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塾テスト不正疑惑事件
① 勧誘は二人がかりに
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安楽椅子探偵。
現場には出向かず、新聞や警察からの情報を頼りに事件を推理する探偵。
先週、僕、有時賢(ありとき けん)は、同級生の佐那原朱里(さなはら あかり)が黒帯を盗んだと疑われた時、事件を解決するために吉本正義(よしもと まさよし)と共に、少しだけ力を貸した。
その事を通っている塾の友達に話した際に「安楽椅子探偵っぽい」と言われ、その言葉を初めて知った。
その日の帰りにスマホ片手に調べながら、僕がまだ幼い頃に流行した安楽椅子探偵が主人公の小説の中古本を一冊購入。
短編集だったためそのうちの一つを読んでみる。
足の悪いお爺さん探偵が新聞で知った興味のある事件について、知人の刑事を呼び出しては『こんな人はいないか?』『こんな事は起こってないか?』『ここは調べたか?』と質問攻めし、その返答によっては『あの人について調べてこい』『この場所について調べてこい』と指示。
それを繰り返しながら、事件の真相に近付いていくというものだ。
友人が言うほど近いかと疑問は残るが、今はそんなことどうでもいい。
黒帯盗難事件では昼休みに二度、二人の話を聞いてその場所で可能な点を推理し真相に近付くことで、事件を解決に導いた。
これくらいなら、塾通いを続けながらでも探偵団に入ることは可能だろう。
ただし問題は、二人が力を貸すに値する人物なのかどうかだ。
四月下旬。
僕は困っていた。
朱里が正義に誘われ、探偵団に入団。
それは別に良いのだが、今後は僕に正義と朱里の二人がかりで探偵団に入るようまた誘ってきたのだ。
正義一人なら何とかなるかなと思っていたが、朱里もいるとなると逃げ切るのは大変だ。
何せ、朱里は女子とは思えないほど足が速い。
多少離れたところにいてもすぐ目の前まで迫るくらいだ。
かくれんぼ的な鬼ごっこ的な感じで二人を避け続けるのはかなり難しい。
特に昼休みは時間が長いため、今日も二人に捕まっていた。
「頼むよ! 賢の頭の良さが、たんてい団には必要なんだよ!」
そう言って、僕の足にしがみついて引きずられているのは正義。
運動音痴な僕よりはましとはいえ、運動はあまり得意ではない。
あと、勉強は駄目で何度か先生達を困らせたほどだ。
行動力はあるのだが、僕と朱里を誘った時の様な無理やり喫茶店『白ねこ』に連れてくるところが、力ずくな感じがして苦手だ。
「お願い賢! 私達二人じゃ、今後の事件の解決は難しいの!」
手のひらを合わせて僕にお願いしてくるのは、探偵団の武術係の朱里。
黒帯盗難事件という正義が命名した事件を解決し、元々少し興味があったのと、その恩を感じて探偵団に入団した女子。
道場の娘で男子中学生にすら勝てる実力者。
あと、運動神経抜群で、何度か女子バスケクラブなどのメンバーが朱里を誘っては断られているのを見かけた事がある。
勉強の成績も平均程度と悪くはない。
別に苦手ではないが、正義と二人で追いかけてくるなら話は別だ。
「嫌だ! 僕は塾通いで忙しいんだ!」
放課後。
塾。
「あー。今日も疲れた……」
「賢。今日も大変だったんだな」
塾に着いた途端ぐったりした僕。
その様子を見てなのか、塾友達の鈴井陸(すずい りく)がそう声をかけてきた。
小学校は別だが、五年生の時からの塾仲間で良く話す仲だ。
「あはは、いっその事、何かあった時だけでも手助けすればいいのに」
陸に続いて声をかけてきたのは、同じく五年生の時からの塾仲間で、良く話す仲の上町葵(うえまち あおい)。
「手伝いだなんて冗談じゃない。学校以外は塾で忙しいってのに、手助け何てするんじゃなかったよ」
ぐったりしたまま僕はそう返す。
元々は、僕も陸も葵も二十人程度の生徒がいる『野原塾』という小学生向けの学習塾に通っていた。
僕達三人の成績は野原塾では常にトップ。
