宮川小たんてい団

吉善

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花の妖精と花壇荒らし事件

② お花の妖精さん

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 正義が少し、いや、大分、いや、かなりバカだった事は前から知っていた。
 だが、まさかやらかすタイプのバカだとは知らなかった。
 今思うと、正義には少し強引な所がある。
 例えば、私、朱里と賢をたんてい団に誘った時も少し強引だった。
 私には、いきなり『俺の助手になってくれよ』と声をかけてきた。
 賢には、一組と二組合同での図書室での読書の時間に先生に注意されてまで声をかけていた。
 行動力があると言えば聞こえは良いのだが、車で言うところのアクセル全開。
 私か賢、できれば両方に前もって声をかけ、これまた車で言うとアクセルを緩めるなりハンドルを切るなり、必要ならブレーキを踏むといった調整をして、問題にならない範囲で宣伝できたかもしれない。
 正義の行動力は、良い点でもあり、悪い点でもあるのだ。
 うーん、困った。



 私達三人は、校長室から出た。
 やっぱり、子供だけで探偵活動なんて難しいのだろうか?
 賢の方を向くと、難問に頭を抱えるかのような表情で下を向いていた。
 さて、これからどうするか……。
 と、私も考えこもうかとしたところで、少し遠くからパタパタと足音を立てながら誰かがこちらに向かってくるのに気が付いた。
 一年生だろうか、とても小さな女の子だった。

「あの、たんてーのひとですか?」
「ん? そうだよ。俺達は宮川小たんてい団。困っている人の力になる、たんてい団だよ」

 声をかけられ、年下相手だからか、優しい口調で話す正義。
 まだ回収できていなかったチラシをどこかから手に入れてきたその女の子の名前は土屋花(つちや はな)ちゃん。
 一年一組の女の子で、宮川小学校の美化委員の一員だそうだ。
 なぜ声をかけたかというと『おはなのようせいさん』を見つけて欲しい、との事だった。

「お花の妖精さん?」
「あ、懐かしい。絵本であったよね『おはなのようせいさん』。花壇とかが荒れてお花が悲しんでいると、どこかから現れて花壇を整備してくれる妖精だよ」

 首をかしげる正義に、私はそう解説した。

「おいおい、絵本のキャラクターを探そうっていうの? 『いなかったね。他の学校に行ったのかもね』みたいな感じになるのかオチじゃないか?」

 花ちゃんに聞こえないよう、私の耳元で喋る賢。
 確かに、絵本のキャラクターを探して欲しいと言われても無茶な話だ。
 どうしようか、と考えていると、正義はいつの間にか花ちゃんと同じ目線になるようしゃがんでいた。

「もしかして花ちゃん、誰も花壇を綺麗にしていないはずなのに、勝手に花壇がきれいになったりとかしてない?」
「うん、きれいになってた!」

 ……へ?

「正義、どういうこと? っていうか、どうして分かったの?」
「なんかこっちに向かってくる時からウキウキした感じだったから、お花の妖精さんの証拠か何か見つけてたのかなー、と」

 少し驚いた。
 そういえば、正義は黒帯盗難事件で濡れ衣を着せられて少し泣きそうになっていた私に『もう泣くなって』と声をかけていた。
 それに、塾テスト不正疑惑事件でも、友達が不正疑惑をかけられていて少し怒っていた賢に気付いて声をかけていた。
 私もその場にいたが、私は全く気付かなかった。

「花ちゃん。もしかして、お花の妖精さんと友達になりたいのかな? でも、見つからないから困っているのかな」
「うん。おはなのようせいさんと、おともだちになりたい」

 花ちゃんは元気にうなずく。

「よし、花ちゃん、俺達たんてい団をその花壇まで案内してくれないかな? 実際に花壇を見てみたい」
「ちょ、ちょっと待った、正義」

 今度は正義に耳打ちする賢。
 それを私は耳を澄ませる。

「花の妖精なんて探してどうするんだ? 美化委員以外の誰かが勝手にやったってところだろう」
「だったらそれで良いじゃないか。仕事でもないのに花壇を整えてくれる心優しい人が見つかれば、その人が『お花の妖精さん』だよ。花ちゃんもその人が見つかれば満足するって。それに……」

 正義は賢と私の方を向く。

「困っている人を無視して、宮川小たんてい団は名乗れないだろ」
「正義、僕らはついさっき、活動を禁止されたじゃないか」

 正義の肩を掴んで止めようとする賢。
 だが、正義は二っと笑った。

「大丈夫。ポスター貼ったりチラシ配ったりは禁止されたけど、それ以外は禁止されて無い。『困っている人を見捨てろ』だなんて言われたか?」

 そうだった。
 正義には、こういう良い所があるんだった。
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