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黒帯盗難事件
⑩ 武術係、佐那原朱里
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週明けの月曜日の放課後。
喫茶店『白ねこ』の一番奥にある四人掛けの席。
私、朱里と、賢は揃ってジュースを飲みながらショートケーキを食べていた。
ジュースはまだしもなぜケーキまで出ているのかというと、正義のお母さんが「事件解決祝いだから」と言ってサービスしてくれたからだ。
「賢、ありがとうね。賢の推理力が無ければ、事件を解決できなかった」
私は深々と賢に頭を下げる。
賢はあまり興味が無さそうな様子で「いいよ。別に」と返した。
「……それで、結局のところ、どうなったの?」
私はふふっと笑う。
「私、謹慎解除になったよ」
賢は首を横に振る。
「それは正義から聞いたよ。そっちじゃなくて、友里さん、田中さん、木山さんの事」
「……木山先輩は謹慎一カ月。黒帯締めた張本人で、最後まで隠そうとしてたから当然ね」
「ふーん。他の二人は?」
「友兄と田中先輩は罰は無し」
「無し? へえ、朱里のお父さん、話聞いた感じだと厳しい人で、何かしらの罰を考えそうな気がしたけど……」
「違うの。お父さんは一週間くらい謹慎させようかって私に言ってきたんだけど、私から許してあげてってお願いしたの」
「朱里がお願いした? ……ってことは、朱里は二人を許したんだ」
「うん。友兄の言いたいことは一応理解できたし。田中先輩は最初、私を助けようとお父さんに告げ口しようとしてたみたいだけど、友兄に説得されて友兄のやり方に従ったみたい。……私が二人の立場になったらどうするべきか考えたけど、結局どっちが正しいのか分かんなかったから、もう、二人とも許そうってことにしたの」
「意外だな。僕はてっきり、三人とも痛い目に合わせるのかと思ってた」
「ちょっと、ひどーい。私、そんな暴力ふるう人じゃないよ!」
と、ここで、正義がジュースのおかわりを乗せたトレーを持ってきた。
「ジュースのおかわり追加だー。っと」
おかわり分のジュースを並べていく正義。
私は、意を決して正義にこう切り出した。
「正義。私、人の気持ちを考えるのが苦手なのかもしれない。もし、私が友兄と田中先輩を誤解して泣いたり怒ったりした時みたいに、人の気持ちを分かっていないって思ったら、止めてくれる? 正義なりにで良いから、人の気持ち、私に教えてくれる?」
「いいぞ。何度でもいいぞ!」
その言葉に「分かった」とだけ返すと、私は一度深呼吸した。
「ねえ、正義。あれってまだ有効?」
「あれって?」
すっかり忘れていたのか、正義は頭の上にはてなマークが浮かんだような表情をした。
「宮川小たんてい団の入団。正義は団長だから、私だと……。『武術係』って肩書が良いかな」
私はランドセルから筆記用具入れを取り出すと、メニュー表と一緒に置かれた一冊のノートを手にする。
ノートの表紙には若干汚い文字で『宮川小たんてい団』。
表紙をめくると、これまた汚い字で一番上に『団長 吉本正義』とだけ書かれていた。
ほんの何日かしか経っていないはずなのに、どこか懐かしさを感じる。
「え、朱里、まさか……」
と、賢が驚いた表情をする。
「うん。謹慎が解けた後にお父さんに相談したら『朱里を助けるために弟子入りまでしたんだ。恩を返す意味も込めて、入団してもいいんじゃないか』って。だから、さ……」
私は、正義の名前の下に『武術係 佐那原朱里』と記入した。
やったー! と、正義は喫茶店の雰囲気を根こそぎ壊すかのような勢いで飛び上がって喜んだ。
「よろしくね、正義」
「おう、よろしく! さーて、これで三人になったし、本格的に宮川小たんてい団を始動させて……」
「あ、僕は探偵団には入らないからね」
