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塾テスト不正疑惑事件
⑥ 友達、葵と朱里
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私、朱里と正義、賢、葵、陸は、その後上級塾の前にいた。
陸と葵は捜査が一段落したからか、賢の顔を見て少し嬉しそうに駆け寄っていった。
賢も私と正義には見せたことのない朗らかな表情を見せる。
「賢、今日はもうこれで捜査終了にするか?」
気を使ってなのか、正義はそう提案した。
だけど、賢は表情を私達に向けるいつもの顔に戻す。
「いや、もう一人話を聞きたい人がいる。もう帰ってしまったかもしれないが……」
「もしかして、日野ちゃん?」
周囲を見回す賢に、葵がそう聞いた。
確か、不正疑惑の会った日に葵が友達になると声をかけて隣の席に座った女子だ。
その人なら何か知っているかも入れないという狙いで話を聞きに行きたいのだろう。
「あ、いた」
葵が指さした先には、綺麗な長い黒髪をした背の高い、一見モデルのような女の子がいた。
しかし、どうも様子が変だ。
何やらスーツを着た男の人と言い争っているようだ。
何かと思い皆で近付いてみると、どうやら相手は父親で、テストの点数について言い合いになっているようだ。
「何だその点数は? まさかまた二位じゃないだろうな?」
「はいはい、二位よ二位。私だって頑張ってるし、これでも成績良い方なの!」
「二位じゃ駄目なんだ。そんなんじゃ最難関中学の推薦はもらえないぞ」
あ、いけない。
とっさに私は日野さんとその父親の間に割って入った。
父親が日野さんに平手打ちをしようとしたからだ。
ばしっ、と平手打ちしようとした父親の右手を自分の右手で掴み、左手は父親の右肩を掴む。
そのまま右に引っ張って父親の体を横向きにさせ、左手ではあまり抵抗できないようにした。
「一位を取れなかったからって、子供に平手打ちなんてしちゃ駄目ですよ」
「な、なんだお前は?」
「佐那原朱里。日野さんの友達の……友達です!」
私は体を右向きにし、父親の右足近くに自分の左足を踏み込む。
そして左足を思い切り後ろに引き、サッカーボールを蹴り飛ばす要領で父親の右足を蹴り飛ばし、同時に掴んでいた右肩と右手を左へ引く。
父親は蹴り飛ばされた右足と引っ張られた上半身の勢いで、腰回りを中心に四分の一回転。
そのまま地面へと落ち、尻もちをついた。
「明日の朝まで、日野さんはこちらで預からせていただきます」
尻もちをつく父親とつかせた私を見て、日野さんは呆然としていた。
その日の夜。
佐那原家。
朱里の部屋。
「いきなり驚かせちゃって、ごめんね」
「ううん、いいの……」
私はあの場から、連れ去るかのように、日野さんを家に連れて帰ってきた。
あのままじゃ、私が立ち去った後また平手打ちだの何だのと暴力を振るうだろう。
お父さんからの言いつけで、暴力を振るわれている人、特に子供を見つけたら家に呼び、事情を聞いて必要だとお父さんが判断すれば一家の武術家メンバー総出で暴力をふるう人物に『話をつけにいく』ことになっている。
ちなみに、明日は土曜日で学校は休みのため、お父さんだけではなく私と兄達三人も連れた計五人で、である。
外泊の許可は、電話で日野さんの母親に連絡を取っている。
佐那原家で夕食を取り風呂に入って、後はもう寝るだけといった状況だ。
「明日、お父さんとお兄ちゃん達と私で日野さんの家に行くから、その時に帰れるよ」
「分かった。……あの、佐那原さん」
「朱里って呼んで。私も美月って呼んで良いかな?」
「うん、良いよ。ねえ、朱里、何で私の事助けてくれたの? それに、私の事知ってるみたいだったし……」
これは嘘ついたり隠し事するのは良くないな。
そう考え、私は事情を話した。
宮川小たんてい団の事。
塾テストの不正疑惑で捜査している事。
葵の隣に座っていた美月なら何か知っているかもしれないという話になった事。
それで声をかけようとしたところで父親と口論になっている所を見かけた事だ。
「そうなの。でも、だからって、今日、初めて会う私を……?」
「だって、葵の友達でしょ?」
「え、あ、うん……」
美月は歯切れの悪い返事をしてきた。
まだそんなに親しくないからそんな返事になったのだろうか?
