43 / 48
43.どうしようもなく嬉しかった
しおりを挟む高熱を出した僕は、恭くんに自室のベッドへ運ばれ、伊織くんが呼びに行った白井先生に診てもらうことに。
寝不足とストレスでの熱。
風邪の症状も無く、胸の音も、呼吸状態も正常だから、と白井先生の診断です。
解熱するまで休むよう指示された僕は、ゴロンとベッドへ横になっています。
38.7℃もあったので念の為、解熱剤を処方されました。
それが昨晩のこと。今は、1日寝たことと解熱剤を服用したので微熱になりました。
相変わらずの脆く弱っちい僕の体です。
でも、初めて本心を口に出し、伊織くんと仲直りできた僕は、ちょっとは強くなれたのでは。
意地っ張りで強情だ、と伊織くんに言われてしまいましたが。
そう言う伊織くんも同じ性格をしていると思います。
従兄弟同士、似たような性格ってことなんでしょう。
だからこそ、拗らせていたとも言えますが。
もつれた僕達の関係を、玄くんがいとも簡単にするする解いてくれました。
あの日偶然玄くんに出会ったことで僕はいろんなことに気づくことができました。
ノラさんと玄くんと一緒に過ごすお昼休憩は、陽だまりの温もりが体も心も包み込む優しい時間。
頭の中はその温もりを感じる甘さに絡めとられたみたいに玄くんでいっぱいで。
いきなり僕の中で玄くんの存在が大きくなってしまったんです。
しかし、今までの自分にはない、まとまりのない感情が手に余っていたんです。
過去の記憶の中に閉じこもった思い込みで、玄くんへの気持ちを押し潰し逃げることしかできなかった。
でも、玄くんはとんでもない優しく眩しい言葉を力強く手渡してくれた。
わがままな僕でも良い。
そして、俺も翠の気持ちを大切にしてやりたいよ、と。
優しく眩しい気持ちだけじゃなく、心にいくつもの波紋を立て自分ごと壊れてしまいそうな激しい気持ちも。
押さえ込んだ気持ちを拾い上げて、真正面から向き合い、玄くんを幸せにしたいんです。
この少しだけわがままな欲望に、気付けたのは玄くんのおかげですね。
温かくて大きくて強い玄くん。頑張って。すいなら出来る。
当然のようにそう言ってくれる玄くん。
それに、良くできたら頭を撫でて褒めてもくれました。
…………どうしようもなく嬉しかったんです。
うう。ベッドの上で横になりつつ悶々と長考していましたが、頭がズーンと重くなって来てしまいました。
またお熱出そうですかね。
お熱が治らないことには告白もできませんし、ましてやそれ以前の問題で、玄くんに会うことすらできませんからね。
それにこれでは白井先生とのお約束を守れません。
「今日はなんにも考えず、ぼんやり天井の模様でも見て寝なさい」
白井先生曰く、早く治すためのかなり独特かつ具体的なアドバイスですよ。
ころりと仰向けに向きを変えて、天井の模様を見てみます。
真っ白の壁紙かと思いましたが、淡いクリーム色で、ハケで刷いたような掠れた凹凸感が……。
鎮痛剤が効いてきたのか、白井先生のアドバイスの効果なのか意識がぼんやりしてきます。
目蓋がとろりと重くなっていくままにいつ眠りに落ちたのかわかりませんでした。
「……ん」
カサ、カサと紙を静かに捲る音に緩やかに意識が上昇します。
そっと目蓋を開くと、手元に持つ紙束から顔を上げた玄くんの優しいお顔です。
「翠? 起きたか?」
「……げ、んくん?」
20
あなたにおすすめの小説
キスの仕方がわかりません
慶野るちる
BL
全寮制男子校に入学した市原はクラス委員長になったため書類を提出しに生徒会室に行くと、そこに一人いた、初対面の副会長の近藤に襲われてしまう。
混乱するも相部屋の同級生・松川に助けられて元気を取り戻したある日、生徒会長の桜野から仕事を手伝って欲しいと依頼される。
最初は近藤に無視されていたが手伝う中で近藤から告白され、近藤への印象が少しずつ変わっていく市原だが。
表紙:Photo by Markus Spiske on Unsplash / powered by かんたん表紙メーカー様
銀狼様とのスローライフ
八百屋 成美
BL
激務に心身を病み、逃げるように田舎へ移り住んだ佐伯湊。
ある雨の日、彼は庭先で銀色に輝く巨大な狼を拾う。
それは、人間に追われ傷ついた神獣、リュカだった。
傷の手当てをきっかけに、湊の家に居座ることになったリュカ。
尊大で俺様な態度とは裏腹に、彼は湊が作ったご飯を美味しそうに食べ、寒い夜にはその温かい毛並みで湊を包み込んでくれる。
孤独だった湊の心は、リュカの無償の愛によって次第に満たされていく。
しかし、平穏な日々は長くは続かなかった。
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
30歳まで独身だったので男と結婚することになった
あかべこ
BL
※未完
4年前、酒の席で学生時代からの友人のオリヴァーと「30歳まで独身だったら結婚するか?」と持ちかけた冒険者のエドウィン。そして4年後のオリヴァーの誕生日、エドウィンはその約束の履行を求められてしまう。
キラキラしくて頭いいイケメン貴族×ちょっと薄暗い過去持ち平凡冒険者
元アイドルは現役アイドルに愛される
陽
BL
人気アイドルグループのエースだった奏多は事故により脚を怪我し、グループを脱退する。エースの抜けたグループの人気はみるみる下落し、そのまま解散。そのことに責任と罪悪感を感じた奏多は芸能界の表舞台から引退し、正体不明の作曲家Kとして裏で支えることに。
罪悪感からご飯を食べなくなった奏多の肌は痩せこけ、青白くかつての輝きはなくなっていた。
ある日の打ち合わせでかつてのグループメンバーである颯真と再会する。
メガネとマスクをしているがかつてのメンバーのことは騙せない。
『奏多、会いたかった』
『僕、奏多さんのパフォーマンスを見て、人生変わったんです!』
やけに自分に懐いているワンコ系の後輩リオと、かつてのグループのメンバー颯真に受け止めきれない愛を向けられる話。
【完結】巷で噂の国宝級イケメンの辺境伯は冷徹なので、まっっったくモテませんが、この度婚約者ができました。
明太子
BL
オーディスは国宝級イケメンであるにも関わらず、冷徹な性格のせいで婚約破棄されてばかり。
新たな婚約者を探していたところ、パーティーで給仕をしていた貧乏貴族の次男セシルと出会い、一目惚れしてしまう。
しかし、恋愛偏差値がほぼ0のオーディスのアプローチは空回りするわ、前婚約者のフランチェスカの邪魔が入るわとセシルとの距離は縮まったり遠ざかったり…?
冷徹だったはずなのに溺愛まっしぐらのオーディスと元気だけどおっちょこちょいなセシルのドタバタラブコメです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる