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花の妖精と花壇荒らし事件
⑤ 正義修行計画
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正義修行計画。
俺、正義は知らなかった。
朱里が父親の重里さんに言われ正義を道場に再び通わせる事になり、それと同時に賢は『そろそろ陸と葵には人に教える立場をやらせてみたい』と考え始め、お互いにそれを相談しあったのがきっかけだそうだ。
日中は学校、放課後は道場での練習と上級塾メンバーとの勉強。
なかなかハードな日常になりそうだが、一応たんてい団としての活動が優先で放課後の時間帯にやることが無ければ道場と勉強が待っているという感じだ。
正直最初は驚いたが、これはこれで好都合かもしれないと俺は考えていた。
俺は団長なんだ。
朱里の強さ、賢の頭の良さを超える必要は無いと思うが、だからといって頼りきりになるのも良くない。
名探偵になるための修行だと思えば、これくらいは耐え抜かなければいけないんだ。
「よし。今日はここまでにするか」
小学生にしてはちょっと大人向けっぽいデザインのアナログの腕時計を目にして、賢はそう言った。
俺の目の前には、賢と陸がいる。
最初は生徒役が俺と朱里の二人に陸と葵が主に先生役として教え、上級塾でトップの成績上位である賢と美月がその補助として入る感じだった。
だが、徐々に俺の学力の無さが朱里との勉強スピードにずれを生じさせ、賢の提案で男女分けする事となった。
男子チームは生徒役で俺、主な先生役は陸、賢が補助。
女子チームは生徒役で朱里、主な先生役は葵、美月が補助。
といったチーム分けだ。
男女分けなら生徒役、主な先生役、補助がそれぞれ一人ずつになるため、分かりやすくやりやすいとの事だった。
「お、終わった……」
正直慣れない事が立て続けに起こって、俺は疲れがピークに達したところだった。
「それじゃあ、またね、正義」
との陸の声かけに、俺はテーブルに突っ伏したまま手を振る。
「教えるのって結構難しいね」
「そうね。先生達を尊敬しちゃう」
葵と美月はそう言いながら、朱里と手を振り合う。
そして、陸と葵と美月は喫茶店『白ねこ』を後にした。
しかし、賢と朱里は残ったままだった。
「あれ、二人は帰らないのか……?」
「何言ってるんだ、僕達は宮川小たんてい団だぞ? 事件の話をするに決まってるじゃないか。こっちは放課後の忙しい時間に花壇の所行ったんだ、疲れてるところ悪いけど、こっちにも付き合ってもらうよ」
「そうそう。事件の情報を整理しなきゃね」
賢は俺の向かい、朱里は俺の隣に座った。
事件、という単語に俺は疲れた体を起こす。
「……よし。もうひと踏ん張りするか」
「ふふっ。さすが団長」
賢は軽く笑いながら、ランドセルからルーズリーフを一枚取り出した。
午後の授業の休み時間や、塾での勉強が始まるまでの空いた時間で情報をまとめておいたのだという。
さすが、たんてい団の頭脳係だ。
賢のまとめでは次の通り。
花の妖精。
目撃した時間、早朝。
第一発見者、用務員の長谷川さん。
枯れた花を新しい花に植え替え、肥料の追加する予定だった。
枯れた花を抜いて土を花壇の外に出し、肥料を取りに花壇を離れた。
戻った時には、誰かが勝手に土を花壇に戻し新しい花を植えていた。
花壇荒らし。
目撃した時間、昼休み。
第一発見者、たんてい団、一年生の花ちゃん。
花の妖精を探すために花壇を見に行ったところ、花壇の花が抜かれ土も掘り返されていた。
掘り返された花壇には、不自然な穴が開いていた。
泣き出した花ちゃんの声を聞きつけ、六年一組の永屋と木立、六年一組担任の松本先生が様子を見に来る。
また、松本先生が用務員の長谷川さんを呼ぶ。
花はちぎれたり折れたりしておらず元に戻せる状態だったため、現在は元に戻されている。
花ちゃん。
一年生の女子生徒。
美化委員。
用務員の長谷川さんとは顔見知り。
長谷川さんから勝手に花壇が直されていた事を聞き『お花の妖精さん』がやったと考え、宮川小たんてい団に捜索を依頼。
長谷川さん。
用務員の男性。
美化委員の花ちゃんとは顔見知り。
花壇が直されていた件の第一発見者。
