宮川小たんてい団

吉善

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花の妖精と花壇荒らし事件

④ たんてい団の放課後

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 お花の妖精さん。
 俺は読んだことが無いし、読んだことがあったとしても多分信じない、絵本のキャラクター。
 だけど、信じる一年生がいるなら、見つけ出さなければいけない。
 あと、その子を悲しませる花壇荒らしがいるなら、その犯人も見つけ出さなければいけない。
 どっちを先に見つけるべきだろうか?
 妖精? 犯人?
 それとも……。



 放課後。
 俺、正義と賢と朱里は花壇の前に来ていた。

「また花壇を見に行くの? 僕、塾に行かなきゃいけないんだけど」
「私も道場。塾に体験入学していた分を取り戻さなきゃいけないのに」

 賢と朱里がそれぞれ愚痴っている。
 とはいえ、昼休みは花壇を直すのに時間を使ってしまい、現場をちゃんと見れていなかった。
 何か見落としがあるかもしれない。
 そう考え、俺は二人を呼んで少しだけ花壇を見に来たのだ。
 花壇では、用務員さんが水やりをしていた。

「長谷川さん。花壇荒らしの事で何か見ていないか聞き込みしたいんですけど、今大丈夫時間ですか?」

 と、俺は声をかける。

「ああ、いいよ。何か聞きたいことでもあるのかい?」
「はい。朝早い時間、誰かが代わりに花を植えたようですけど、その時に何か気付いた事ってありましたか?」
「気付いた事ねぇ……。あ、昼休みが終わってから気付いたんだけど、少なくとも、やったのは美化委員の子ではないだろうね。今日、花の植え替えの時に肥料の追加をするって話を美化委員の子達に伝えていたんだけど、それがされてないからねぇ……」

 確かに、美化委員の子が親切心でやった事なら、肥料の追加もやるはずだ。
 花の妖精さん候補からは外れる。
 ん? 美化委員?

「長谷川さん、一年生の美化委員の花ちゃんって子。朝早くに勝手に花が植えられていたの、何で知ってたか分かりますか?」

 俺が聞こうとする前に、後ろにいた朱里が長谷川さんにそう質問した。

「ああ、私が花が植えられているのに気付いた後、花ちゃんが新しい花を見に来たんだよ。今日新しい花を植えるのは美化委員の子は全員知ってるからね。それを見たくて、朝に花壇を見に来たんだ。その時に、勝手に花が植えられたって話をしたら『お花の妖精さんが植えたんだ』って大喜びしてたよ」

「なるほど、だから花ちゃん知ってたのか……。そういえば長谷川さん、さっきから誰か探してます?」

 まるで心の中を見抜かれたかのように、長谷川さんは驚いた表情をした。

「え、なんでそれを……」
「さっきから、俺達三人の後ろの方をチラチラ見てる気がして。誰か用事で呼び出したいなら、代わりに呼んできましょうか?」
「いやいや、大丈夫。……まあ、なんだ。昼休みの時間に君達三人の他にいた男の子二人がいただろう」
「ああ、永屋と木立ですね。俺と同じクラスです。あの二人が何か……?」
「どっちがどっちかは分からないんだけど、片方は放送委員だよね」
「放送委員は木立君の方だね。給食の時間『放送委員行かなきゃ』みたいな事言ってた」

 と、朱里。
 言われてみれば、確かに言っていた気がする。
 永屋は給食の時間いつもいるから、放送委員ではない。

「そうか、あの子木立君っていうのか。朝早くに放送室の中に入っていくのを何度も見ててさ。最近、放送室に私物の持ち込みが多くて『あまり私物を持ってこないように』って注意したんだ。それでその後、持ち物チェックがあったって聞いたから、もう少し早く言っておけばなって思ってて……」

 と、ここで、賢が時計を見ながら「そろそろ行かなきゃ」と行ってきた。
 仕方ない、今日はここで捜査切り上げだ。



 今日の捜査は切り上げになった。
 だが、ある意味、俺の今日の大変さはここからだった。
 俺は朱里に連れられ、というか連行され、佐那原道場にやってきていたのだ。
 どうやら、黒帯盗難事件の後も俺は佐那原道場に弟子入りしている状態らしく、朱里が父親で師範の佐那原重里(さなはら しげさと)さんに『最近サボりまくっている畑中2号を連れてこい』と命じられているのだそうだ。
 ちなみに『畑中2号』とは俺のあだ名で、借りていた道着の元持ち主である畑中という名前の刺繡から由来している。
 佐那原道場に到着してから、それはそれは大変だった。
 まず、サボりまくったことに対して重里さんからお叱り。
 その後は基礎体力作りのために、走り込みと筋力トレーニング。
 さらに、技の型をこれでもかと言うほどみっちりと叩きこまれた。
 『今日の練習はここまで』という重里さんの声にほっとしたのもつかの間、今度は『すぐにシャワー浴びて家に帰って』と急かす朱里。
 まあ、道場にいる間着ていた服は借り物のTシャツと道着一式だから、ここでシャワーを浴びて学校にいる間着ていた服に着替えても別にいい。
 だが、疲れていて、わざわざそれを急かす朱里の様子に気付けなかった。
 今度は、家に帰る俺に朱里がついてきたのだ。
 『さあ、帰ろう帰ろう』と、自宅を出ながら言うという訳の分からない朱里の言動。
 ほとんど勢いに押されながら自宅、というより自宅の一階部分にある、俺の母さんが経営する喫茶店『白ねこ』に入る俺と朱里。
 すると、店内の一番奥には本来四人掛けであるところにテーブルと椅子を追加して六人掛けにした一番奥の席に賢がいた。
 いや、賢だけではない、塾テスト不正疑惑事件で一緒に事件を捜査した、陸、葵、美月もそこにいた。
 どうやら、喫茶店『白ねこ』の居心地の良さと俺の母さんがサービスするジュースが気に入ったらしく、塾の勉強の後ここで俺と朱里を生徒役、他の四人を先生役でちょっとした塾を開くことにしたらしい。
 賢が言うには『塾に通うくらい、教えるのも勉強になるから。あと、正義と朱里にも少しは頭を使えるようになって欲しいから』との事だ。
 知らなかった。
 二人が俺に秘密手こんな事を計画していたとは。
 こうして俺は、重里さんからの呼び出しと、自宅で待ち構えている上級塾メンバーという逃げられない状況で、肉体も頭脳も鍛え上げられることになるのだった。
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