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アリスは何者で、僕は何者?
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「ふっ。他の魔物に襲われているかと思ったが、そうではなかったようだな」
「ごめんなさい。ジル先生…。すっごく、お腹空いちゃって…w」
「まぁ、仕方がないな。ところで、なぜお前はアズラーイールなんかといるんだ?」
「ん?アリスのこと?そんなに、珍しい種類なんですか?」
アリスは、僕の頭にしがみついて先生を見つめていた。怖がっているのか、僕の頭に爪をたてている。
いや、痛いよ~。アリスさ~ん、やめて…w毛根死んじゃうw
「アズラーイールは、神に似た種族だ」
「神…?それって、あの神様ですか…?」
「そうだ。アズラーイールは、驚異的な力を持っている。その力は一歩間違えれば、死を呼び寄せ世界を壊すと言われている」
「えっ!?そんな、ヤバイ種族だったの?で、でも、アリスのステイタス見た感じ、そんな怖そうな力は無かったよ?」
「ヒイラギ…私のステイタス見たの…?」
「あー、アリスは知らなかったか。僕には人のステイタスボートを見れるスキルを持っているんだ。ごめんな、勝手に見て」
「ううん、大丈夫。ちょっと、驚いただけだから」
ちょっと、驚いた割には爪の食い込みがえげつなくなってきている。
もうこれ、血とか出てない?大丈夫かな、僕の頭…。
「それで、このアズラーイールはどんな力を持っているのだ?我はあまり、アズラーイールについて知らんのでな教えてほしい」
「えーと、ちょっと待ってください。アリス、先生に君の力について教えてもいいかな?」
アリスは少し迷った顔をするが、コクリとうなずいた。そして、僕は先生にアリスのステイタスについて話した。
「なるほど、このアズラーイールは回復が特化した者なのだな」
「多分そうです。でも、今は疲れているのか自分を回復できないみたいで、血とかめっちゃ出てました。なので、僕が応急処置をしたという感じです」
先生は何かを考えるように座り込み、アリスと僕を交互に見た。
「アズラーイールよ、その手を離してやれ。そろそろ怪我してもおかしくない」
「…!?」
アリスはやっと僕の頭に爪を立てていたことに気づき、爪をしまった。
あー、先生ありがと~う。本当に、毛根死ぬかと思った。まず、その以前に頭から血を流して倒れるとこだった。
僕は先生に感謝を示して、深く頭を下げた。
ちゃんと、アリスは僕の腕の中にいるので、乗せたまま落っこちてはいない。大丈夫だ!僕って有能!
心の中で少しドヤった僕だが、先生にはお見通しのようで僕を蔑むような目で見てくる。
せっかく感謝したのに、そんな目で見なくても…。
「アリス様がいたって、本当か!?」
「ゴードンさん、どうしたんですか?そんなに慌てて」
走ってきたのか、額は汗で濡れていた。どうしてそんなに慌てているのか、僕は不思議に思った。
そして、ゴードンはアリスに気づくと、とても安心したような顔をした。
「アリス様…ご無事で何よりでございます」
「ありがとう、ゴードン。あのときは、すまなかったわね」
「いえ、アリス様は悪くありません。あれは、人間が…」
すると、ゴードンは僕を見て口をつぐんだ。多分人間について、悪口を言おうとしたが、僕がいて話せなくなったんだろう。
アリスとゴードンは、何か知り合いみたいだし、僕は席を外したほうがいいかな。
そして、僕はアリスを地面に置きその場をさろうとした。
しかし、アリスが僕のズボンを掴んで、はなさなかった。
「どうしたアリス?ゴードンさんと、なにかお話があるんだろ?僕は先生とあっちに行ってるから、好きにお話してくれ」
アリスは首を振った。僕はなぜ、そんなことをするのか、わからなかった。
ゴードンさんと、前に何かあったのかな?でも、さっきの会話を聞いた感じ、そんなに仲が悪いわけでもなさそうだ。ゴードンさんは、アリスを慕っているようだし…なんでだろう。
僕は先生をチラッと見つめた。先生は目を合わせようとしない。多分、『我に聞くな』と言っているのだろう。
えー、酷いな~。先生なら、多少は何か知ってるだろうに…。
「ヒイラギ…」
「ん?なんだ?」
僕はアリスを優しくなでながら、アリスの声に耳を傾けた。その時、ゴードンが話に割って入ってきた。
「おい、坊主。口の聞き方をわきまえろ。この方を誰だと…」
「やめて!」
「…!?アリス様…?でも、アリス様に失礼で…」
「そんなことは私が決める。ヒイラギは私の恩人なの。無礼は許さない」
「えーと…お二人さん、落ち着いて!もう、僕には何がなんだか、わからない!」
僕だけをおいて、話を進めないでくれ…。
「アリス、お前は一体なんなんだ?ゴードンさんとの関係は?」
「ゴードンとは前に戦場で出会った。その時、ゴードンは凄い怪我をしてて、あと少し遅かったら死んでたところを私が助けた」
「戦場ってことは、前に戦争があったってこと?」
「そう、100年くらい前に人間と魔物の戦争があったの」
「ちょっと待って、100年くらい前って、アリス今何歳なの!?」
「坊主、女性に年齢を聞くなど何と無礼な」
「え…だって…」
じゃあ、アリスとゴードンさんは100歳以上と言うことか…。いや待てよ、じゃあ先生は何歳なんだ?