花壇荒らしの件で松本先生に呼び出されるが、無関係を主張。
長谷川さんが言うには『花壇が直されていた件に美化委員は関わっていない。花の植え替えの時に肥料を追加する予定だったと美化委員全員に連絡していたがそれがされていなかったため』とのこと。
また、放送室への私物持ち込みが多いと聞いていたため、早朝からよく放送室に出入りしている木立に対し『あまり私物を持ってこないように』と注意していた。
松本先生。
正義と朱里がいる六年一組の担任である女性の先生。
早朝、ポスター貼りやチラシ配りをする正義を捕まえ、回収を指示。
その後、職員室で持ち物チェックの話をしているところを廊下から覗き見された。
正義ではない。
さらに朝の会の時間に持ち物チェックをした。
また、昼休みに校長室に宮川小たんてい団を呼び出した。
その後、花ちゃんの泣き声を聞いて花壇の様子を見に来て花壇荒らしを目撃した。
永屋と木立。
正義と朱里がいる六年一組の男子生徒二人。
昼休みの時間、花ちゃんの泣き声を聞いて花壇の様子を見に来て花壇荒らしを目撃。
木立は放送委員で、朝早く放送室に出入りしている。
用務員の長谷川さんに『あまり私物を持ってこないように』と注意を受けていた。
「僕が知ってる情報ではこんなところだね。二人はこれを見て、足しておきたい情報はある?」
俺と朱里が見やすいよう、ルーズリーフを逆さにする賢。
「正義は? 何か気になる事ある?」
賢に話を振られ、俺は考える。
……何か、忘れている気がする。
何だ? 何か、言わなきゃいけない情報がある気がする。
花の妖精。
花壇荒らし。
花ちゃん。
長谷川さん。
松本先生。
永屋と木立。
……あ。
「……永屋だ。あいつ、朝の会で持ち物チェックやるの知ってた」
「永屋君が?」
と、朱里。
「ああ。ほら、永屋の席、俺の一つ後ろだろ? 持ち物チェックする直前に声かけられたんだ。『他にも何か持ってるなら隠した方が良い』って」
「……そうか。分かってきたかもしれない」
俺の話をルーズリーフに書き足したところで、賢はそう言った。
「え、賢、事件の真相分かったのか?」
思わず身を乗り出す俺に、賢は眉間にしわを寄せる。
「僕としたことが、ルーズリーフに誤った情報を書いてしまったようだ。この誤りが正しければ、犯人を捕まえることができると思うよ」
俺、正義は知らなかった。
朱里が父親の重里さんに言われ正義を道場に再び通わせる事になり、それと同時に賢は『そろそろ陸と葵には人に教える立場をやらせてみたい』と考え始め、お互いにそれを相談しあったのがきっかけだそうだ。
日中は学校、放課後は道場での練習と上級塾メンバーとの勉強。
なかなかハードな日常になりそうだが、一応たんてい団としての活動が優先で放課後の時間帯にやることが無ければ道場と勉強が待っているという感じだ。
正直最初は驚いたが、これはこれで好都合かもしれないと俺は考えていた。
俺は団長なんだ。
朱里の強さ、賢の頭の良さを超える必要は無いと思うが、だからといって頼りきりになるのも良くない。
名探偵になるための修行だと思えば、これくらいは耐え抜かなければいけないんだ。
「よし。今日はここまでにするか」
小学生にしてはちょっと大人向けっぽいデザインのアナログの腕時計を目にして、賢はそう言った。
俺の目の前には、賢と陸がいる。
最初は生徒役が俺と朱里の二人に陸と葵が主に先生役として教え、上級塾でトップの成績上位である賢と美月がその補助として入る感じだった。
だが、徐々に俺の学力の無さが朱里との勉強スピードにずれを生じさせ、賢の提案で男女分けする事となった。
男子チームは生徒役で俺、主な先生役は陸、賢が補助。
女子チームは生徒役で朱里、主な先生役は葵、美月が補助。
といったチーム分けだ。
男女分けなら生徒役、主な先生役、補助がそれぞれ一人ずつになるため、分かりやすくやりやすいとの事だった。
「お、終わった……」
正直慣れない事が立て続けに起こって、俺は疲れがピークに達したところだった。
「それじゃあ、またね、正義」
との陸の声かけに、俺はテーブルに突っ伏したまま手を振る。
「教えるのって結構難しいね」
「そうね。先生達を尊敬しちゃう」
葵と美月はそう言いながら、朱里と手を振り合う。
そして、陸と葵と美月は喫茶店『白ねこ』を後にした。
