気持ちを大切にしてやりたいよ、と。

 優しく眩しい気持ちだけじゃなく、心にいくつもの波紋を立て自分ごと壊れてしまいそうな激しい気持ちも。

 押さえ込んだ気持ちを拾い上げて、真正面から向き合い、玄くんを幸せにしたいんです。

 この少しだけわがままな欲望に、気付けたのは玄くんのおかげですね。


 温かくて大きくて強い玄くん。頑張って。すいなら出来る。
 当然のようにそう言ってくれる玄くん。

 それに、良くできたら頭を撫でて褒めてもくれました。

 …………どうしようもなく嬉しかったんです。


 うう。ベッドの上で横になりつつ悶々と長考していましたが、頭がズーンと重くなって来てしまいました。

 またお熱出そうですかね。
 お熱が治らないことには告白もできませんし、ましてやそれ以前の問題で、玄くんに会うことすらできませんからね。

 それにこれでは白井先生とのお約束を守れません。

「今日はなんにも考えず、ぼんやり天井の模様でも見て寝なさい」

 白井先生曰く、早く治すためのかなり独特かつ具体的なアドバイスですよ。
 ころりと仰向けに向きを変えて、天井の模様を見てみます。
 真っ白の壁紙かと思いましたが、淡いクリーム色で、ハケで刷いたような掠れた凹凸感が……。

 鎮痛剤が効いてきたのか、白井先生のアドバイスの効果なのか意識がぼんやりしてきます。
 目蓋がとろりと重くなっていくままにいつ眠りに落ちたのかわかりませんでした。


「……ん」

 カサ、カサと紙を静かに捲る音に緩やかに意識が上昇します。
 そっと目蓋を開くと、手元に持つ紙束から顔を上げた玄くんの優しいお顔です。

「翠? 起きたか?」
「……げ、んくん?」
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