そんなことを考えていると、美月は私の目を見ながらこう切り出した。
「朱里、私、女の子の友達あんまりいないの」
「そうなんだ。私も一緒。家の隣、見たと思うけど、私、武術道場の娘で男の子と接することが多いからかな、あんまり女の子と接することが少なくて女の子の友達できなかったんだよね。今も良く話すのは正義と賢だし」
「私は男の子に良く話しかけられるから、女の子にはあんまり好かれないみたい。だから、朱里……。友達になってほしいの」
私はふふっと少し笑って「もう友達じゃん」と返した。
「ありがとう」
美月も、少し笑顔を浮かべてそう返した。
「今日はもう寝ようか。明日はお父さん達と話つけに行くんだし」
私はそう言って、予備の布団に入った美月を確認してから電気を消した。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
それは、布団に入ってから五分位たった時の事だった。
うっ、ぐすっ、と、小さくだが泣くような声が近くから聞こえてきた。
起き上がって電気を点けると、美月の目には涙が浮かんでいた。
「美月、どうしたの?」
「朱里……。朱里、私ね……」
美月は、絞り出すかのようにこう言った。
「友達を……。葵を、一般塾送りにしたの」
陸と葵は捜査が一段落したからか、賢の顔を見て少し嬉しそうに駆け寄っていった。
賢も私と正義には見せたことのない朗らかな表情を見せる。
「賢、今日はもうこれで捜査終了にするか?」
気を使ってなのか、正義はそう提案した。
だけど、賢は表情を私達に向けるいつもの顔に戻す。
「いや、もう一人話を聞きたい人がいる。もう帰ってしまったかもしれないが……」
「もしかして、日野ちゃん?」
周囲を見回す賢に、葵がそう聞いた。
確か、不正疑惑の会った日に葵が友達になると声をかけて隣の席に座った女子だ。
その人なら何か知っているかも入れないという狙いで話を聞きに行きたいのだろう。
「あ、いた」
葵が指さした先には、綺麗な長い黒髪をした背の高い、一見モデルのような女の子がいた。
しかし、どうも様子が変だ。
何やらスーツを着た男の人と言い争っているようだ。
何かと思い皆で近付いてみると、どうやら相手は父親で、テストの点数について言い合いになっているようだ。
「何だその点数は? まさかまた二位じゃないだろうな?」
「はいはい、二位よ二位。私だって頑張ってるし、これでも成績良い方なの!」
「二位じゃ駄目なんだ。そんなんじゃ最難関中学の推薦はもらえないぞ」
あ、いけない。
とっさに私は日野さんとその父親の間に割って入った。
父親が日野さんに平手打ちをしようとしたからだ。
ばしっ、と平手打ちしようとした父親の右手を自分の右手で掴み、左手は父親の右肩を掴む。
そのまま右に引っ張って父親の体を横向きにさせ、左手ではあまり抵抗できないようにした。
「一位を取れなかったからって、子供に平手打ちなんてしちゃ駄目ですよ」
「な、なんだお前は?」
「佐那原朱里。日野さんの友達の……友達です!」
私は体を右向きにし、父親の右足近くに自分の左足を踏み込む。
そして左足を思い切り後ろに引き、サッカーボールを蹴り飛ばす要領で父親の右足を蹴り飛ばし、同時に掴んでいた右肩と右手を左へ引く。
父親は蹴り飛ばされた右足と引っ張られた上半身の勢いで、腰回りを中心に四分の一回転。
そのまま地面へと落ち、尻もちをついた。
「明日の朝まで、日野さんはこちらで預からせていただきます」
尻もちをつく父親とつかせた私を見て、日野さんは呆然としていた。
その日の夜。
佐那原家。
朱里の部屋。
「いきなり驚かせちゃって、ごめんね」
「ううん、いいの……」
私はあの場から、連れ去るかのように、日野さんを家に連れて帰ってきた。
あのままじゃ、私が立ち去った後また平手打ちだの何だのと暴力を振るうだろう。
お父さんからの言いつけで、暴力を振るわれている人、特に子供を見つけたら家に呼び、事情を聞いて必要だとお父さんが判断すれば一家の武術家メンバー総出で暴力をふるう人物に『話をつけにいく』ことになっている。
ちなみに、明日は土曜日で学校は休みのため、お父さんだけではなく私と兄達三人も連れた計五人で、である。
外泊の許可は、電話で日野さんの母親に連絡を取っている。
佐那原家で夕食を取り風呂に入って、後はもう寝るだけといった状況だ。
「明日、お父さんとお兄ちゃん達と私で日野さんの家に行くから、その時に帰れるよ」
「分かった。……あの、佐那原さん」
「朱里って呼んで。私も美月って呼んで良いかな?」
「うん、良いよ。ねえ、朱里、何で私の事助けてくれたの? それに、私の事知ってるみたいだったし……」
これは嘘ついたり隠し事するのは良くないな。
そう考え、私は事情を話した。
宮川小たんてい団の事。
塾テストの不正疑惑で捜査している事。
葵の隣に座っていた美月なら何か知っているかもしれないという話になった事。
それで声をかけようとしたところで父親と口論になっている所を見かけた事だ。
「そうなの。でも、だからって、今日、初めて会う私を……?」
「だって、葵の友達でしょ?」
「え、あ、うん……」
美月は歯切れの悪い返事をしてきた。
まだそんなに親しくないからそんな返事になったのだろうか?
そんなことを考えていると、美月は私の目を見ながらこう切り出した。
「朱里、私、女の子の友達あんまりいないの」
「そうなんだ。私も一緒。家の隣、見たと思うけど、私、武術道場の娘で男の子と接することが多いからかな、あんまり女の子と接することが少なくて女の子の友達できなかったんだよね。今も良く話すのは正義と賢だし」
「私は男の子に良く話しかけられるから、女の子にはあんまり好かれないみたい。だから、朱里……。友達になってほしいの」
私はふふっと少し笑って「もう友達じゃん」と返した。
「ありがとう」
美月も、少し笑顔を浮かべてそう返した。
「今日はもう寝ようか。明日はお父さん達と話つけに行くんだし」
私はそう言って、予備の布団に入った美月を確認してから電気を消した。
「おやすみ」
「おやすみなさい」
それは、布団に入ってから五分位たった時の事だった。
うっ、ぐすっ、と、小さくだが泣くような声が近くから聞こえてきた。
起き上がって電気を点けると、美月の目には涙が浮かんでいた。
「美月、どうしたの?」
「朱里……。朱里、私ね……」
美月は、絞り出すかのようにこう言った。
「友達を……。葵を、一般塾送りにしたの」
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