しかし、賢と朱里は残ったままだった。
「あれ、二人は帰らないのか……?」
「何言ってるんだ、僕達は宮川小たんてい団だぞ? 事件の話をするに決まってるじゃないか。こっちは放課後の忙しい時間に花壇の所行ったんだ、疲れてるところ悪いけど、こっちにも付き合ってもらうよ」
「そうそう。事件の情報を整理しなきゃね」
賢は俺の向かい、朱里は俺の隣に座った。
事件、という単語に俺は疲れた体を起こす。
「……よし。もうひと踏ん張りするか」
「ふふっ。さすが団長」
賢は軽く笑いながら、ランドセルからルーズリーフを一枚取り出した。
午後の授業の休み時間や、塾での勉強が始まるまでの空いた時間で情報をまとめておいたのだという。
さすが、たんてい団の頭脳係だ。
賢のまとめでは次の通り。
花の妖精。
目撃した時間、早朝。
第一発見者、用務員の長谷川さん。
枯れた花を新しい花に植え替え、肥料の追加する予定だった。
枯れた花を抜いて土を花壇の外に出し、肥料を取りに花壇を離れた。
戻った時には、誰かが勝手に土を花壇に戻し新しい花を植えていた。
花壇荒らし。
目撃した時間、昼休み。
第一発見者、たんてい団、一年生の花ちゃん。
花の妖精を探すために花壇を見に行ったところ、花壇の花が抜かれ土も掘り返されていた。
掘り返された花壇には、不自然な穴が開いていた。
泣き出した花ちゃんの声を聞きつけ、六年一組の永屋と木立、六年一組担任の松本先生が様子を見に来る。
また、松本先生が用務員の長谷川さんを呼ぶ。
花はちぎれたり折れたりしておらず元に戻せる状態だったため、現在は元に戻されている。
花ちゃん。
一年生の女子生徒。
美化委員。
用務員の長谷川さんとは顔見知り。
長谷川さんから勝手に花壇が直されていた事を聞き『お花の妖精さん』がやったと考え、宮川小たんてい団に捜索を依頼。
長谷川さん。
用務員の男性。
美化委員の花ちゃんとは顔見知り。
花壇が直されていた件の第一発見者。
花壇荒らしの件で松本先生に呼び出されるが、無関係を主張。
長谷川さんが言うには『花壇が直されていた件に美化委員は関わっていない。花の植え替えの時に肥料を追加する予定だったと美化委員全員に連絡していたがそれがされていなかったため』とのこと。
また、放送室への私物持ち込みが多いと聞いていたため、早朝からよく放送室に出入りしている木立に対し『あまり私物を持ってこないように』と注意していた。
松本先生。
正義と朱里がいる六年一組の担任である女性の先生。
早朝、ポスター貼りやチラシ配りをする正義を捕まえ、回収を指示。
その後、職員室で持ち物チェックの話をしているところを廊下から覗き見された。
正義ではない。
さらに朝の会の時間に持ち物チェックをした。
また、昼休みに校長室に宮川小たんてい団を呼び出した。
その後、花ちゃんの泣き声を聞いて花壇の様子を見に来て花壇荒らしを目撃した。
永屋と木立。
正義と朱里がいる六年一組の男子生徒二人。
昼休みの時間、花ちゃんの泣き声を聞いて花壇の様子を見に来て花壇荒らしを目撃。
木立は放送委員で、朝早く放送室に出入りしている。
用務員の長谷川さんに『あまり私物を持ってこないように』と注意を受けていた。
「僕が知ってる情報ではこんなところだね。二人はこれを見て、足しておきたい情報はある?」
俺と朱里が見やすいよう、ルーズリーフを逆さにする賢。
「正義は? 何か気になる事ある?」
賢に話を振られ、俺は考える。
……何か、忘れている気がする。
何だ? 何か、言わなきゃいけない情報がある気がする。
花の妖精。
花壇荒らし。
花ちゃん。
長谷川さん。
松本先生。
永屋と木立。
……あ。
「……永屋だ。あいつ、朝の会で持ち物チェックやるの知ってた」
「永屋君が?」
と、朱里。
「ああ。ほら、永屋の席、俺の一つ後ろだろ? 持ち物チェックする直前に声かけられたんだ。『他にも何か持ってるなら隠した方が良い』って」
「……そうか。分かってきたかもしれない」
俺の話をルーズリーフに書き足したところで、賢はそう言った。
「え、賢、事件の真相分かったのか?」
思わず身を乗り出す俺に、賢は眉間にしわを寄せる。
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