宮川小たんてい団

吉善

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花の妖精と花壇荒らし事件

③ 花壇荒らし

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 人の心が読める。
 僕、賢はそんな非科学的な話を信じるつもりはない。
 だが、正義はそれに近い能力を持っているのではないかと思う瞬間がある。
 一言で言うなら『洞察力』だ。
 花ちゃんという一年生の話も、おそらくだが仕草や喋り方などから『何か』を見つけたと推測し、それを前提に聞いていたのだろう。
 今思えば、塾テスト不正疑惑事件では、塾の友達である陸と葵に不正疑惑がかけられた時、僕は心穏やかではなく正義にそれを見抜かれていた。
 不可能な話ではない。
 だが、正義のそれは精度が高い気がする。
 まだ正義と深く関わるようになって日が浅いためはっきりとしたことは言えない。
 だが、今後はそれが少しずつ分かってくるだろう。

 僕ら宮川小たんてい団が花ちゃんに案内してもらい花壇に到着すると、全員が声を上げた。
 それぞれ若干のセリフの違いはあったが、意味としてはおおむね一致している。
 『花壇が荒らされている!』だ。
 縦一メートル、横二メートル程度の花壇。
 その周囲に花と土が散乱し、花壇の中には穴が開いていた。

「な、何なんだこれ。花の妖精が花壇を綺麗にしたはずじゃなかったのか……?」

 動揺を隠せないでいる正義。

「花は新しい感じだな。並べられてる様子もない。すくなくとも、植え替えの途中ではないな」

 散乱した花の近くでしゃがみ観察し、僕はそうつぶやく。
 いや、待て、今は花壇よりも、それよりも……。

「うわあああぁぁーーーん!!」

 花ちゃんがその場で立ち尽くし、号泣している。
 朱里が駆け寄るが、その声は収まる気配が無い。

「おはながー! おはなのようせいさーん!!」

 大声を上げて泣く花ちゃん。
 と、その時だった。

「いったいどうしたの?」
「なんだなんだ?」

 花ちゃんの泣き声を聞きつけてなのか、二人の男子生徒が近くに駆け寄ってきた。

「おい、どうした? なんだこの花壇は、お前達がやったのか?」

 さらに、先ほどまで校長室で一緒だった松本先生まで現れた。
 今事件の現場となる花壇は、一時騒然となった。



「つまり、だ。探偵団の三人は、一年生の花ちゃんと花壇を見に来て、それが荒らされているのを見つけた、と」

 花ちゃんが落ち着いてきた頃、松本先生はそう状況をまとめ始めた。

「はい、そうです」

 と、正義は僕らの代表として答える。

「そして、花ちゃんはそれを見て大泣きし、永屋と木立(きたち)はその声を聞いて様子を見に来たと言う訳か」

 永屋、木立と呼ばれた男子生徒は、それぞれ『そうです』と答えた。
 僕は二人を知らないが、正義と朱里の事を知っていたようなので、六年一組の生徒と思われる。
 正義に聞いてみると、よく話している五人グループのうちの二人なのだという。
 そしてもう一人、この場には大人の男性がいた。
 用務員の長谷川(はせがわ)さんだ。
 花壇の花を主に管理しているのはこの長谷川さん。
 松本先生は長谷川さんが植え替えか何かで花壇の花を取り土を掘り起こし、それを僕達が花壇荒らしと勘違いしたのだと考えたようで、電話で長谷川さんを呼び出したのだ。

「いえ、私ではありません。朝の時間に花壇の花を植え替える予定はありましたが……。それは、誰かが代わりにやったようで……」
「誰かが代わりに?」

と、松本先生は首をかしげる。
 そりゃそうだ、無断で花壇を荒らす人物がいるならまだ分かるが、無断で花を植え替える人がいるなど聞いたことが無い。

「あの、長谷川さん。朝、花を植え替える予定と言いましたが、詳しく聞いていいですか?」
「え、ああ、いいよ。今日の朝早く、枯れてしまった花を新しい花に植え替える予定だったんだ。それと、肥料の追加も。枯れた花を取り除いて、花壇から土をある程度掘り返したところで、肥料を持ってくるのを忘れたことに気が付いて花壇のところを離れたんだ。そして戻ったら、土が花壇に戻されて、新しい花も植えられていたんだ」
「は、はぁ……」

 詳細を聞いて、松本先生はさらに首をかしげる。

「ま、まあ、とにかく。花は花壇から抜かれただけで、ちぎったり折れたりしている様子もない。私も手伝うから、ここにいる全員で花を植え直そう」

 松本先生の声かけに、僕はとっさに花壇をスマートフォンのカメラで撮った。
 花壇の中の、不自然な穴が気になったからだ。



「そういえば、正義。お前、職員室で朝の持ち物チェックの話を聞いていなかったのか?」
「へ? 職員室で? 先生、何の話?」
「今朝お前を捕まえてポスターとチラシの回収を命じた後、ちょうど職員室で持ち物チェックをするべきかどうかという議題が上がってな……。最近、漫画やらゲームやらを持ち込む生徒が多いから……。その話をしていた時に、職員室の中を覗く生徒が目撃されたんだが……。あれは正義ではなかったのか」

 あれは誰だったのだろうか、と考えている様子で、松本先生は一瞬手を止めて上を向いた。
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