宮川小たんてい団

吉善

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塾テスト不正疑惑事件

③ 賢だけの上級塾

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 翌日の放課後。
 上級塾。
 僕は二人を、陸と葵を待っていた。
 いつものように、探偵団に誘われて追いかけ回されているのをいじるような、あの言葉が聞こえない。
 それどころか、姿さえ見えない。
 塾さえ終わればまた会える。
 だが、そういう問題ではない。
 今、この場に、いないことが問題だ。
 二人の夢。
 獣医と小児科医。
 その夢が断たれたような気がした。
 低いレベルに合わせた今の一般塾の勉強では、あまりに教育不足。
 僕が勉強を教えたとしても、県内の最難関中学に合格するのは厳しい。
 せいぜい、二番手か三番手の中学校までだろう。
 定期テスト前日に、僕の家に三人で集まってテスト対策の勉強をしたことを思い出す。
 二人とも、僕のレベルについてくるため必死で勉強していた。
 それに、勉強していた時に陸は鞄の中身を全て出していた。
 もちろん、解答付き問題用紙なんて入っていなかった。
 それに、葵の座っていた机、いや、全ての机の中は基本使わないため空になっているはずだ。
 しかし、今回の不正疑惑が起こった。
 何かの間違い、誤解があったのかもしれない。
 となると、次の定期テストで高得点を叩き出して谷口塾に復帰させる必要がある。
 僕が勉強を教えれば、まず谷口塾に復帰させられる可能性はある。
 ……と、思っていた。
 問題はここからだった。
 各々に答案は返ってこず、代わりに氏名と点数を記載したランキング表が書かれた紙が張り出されたのだ。

「答案が返ってこないっていうのはどういう事ですか?」

 上級塾担当の塾講師、三井先生にそう問いかける。
 だが、明確な答えは返ってこなかった。

「間違った個所を復習して次に活かしたいって事か? すまないが、今回は諦めてくれ」

 といった言葉くらいしか返ってこない。
 不正を行うとは思えない二人の不正疑惑。
 入っていなかったはずの鞄からの解答付き問題用紙。
 空のはずの机の中からの解答付き問題用紙。
 そして、各々の点数を隠すかのような、答案の返却無し。
 数々の不明点が、僕の心にある疑念を抱かせた。
 『陸と葵ではなく、塾講師側が定期テストに不正を行ったのでは? もしそうなら、犯人を特定し、証拠を押さえなければ、上級塾に戻れたとしても、同じ事が再び起きるのではないか?』と。



 塾終了後。

「それで、俺達たんてい団に捜査依頼をしにきたって訳だな」

 僕の目の前にいるのは、宮川小探偵団の団長、正義。

「塾のテストで不正なんてあるのかな? それの先生達が犯人だなんて」

 正義の隣には、同じく宮川小探偵団の武術係、朱里。

「まあ、二人が言いたいことも分かる。僕も正直、まだ半信半疑だ。でも、調査する価値はあると思っている」

 僕達三人が今いるのは、正義の母親が経営している喫茶店『白ねこ』。
 正義に探偵団に誘われた時と、朱里が犯人として疑われた黒帯盗難事件の解決後の打ち上げで使った場所だ。
 その店内で一番奥にある四人掛けテーブル。
 少なくとも正義はいるだろうと思っていたが、ちょうど僕を探偵団に誘うための作戦会議をしていたらしく、二人は揃っていた。

「でも、俺と朱里はその塾に通ってないぞ? こっそり潜入するってことか?」

 正義の疑問に、僕は一枚の紙を見せて答える。
 それは、一般塾のチラシだった。

「一ヶ月間の体験入学が出来る。僕は上級塾に通っているから一般塾での情報収集は難しい。二人には僕の代わりに一般塾に行って、情報を集めて欲しい」
「情報……。例えばどんな情報が良いかな?」

 差し出されたチラシを見ながら質問する朱里に、僕は何秒か考えこむ。

「テストの点数が不自然な人がいないか探して欲しい。予想よりも高得点……いや、低い点数になっている生徒がいるはずだ」

 不正疑惑で一般塾送りにされた二人の分、上級塾には席が空く。
 仮にその席に特定の人を座らせようとしたとすると、その人は本来の点数より高得点になり、上級塾に行く。
 その分、本来の点数よりも低い点数を付けられた人が一般塾に残っているはずだ。
 そんな人がいれば、点数の調整があった根拠になる。

「事情は分かった。朱里、一般塾に潜入捜査、いい?」
「うん。いいよ」

 朱里の意見を聞いてから、僕の目を見て首を縦に振る正義。
 それを見て「それじゃあ、明日塾が終わった後に報告お願い」と言って立ち去ろうとした時、正義は僕を引き留めた。

「ちょっと待った」
「どうした? 捜査に必要な情報まだあるかな?」
「いや、それは一旦いいや。それより、賢。なんか怒ってる?」

 その言葉に朱里は驚いた表情をした。
 どうやら、正義は気付いていて朱里は気付いていなかったようだ。
 なんだか心を見透かされたような気分になりながらも、僕は質問に答える。

「……そうだね。正直、心穏やかではないね」
「そんなに大事な友達なのか?」

 ふと、二人の顔が頭に浮かんだ。
 それぞれの夢を語る、二人だ。

「ああ。陸は獣医。葵は小児科医になる夢がある。それを応援したいんだ」
「そうか。それじゃあ、頑張って捜査しなきゃだな!」

 二っと笑う正義に、僕は軽く手を振って喫茶店『白ねこ』を後にした。
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