だが、生徒の学力の差が僕ら三人とそれ以外で二極化が深刻化。
上のレベルに合わせると下が授業についていけず、下のレベルに合わせると上が退屈するという問題が発生する。
かといって中間くらいのレベルにするとどっちからも不満の声が上がるので僕達が六年生に上がるタイミングでレベル分けが行われた。
とは言っても、野原塾は教室が一つしかない。
ではどうやってレベル分けをするのかというと、野原塾から徒歩で行ける範囲の近場にある別の塾と経営統合し、お互いの生徒を学力で分けられるよう交換するという方法がとられた。
野原塾と経営統合した塾の名前は谷口塾。
野原塾の野原塾長と谷口塾の谷口塾長は昔からの知り合いらしく、割とすんなりと経営統合は上手くいったらしい。
経営統合後、親会社のグループ名である『葛西(かさい)グループ』に吸収合併となり、それぞれの塾の名称が変更となった。
元々野原塾だった建物は『葛西一般塾』で、通称は『一般塾』。
元々谷口塾だった方の建物は『葛西上級塾』で、通称は『上級塾』という。
「はぁー。不安だ」
と、陸は緊張したような表情を見せる。
「どうした? ランキングが気になるのか?」
上級塾は定員が十名で、僕らは学力試験によるランキング付けで十番以内に入り、一般塾と比べてレベルの高い授業を受けている。
とは言ったものの、今上級塾にいるからと言って油断はできない。
この塾には定期テストがあり、成績によって一般塾の上位成績者と交代になる。
生徒同士の競争力を高める効果があるのかもしれないが、僕はあまり好きではない。
「当たり前だよ。俺は前回の定期テストで十位。あと一つ順位が落ちたら一般塾送りだぞ」
この『一般塾送り』という言い方が苦手だ。
周りも言ってるから僕も合わせてはいるのだが、なんだか島流しみたいな雰囲気がして好きじゃない。
「僕が勉強見てたんだから大丈夫だって。よっぽど他が追い上げでもしない限り、十位より下には落ちない」
僕は、塾が終わった後に陸と葵の勉強のサポートをしている。
最初は野原塾で一番の成績を取っていた僕に勉強を教えて欲しいと頼まれ、人に教えるのも勉強になると引き受けたのがきっかけだった。
現場には出向かず、新聞や警察からの情報を頼りに事件を推理する探偵。
先週、僕、有時賢(ありとき けん)は、同級生の佐那原朱里(さなはら あかり)が黒帯を盗んだと疑われた時、事件を解決するために吉本正義(よしもと まさよし)と共に、少しだけ力を貸した。
その事を通っている塾の友達に話した際に「安楽椅子探偵っぽい」と言われ、その言葉を初めて知った。
その日の帰りにスマホ片手に調べながら、僕がまだ幼い頃に流行した安楽椅子探偵が主人公の小説の中古本を一冊購入。
短編集だったためそのうちの一つを読んでみる。
足の悪いお爺さん探偵が新聞で知った興味のある事件について、知人の刑事を呼び出しては『こんな人はいないか?』『こんな事は起こってないか?』『ここは調べたか?』と質問攻めし、その返答によっては『あの人について調べてこい』『この場所について調べてこい』と指示。
それを繰り返しながら、事件の真相に近付いていくというものだ。
友人が言うほど近いかと疑問は残るが、今はそんなことどうでもいい。
黒帯盗難事件では昼休みに二度、二人の話を聞いてその場所で可能な点を推理し真相に近付くことで、事件を解決に導いた。
これくらいなら、塾通いを続けながらでも探偵団に入ることは可能だろう。
ただし問題は、二人が力を貸すに値する人物なのかどうかだ。
四月下旬。
僕は困っていた。
朱里が正義に誘われ、探偵団に入団。
それは別に良いのだが、今後は僕に正義と朱里の二人がかりで探偵団に入るようまた誘ってきたのだ。
正義一人なら何とかなるかなと思っていたが、朱里もいるとなると逃げ切るのは大変だ。
何せ、朱里は女子とは思えないほど足が速い。
多少離れたところにいてもすぐ目の前まで迫るくらいだ。
かくれんぼ的な鬼ごっこ的な感じで二人を避け続けるのはかなり難しい。
特に昼休みは時間が長いため、今日も二人に捕まっていた。
「頼むよ! 賢の頭の良さが、たんてい団には必要なんだよ!」
