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十一公演目――ウェンアイムゴーン
二曲目:チャーリー・セイラー
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「アーティーを? 俺が? ……構わないが、どうした急に」
「寮から連れ出してもらうだけならベルでもいいんだけどさ、アーティーと付き合い長いのオレたちだろ? そのうちボロ出るかもだし。だからさ、チャーリーにしか頼めないんだ」
二段ベッドの梯子に手をかけたウィリアムが目で訴えかけてくる。上段に腰掛けていた俺は見上げられる形になり溜息を吐いた。今日はやたらとあざといな。打算的だろうとなかろうと可愛いことに変わりはないんだから、むしろ無意味なんだが。
「オレはベルと一緒にアーティーが好きそうなもの用意して待ってるからさ、二時間ぐらいほっつき歩いててくれたらそれでいいんだって! ダメ~?」
「二時間も? そんなに話すことないぞ」
「え~~! あ、じゃああれはどう? 感謝祭の日! パレードやるだろ、それ観て帰って来たらちょうどいいぐらいだったりして!」
「だったらお前らで行ってくればいいだろ。俺が準備しておく」
「いや、まあ、そうなんだけどさ……」
珍しく要領を得ない。本当は何をやらせたい? そもそもなんだって急にアーティーへのサプライズがしたいだなんて言い出したんだ。誕生日は先月終わった。クリスマスもまだだ。まさかアーティーは方便で追い出したいのは俺か? ……俺の誕生日なんかずっと先だ。そもそもウィリアムと一緒だろうが。ウィリアムに限ってやましいことがあるとは……いや、この前も喉の調子が悪いのを隠そうとしていた。俺に言いにくいことでもあるのか? …………もしや、アダマスに脅された?
「…………ウィリアム・セイラー」
「へっ!? あ、はい!?」
「今は俺たち以外誰もいない。全員出払ってる。極秘の話があるのならあいつらが帰ってくる前に言え。お前に何かあったのなら……」
「あっ、違う違う! マジでそういうんじゃない! ホントに!」
「じゃあなんだ、何故妙な言い分で誤魔化す」
「妙って……あーー分かった降参降参!! 兄貴の仰せのままに!」
「なんだそれ」
ウィリアムはとうとう梯子をのぼってきた。不貞腐れた弟が座る分のスペースを空ける。
「ほら、アーティー最近元気ないだろ? 誕生日らへんからさ」
「そうか? ……まあ、言われてみればいつも以上に静かな気はするが」
「だよな! だからオレも何度か探り入れてみたんだけどさ、ど~もはぐらかされちゃうっつーか……」
「おい、それで俺にパスっていうのか? 冗談じゃない、お前が無理なら俺だって無理だろ」
「わかんねーじゃん! オレとは仲良すぎて逆に話せないってこともさ、チャーリーならぽろっと零すかも! 一緒にいた年月で言えばオレと一緒だしさ、お願いお願いお願い!」
「だあああ揺らすな揺らすな!! やらないとは初めから言ってないだろ」
「っじゃあ!」
「但し」
咲きかけた笑みがキュッと真顔に戻る。……犬を飼っていたらこんな感じだったんだろうか、などと一瞬でも考えてしまった自分が憎い。犬よりも圧倒的に可愛いに決まってるだろ、ウィリアムは。
「……得た情報をお前に話すかは俺が決める。話さないほうが有益だと判断すれば黙秘するし、話していいと思えばお前にだけバラすよ」
「んん~……分かった。チャーリーがそう思ったんなら、それを信じるよ」
「よし」
そろそろベルあたりが帰ってくる頃だろう。またどこかの学校で警備員に追い回されでもしていたらもう少しかかるだろうが。
「そうと決まれば、パレードの時間とルートを念のため確認してくる。例年通りだとは思うがな」
「ありがと! アーティー、なに隠してんだろな~……あっ、まさかオレへのサプライズだったり!?」
「誕生日は半年以上先だろ」