僕は先生を見つめる。先生は僕を見て、去っていった。
後で教えてやる、ということだろうか。まぁ、後でのお楽しみにしよう。それよりも、まず片付けなければならない事はこっちだ。アリスが何歳…じゃなくて、何者なのか知らなければ。
「ごめん、アリス。話を続けてください」
「えっ、うん…で、私はゴードン以外の魔物も回復させ続けた。でも、ほとんどの魔物は死んでしまって、勝ったのは人間たちだった。私は力を使い果たし、長い眠りについてしまったの」
「俺たち魔物は、アリス様に救われたんだ。だから、アリス様とアリス様が大好きなこの森を長年守り続けていたんだ」
「へ~、なるほどね。だからこの森、自然がきれいなんだな」
「そして、私は最近目覚めたの。でも、辺りが前と変わっているし、結界のせいで魔物の気配がしなくて困っていた。その時、人間に襲われたの」
「さては、坊主が連れてきたってことじゃないだろうな?」
ゴードンは、僕を睨みつけた。それも、今にも殺しにかかってきそうな目で。
マジ…ここから逃げたい。なんでこんな神経削られるような空間にいなきゃいけないんだ…。
「シンは、やってないぞ!シンは、俺と初めて会ったんだぞ。俺が証言するぞ」
「満…」
なんて、友達思いのいいやつなんだ。今度、満にお礼をしないとな。
「でもな、お前と坊主が初めてあったのか、わからないだろ。どこから来て、どんなやつなのか。それがわからない今、こいつをここに置いておくのは危険だ」
確かに、僕はどうやってここに来たか自分自身でもわからない。周りからすれば、人間は前の戦争相手だし、不審に思っても仕方がないか。
「ゴードン、ヒイラギは私を襲った人間を倒してくれた。それだけで、彼を信じる理由になると思うの」
「そうやって、アリス様を味方にしてこの森をまた破壊しようとしているのです。また、犠牲者が出てしまう。ならば、人間はここには置いていけないのです!」
ごもっともな、意見だ。僕がここにいるだけで、誰かを不快にさせてしまう。怖がらせてしまう。ならば、僕はここではなく人間の世界に行ったほうが、みんなの為になるだろう。満たちとお別れするのは辛いが、これは流石に仕方がない。
「色々わかった。アリスはこの森や魔物の守り神的な存在ということ。魔物は人間を嫌っていること。僕はここにはいてはいけないこと。それが、わかった」
「ヒイラギ…?そんなことない!ヒイラギは他の人間とはちが…」
「いや、他の魔物はそうは思わないだろう。それに、僕はこの世界についてもっと知りたい。もっと、色々な景色を見に行きたい。だから、僕はここから出ていく」
アリスは僕の目を真っ直ぐに、見つめていた。そして、頑なに僕のズボンを掴んでいた。
ごめんな、アリス。ゴードンさんの、言うとおりなんだわ。
「シン…行っちゃうのか?俺が嫌いなのか?」
「いや、満のことは大好きだ。でもな…、仕方がないんだ」
本当はみんなと一緒にいたい。でも、そんな感情はもってはいけないんだ。これは、宿命。そうだそうだ。
僕は自分自身にそう言い聞かせた。でも、体は正直だ。僕の目には涙が溢れだした。
「シン…ここにいていいんだぞ!シンは、俺が守るんだぞ…だから…だから…行かないでほしいんだぞ…」
すると、満も泣き出してしまった。僕は満を強く抱きしめた。
ここに来てからの初めての友達と、こんな形でお別れだなんて…。
「満、ありがとう僕を信じてくれて。じゃあ、もう行くね」
僕は満の返事を待たずして、歩き出した。すると、アリスがまた僕のズボンを掴んできた。
アリスだから…。
「アリス…その手を離してくれ」
「いやだ。ヒイラギ…ここにいてほしい」
「だから言ったろ?僕は世界を知りたいだけだって!」
僕はアリスを持ち上げ、地面に下ろした。もう、誰かに止められて悲しくなるのは嫌なので僕は走った。遠くへ遠くへ走った。涙が止まらない。僕はこれで本当に幸せなのだろうか。自分の心に歯向かって、皆のためだからって…そんなのただの言い訳にすぎないのに…。どうして…どうして、こうなってしまうのだろう。また、お別れだなんて…。
すると、奥から何かが近づいて来た。よく目を凝らしてみると、ジル先生だった。
「先生、少しの間ありがとうございました。僕はもう、この森を出ます。世界を知りに行きます」
僕は精一杯の笑顔で先生に話しかけた。
「我はお前になんと言った?」
「何がですか…?」
質問しても、先生は何も答えてくれなかった。
先生は僕に何を言った…?僕に何を教えてくれた…?