そう言って、僕の足にしがみついて引きずられているのは正義。
運動音痴な僕よりはましとはいえ、運動はあまり得意ではない。
あと、勉強は駄目で何度か先生達を困らせたほどだ。
行動力はあるのだが、僕と朱里を誘った時の様な無理やり喫茶店『白ねこ』に連れてくるところが、力ずくな感じがして苦手だ。
「お願い賢! 私達二人じゃ、今後の事件の解決は難しいの!」
手のひらを合わせて僕にお願いしてくるのは、探偵団の武術係の朱里。
黒帯盗難事件という正義が命名した事件を解決し、元々少し興味があったのと、その恩を感じて探偵団に入団した女子。
道場の娘で男子中学生にすら勝てる実力者。
あと、運動神経抜群で、何度か女子バスケクラブなどのメンバーが朱里を誘っては断られているのを見かけた事がある。
勉強の成績も平均程度と悪くはない。
別に苦手ではないが、正義と二人で追いかけてくるなら話は別だ。
「嫌だ! 僕は塾通いで忙しいんだ!」
放課後。
塾。
「あー。今日も疲れた……」
「賢。今日も大変だったんだな」
塾に着いた途端ぐったりした僕。
その様子を見てなのか、塾友達の鈴井陸(すずい りく)がそう声をかけてきた。
小学校は別だが、五年生の時からの塾仲間で良く話す仲だ。
「あはは、いっその事、何かあった時だけでも手助けすればいいのに」
陸に続いて声をかけてきたのは、同じく五年生の時からの塾仲間で、良く話す仲の上町葵(うえまち あおい)。
「手伝いだなんて冗談じゃない。学校以外は塾で忙しいってのに、手助け何てするんじゃなかったよ」
ぐったりしたまま僕はそう返す。
元々は、僕も陸も葵も二十人程度の生徒がいる『野原塾』という小学生向けの学習塾に通っていた。
僕達三人の成績は野原塾では常にトップ。
だが、生徒の学力の差が僕ら三人とそれ以外で二極化が深刻化。
上のレベルに合わせると下が授業についていけず、下のレベルに合わせると上が退屈するという問題が発生する。
かといって中間くらいのレベルにするとどっちからも不満の声が上がるので僕達が六年生に上がるタイミングでレベル分けが行われた。
とは言っても、野原塾は教室が一つしかない。
ではどうやってレベル分けをするのかというと、野原塾から徒歩で行ける範囲の近場にある別の塾と経営統合し、お互いの生徒を学力で分けられるよう交換するという方法がとられた。
野原塾と経営統合した塾の名前は谷口塾。
野原塾の野原塾長と谷口塾の谷口塾長は昔からの知り合いらしく、割とすんなりと経営統合は上手くいったらしい。
経営統合後、親会社のグループ名である『葛西(かさい)グループ』に吸収合併となり、それぞれの塾の名称が変更となった。
元々野原塾だった建物は『葛西一般塾』で、通称は『一般塾』。
元々谷口塾だった方の建物は『葛西上級塾』で、通称は『上級塾』という。
「はぁー。不安だ」
と、陸は緊張したような表情を見せる。
「どうした? ランキングが気になるのか?」
上級塾は定員が十名で、僕らは学力試験によるランキング付けで十番以内に入り、一般塾と比べてレベルの高い授業を受けている。
とは言ったものの、今上級塾にいるからと言って油断はできない。
この塾には定期テストがあり、成績によって一般塾の上位成績者と交代になる。
生徒同士の競争力を高める効果があるのかもしれないが、僕はあまり好きではない。
「当たり前だよ。俺は前回の定期テストで十位。あと一つ順位が落ちたら一般塾送りだぞ」
この『一般塾送り』という言い方が苦手だ。
周りも言ってるから僕も合わせてはいるのだが、なんだか島流しみたいな雰囲気がして好きじゃない。
「僕が勉強見てたんだから大丈夫だって。よっぽど他が追い上げでもしない限り、十位より下には落ちない」
僕は、塾が終わった後に陸と葵の勉強のサポートをしている。
最初は野原塾で一番の成績を取っていた僕に勉強を教えて欲しいと頼まれ、人に教えるのも勉強になると引き受けたのがきっかけだった。
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