「へへっだよな、チャーリーとお揃い!」
ふにゃりと笑うウィリアムの頭をポンポンと撫でて、梯子を降りろと促した。
「寮から連れ出してもらうだけならベルでもいいんだけどさ、アーティーと付き合い長いのオレたちだろ? そのうちボロ出るかもだし。だからさ、チャーリーにしか頼めないんだ」
二段ベッドの梯子に手をかけたウィリアムが目で訴えかけてくる。上段に腰掛けていた俺は見上げられる形になり溜息を吐いた。今日はやたらとあざといな。打算的だろうとなかろうと可愛いことに変わりはないんだから、むしろ無意味なんだが。
「オレはベルと一緒にアーティーが好きそうなもの用意して待ってるからさ、二時間ぐらいほっつき歩いててくれたらそれでいいんだって! ダメ~?」
「二時間も? そんなに話すことないぞ」
「え~~! あ、じゃああれはどう? 感謝祭の日! パレードやるだろ、それ観て帰って来たらちょうどいいぐらいだったりして!」
「だったらお前らで行ってくればいいだろ。俺が準備しておく」
「いや、まあ、そうなんだけどさ……」
珍しく要領を得ない。本当は何をやらせたい? そもそもなんだって急にアーティーへのサプライズがしたいだなんて言い出したんだ。誕生日は先月終わった。クリスマスもまだだ。まさかアーティーは方便で追い出したいのは俺か? ……俺の誕生日なんかずっと先だ。そもそもウィリアムと一緒だろうが。ウィリアムに限ってやましいことがあるとは……いや、この前も喉の調子が悪いのを隠そうとしていた。俺に言いにくいことでもあるのか? …………もしや、アダマスに脅された?
「…………ウィリアム・セイラー」
「へっ!? あ、はい!?」
「今は俺たち以外誰もいない。全員出払ってる。極秘の話があるのならあいつらが帰ってくる前に言え。お前に何かあったのなら……」
「あっ、違う違う! マジでそういうんじゃない! ホントに!」
「じゃあなんだ、何故妙な言い分で誤魔化す」
「妙って……あーー分かった降参降参!! 兄貴の仰せのままに!」
「なんだそれ」
ウィリアムはとうとう梯子をのぼってきた。不貞腐れた弟が座る分のスペースを空ける。
「ほら、アーティー最近元気ないだろ? 誕生日らへんからさ」
「そうか? ……まあ、言われてみればいつも以上に静かな気はするが」
「だよな! だからオレも何度か探り入れてみたんだけどさ、ど~もはぐらかされちゃうっつーか……」
「おい、それで俺にパスっていうのか? 冗談じゃない、お前が無理なら俺だって無理だろ」
「わかんねーじゃん! オレとは仲良すぎて逆に話せないってこともさ、チャーリーならぽろっと零すかも! 一緒にいた年月で言えばオレと一緒だしさ、お願いお願いお願い!」
「だあああ揺らすな揺らすな!! やらないとは初めから言ってないだろ」
「っじゃあ!」
「但し」
咲きかけた笑みがキュッと真顔に戻る。……犬を飼っていたらこんな感じだったんだろうか、などと一瞬でも考えてしまった自分が憎い。犬よりも圧倒的に可愛いに決まってるだろ、ウィリアムは。
「……得た情報をお前に話すかは俺が決める。話さないほうが有益だと判断すれば黙秘するし、話していいと思えばお前にだけバラすよ」
「んん~……分かった。チャーリーがそう思ったんなら、それを信じるよ」
「よし」
そろそろベルあたりが帰ってくる頃だろう。またどこかの学校で警備員に追い回されでもしていたらもう少しかかるだろうが。
「そうと決まれば、パレードの時間とルートを念のため確認してくる。例年通りだとは思うがな」
「ありがと! アーティー、なに隠してんだろな~……あっ、まさかオレへのサプライズだったり!?」
「誕生日は半年以上先だろ」
「へへっだよな、チャーリーとお揃い!」
ふにゃりと笑うウィリアムの頭をポンポンと撫でて、梯子を降りろと促した。
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