僕はひたすら考えた。しかし、先生が求める答えは出てこなかった。
駄目だな…。先生に教えてもらったことさえ覚えてないなんて…。本当に、僕は駄目な人間…。だから神様は、僕にこんな人生を与えたんだ…。僕をこらしめるために…。…………あれ?人生…なんだか、引っかかる。思い出せ、思い出せ。これは先生が求めている答えかもしれない。あの日、僕は先生になんて言われた?何を怒られた?思い出せ、思い出せ!
その時、1筋の光がさしこんだ。
そうだ、先生はあのとき『これはお前の人生だ、誰かが決めていいものではない。お前がしたいことをすればいいだけのことだ。そうではないか?』って、言ったんだ。僕の人生は自分で決めなきゃ。
僕は先生を見つめる。先生は笑顔を向けてくれた。
「そうだ、シンお前の人生はお前が決めろ」
その言葉を聞くと、また涙が零れそうになった。しかし、僕は泣かない。もっと、強くなるんだから。自分で人生を決められるように。
「先生、僕に魔法を教えてください」
あの日、僕は強くなって皆を守ると決心した。今からその第一歩を踏み出すときだ。
「ごめんなさい。ジル先生…。すっごく、お腹空いちゃって…w」
「まぁ、仕方がないな。ところで、なぜお前はアズラーイールなんかといるんだ?」
「ん?アリスのこと?そんなに、珍しい種類なんですか?」
アリスは、僕の頭にしがみついて先生を見つめていた。怖がっているのか、僕の頭に爪をたてている。
いや、痛いよ~。アリスさ~ん、やめて…w毛根死んじゃうw
「アズラーイールは、神に似た種族だ」
「神…?それって、あの神様ですか…?」
「そうだ。アズラーイールは、驚異的な力を持っている。その力は一歩間違えれば、死を呼び寄せ世界を壊すと言われている」
「えっ!?そんな、ヤバイ種族だったの?で、でも、アリスのステイタス見た感じ、そんな怖そうな力は無かったよ?」
「ヒイラギ…私のステイタス見たの…?」
「あー、アリスは知らなかったか。僕には人のステイタスボートを見れるスキルを持っているんだ。ごめんな、勝手に見て」
「ううん、大丈夫。ちょっと、驚いただけだから」
ちょっと、驚いた割には爪の食い込みがえげつなくなってきている。
もうこれ、血とか出てない?大丈夫かな、僕の頭…。
「それで、このアズラーイールはどんな力を持っているのだ?我はあまり、アズラーイールについて知らんのでな教えてほしい」
「えーと、ちょっと待ってください。アリス、先生に君の力について教えてもいいかな?」
アリスは少し迷った顔をするが、コクリとうなずいた。そして、僕は先生にアリスのステイタスについて話した。
「なるほど、このアズラーイールは回復が特化した者なのだな」
「多分そうです。でも、今は疲れているのか自分を回復できないみたいで、血とかめっちゃ出てました。なので、僕が応急処置をしたという感じです」
先生は何かを考えるように座り込み、アリスと僕を交互に見た。
「アズラーイールよ、その手を離してやれ。そろそろ怪我してもおかしくない」
「…!?」
アリスはやっと僕の頭に爪を立てていたことに気づき、爪をしまった。
あー、先生ありがと~う。本当に、毛根死ぬかと思った。まず、その以前に頭から血を流して倒れるとこだった。
僕は先生に感謝を示して、深く頭を下げた。
ちゃんと、アリスは僕の腕の中にいるので、乗せたまま落っこちてはいない。大丈夫だ!僕って有能!