空気を読まない男、有時賢の言葉に、私と正義は「ええーっ!?」と大声を上げた。
喫茶店『白ねこ』の一番奥にある四人掛けの席。
私、朱里と、賢は揃ってジュースを飲みながらショートケーキを食べていた。
ジュースはまだしもなぜケーキまで出ているのかというと、正義のお母さんが「事件解決祝いだから」と言ってサービスしてくれたからだ。
「賢、ありがとうね。賢の推理力が無ければ、事件を解決できなかった」
私は深々と賢に頭を下げる。
賢はあまり興味が無さそうな様子で「いいよ。別に」と返した。
「……それで、結局のところ、どうなったの?」
私はふふっと笑う。
「私、謹慎解除になったよ」
賢は首を横に振る。
「それは正義から聞いたよ。そっちじゃなくて、友里さん、田中さん、木山さんの事」
「……木山先輩は謹慎一カ月。黒帯締めた張本人で、最後まで隠そうとしてたから当然ね」
「ふーん。他の二人は?」
「友兄と田中先輩は罰は無し」
「無し? へえ、朱里のお父さん、話聞いた感じだと厳しい人で、何かしらの罰を考えそうな気がしたけど……」
「違うの。お父さんは一週間くらい謹慎させようかって私に言ってきたんだけど、私から許してあげてってお願いしたの」
「朱里がお願いした? ……ってことは、朱里は二人を許したんだ」
「うん。友兄の言いたいことは一応理解できたし。田中先輩は最初、私を助けようとお父さんに告げ口しようとしてたみたいだけど、友兄に説得されて友兄のやり方に従ったみたい。……私が二人の立場になったらどうするべきか考えたけど、結局どっちが正しいのか分かんなかったから、もう、二人とも許そうってことにしたの」
「意外だな。僕はてっきり、三人とも痛い目に合わせるのかと思ってた」
「ちょっと、ひどーい。私、そんな暴力ふるう人じゃないよ!」
と、ここで、正義がジュースのおかわりを乗せたトレーを持ってきた。
「ジュースのおかわり追加だー。っと」
おかわり分のジュースを並べていく正義。
私は、意を決して正義にこう切り出した。
「正義。私、人の気持ちを考えるのが苦手なのかもしれない。もし、私が友兄と田中先輩を誤解して泣いたり怒ったりした時みたいに、人の気持ちを分かっていないって思ったら、止めてくれる? 正義なりにで良いから、人の気持ち、私に教えてくれる?」
「いいぞ。何度でもいいぞ!」
その言葉に「分かった」とだけ返すと、私は一度深呼吸した。
「ねえ、正義。あれってまだ有効?」
「あれって?」
すっかり忘れていたのか、正義は頭の上にはてなマークが浮かんだような表情をした。
「宮川小たんてい団の入団。正義は団長だから、私だと……。『武術係』って肩書が良いかな」
私はランドセルから筆記用具入れを取り出すと、メニュー表と一緒に置かれた一冊のノートを手にする。
ノートの表紙には若干汚い文字で『宮川小たんてい団』。
表紙をめくると、これまた汚い字で一番上に『団長 吉本正義』とだけ書かれていた。
ほんの何日かしか経っていないはずなのに、どこか懐かしさを感じる。
「え、朱里、まさか……」
と、賢が驚いた表情をする。
「うん。謹慎が解けた後にお父さんに相談したら『朱里を助けるために弟子入りまでしたんだ。恩を返す意味も込めて、入団してもいいんじゃないか』って。だから、さ……」
私は、正義の名前の下に『武術係 佐那原朱里』と記入した。
やったー! と、正義は喫茶店の雰囲気を根こそぎ壊すかのような勢いで飛び上がって喜んだ。
「よろしくね、正義」
「おう、よろしく! さーて、これで三人になったし、本格的に宮川小たんてい団を始動させて……」
「あ、僕は探偵団には入らないからね」
空気を読まない男、有時賢の言葉に、私と正義は「ええーっ!?」と大声を上げた。
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