心の中で少しドヤった僕だが、先生にはお見通しのようで僕を蔑むような目で見てくる。
せっかく感謝したのに、そんな目で見なくても…。
「アリス様がいたって、本当か!?」
「ゴードンさん、どうしたんですか?そんなに慌てて」
走ってきたのか、額は汗で濡れていた。どうしてそんなに慌てているのか、僕は不思議に思った。
そして、ゴードンはアリスに気づくと、とても安心したような顔をした。
「アリス様…ご無事で何よりでございます」
「ありがとう、ゴードン。あのときは、すまなかったわね」
「いえ、アリス様は悪くありません。あれは、人間が…」
すると、ゴードンは僕を見て口をつぐんだ。多分人間について、悪口を言おうとしたが、僕がいて話せなくなったんだろう。
アリスとゴードンは、何か知り合いみたいだし、僕は席を外したほうがいいかな。
そして、僕はアリスを地面に置きその場をさろうとした。
しかし、アリスが僕のズボンを掴んで、はなさなかった。
「どうしたアリス?ゴードンさんと、なにかお話があるんだろ?僕は先生とあっちに行ってるから、好きにお話してくれ」
アリスは首を振った。僕はなぜ、そんなことをするのか、わからなかった。
ゴードンさんと、前に何かあったのかな?でも、さっきの会話を聞いた感じ、そんなに仲が悪いわけでもなさそうだ。ゴードンさんは、アリスを慕っているようだし…なんでだろう。
僕は先生をチラッと見つめた。先生は目を合わせようとしない。多分、『我に聞くな』と言っているのだろう。
えー、酷いな~。先生なら、多少は何か知ってるだろうに…。
「ヒイラギ…」
「ん?なんだ?」
僕はアリスを優しくなでながら、アリスの声に耳を傾けた。その時、ゴードンが話に割って入ってきた。
「おい、坊主。口の聞き方をわきまえろ。この方を誰だと…」
「やめて!」
「…!?アリス様…?でも、アリス様に失礼で…」
「そんなことは私が決める。ヒイラギは私の恩人なの。無礼は許さない」
「えーと…お二人さん、落ち着いて!もう、僕には何がなんだか、わからない!」
僕だけをおいて、話を進めないでくれ…。
「アリス、お前は一体なんなんだ?ゴードンさんとの関係は?」
「ゴードンとは前に戦場で出会った。その時、ゴードンは凄い怪我をしてて、あと少し遅かったら死んでたところを私が助けた」
「戦場ってことは、前に戦争があったってこと?」
「そう、100年くらい前に人間と魔物の戦争があったの」
「ちょっと待って、100年くらい前って、アリス今何歳なの!?」
「坊主、女性に年齢を聞くなど何と無礼な」
「え…だって…」
じゃあ、アリスとゴードンさんは100歳以上と言うことか…。いや待てよ、じゃあ先生は何歳なんだ?
僕は先生を見つめる。先生は僕を見て、去っていった。
後で教えてやる、ということだろうか。まぁ、後でのお楽しみにしよう。それよりも、まず片付けなければならない事はこっちだ。アリスが何歳…じゃなくて、何者なのか知らなければ。
「ごめん、アリス。話を続けてください」
「えっ、うん…で、私はゴードン以外の魔物も回復させ続けた。でも、ほとんどの魔物は死んでしまって、勝ったのは人間たちだった。私は力を使い果たし、長い眠りについてしまったの」
「俺たち魔物は、アリス様に救われたんだ。だから、アリス様とアリス様が大好きなこの森を長年守り続けていたんだ」
「へ~、なるほどね。だからこの森、自然がきれいなんだな」
「そして、私は最近目覚めたの。でも、辺りが前と変わっているし、結界のせいで魔物の気配がしなくて困っていた。その時、人間に襲われたの」
「さては、坊主が連れてきたってことじゃないだろうな?」
ゴードンは、僕を睨みつけた。それも、今にも殺しにかかってきそうな目で。
マジ…ここから逃げたい。なんでこんな神経削られるような空間にいなきゃいけないんだ…。
「シンは、やってないぞ!シンは、俺と初めて会ったんだぞ。俺が証言するぞ」
「満…」
なんて、友達思いのいいやつなんだ。今度、満にお礼をしないとな。
「でもな、お前と坊主が初めてあったのか、わからないだろ。どこから来て、どんなやつなのか。それがわからない今、こいつをここに置いておくのは危険だ」
確かに、僕はどうやってここに来たか自分自身でもわからない。周りからすれば、人間は前の戦争相手だし、不審に思っても仕方がないか。
「ゴードン、ヒイラギは私を襲った人間を倒してくれた。それだけで、彼を信じる理由になると思うの」
「そうやって、アリス様を味方にしてこの森をまた破壊しようとしているのです。また、犠牲者が出てしまう。ならば、人間はここには置いていけないのです!」
ごもっともな、意見だ。僕がここにいるだけで、誰かを不快にさせてしまう。怖がらせてしまう。ならば、僕はここではなく人間の世界に行ったほうが、みんなの為になるだろう。満たちとお別れするのは辛いが、これは流石に仕方がない。
「色々わかった。アリスはこの森や魔物の守り神的な存在ということ。魔物は人間を嫌っていること。僕はここにはいてはいけないこと。それが、わかった」
「ヒイラギ…?そんなことない!ヒイラギは他の人間とはちが…」
「いや、他の魔物はそうは思わないだろう。それに、僕はこの世界についてもっと知りたい。もっと、色々な景色を見に行きたい。だから、僕はここから出ていく」
アリスは僕の目を真っ直ぐに、見つめていた。そして、頑なに僕のズボンを掴んでいた。
ごめんな、アリス。ゴードンさんの、言うとおりなんだわ。
「シン…行っちゃうのか?俺が嫌いなのか?」
「いや、満のことは大好きだ。でもな…、仕方がないんだ」
本当はみんなと一緒にいたい。でも、そんな感情はもってはいけないんだ。これは、宿命。そうだそうだ。
僕は自分自身にそう言い聞かせた。でも、体は正直だ。僕の目には涙が溢れだした。
「シン…ここにいていいんだぞ!シンは、俺が守るんだぞ…だから…だから…行かないでほしいんだぞ…」
すると、満も泣き出してしまった。僕は満を強く抱きしめた。
ここに来てからの初めての友達と、こんな形でお別れだなんて…。
「満、ありがとう僕を信じてくれて。じゃあ、もう行くね」
僕は満の返事を待たずして、歩き出した。すると、アリスがまた僕のズボンを掴んできた。
アリスだから…。
「アリス…その手を離してくれ」
「いやだ。ヒイラギ…ここにいてほしい」
「だから言ったろ?僕は世界を知りたいだけだって!」
僕はアリスを持ち上げ、地面に下ろした。もう、誰かに止められて悲しくなるのは嫌なので僕は走った。遠くへ遠くへ走った。涙が止まらない。僕はこれで本当に幸せなのだろうか。自分の心に歯向かって、皆のためだからって…そんなのただの言い訳にすぎないのに…。どうして…どうして、こうなってしまうのだろう。また、お別れだなんて…。
すると、奥から何かが近づいて来た。よく目を凝らしてみると、ジル先生だった。
「先生、少しの間ありがとうございました。僕はもう、この森を出ます。世界を知りに行きます」
僕は精一杯の笑顔で先生に話しかけた。
「我はお前になんと言った?」
「何がですか…?」
質問しても、先生は何も答えてくれなかった。
先生は僕に何を言った…?僕に何を教えてくれた…?
僕はひたすら考えた。しかし、先生が求める答えは出てこなかった。
駄目だな…。先生に教えてもらったことさえ覚えてないなんて…。本当に、僕は駄目な人間…。だから神様は、僕にこんな人生を与えたんだ…。僕をこらしめるために…。…………あれ?人生…なんだか、引っかかる。思い出せ、思い出せ。これは先生が求めている答えかもしれない。あの日、僕は先生になんて言われた?何を怒られた?思い出せ、思い出せ!
その時、1筋の光がさしこんだ。
そうだ、先生はあのとき『これはお前の人生だ、誰かが決めていいものではない。お前がしたいことをすればいいだけのことだ。そうではないか?』って、言ったんだ。僕の人生は自分で決めなきゃ。
僕は先生を見つめる。先生は笑顔を向けてくれた。
「そうだ、シンお前の人生はお前が決めろ」
その言葉を聞くと、また涙が零れそうになった。しかし、僕は泣かない。もっと、強くなるんだから。自分で人生を決められるように。
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