最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第一章

ティファはベロニカと和解したい

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「ベロニカ、ケーキを焼いたんです!食べませんか?」

「食べません。甘い物は控えてるので」

「え?じゃあ僕、貰っていい?」

うぬーーー。心の壁が厚いです。
お悩み相談に乗ってもらえます?ティファです!

「ベロニカは一度この国の兵士に捕まったんですよね?どうやって逃げて来たんですか?」

「どうやってって・・・・鍵が掛かってなかったから、そのまま出て来たのよ。それだけ」

・・・・え?
私思わずハイトさんを見ちゃいましたよ。ん?何ですかハイトさん?もぐもぐしてたら分かりませんよ?うんうん?ケーキが美味しい?そうですか。ハイトさんに聞いた私が間違ってました。

「もしかして、本気で捕まえる気がなかったんでしょうか?私も保護されてますし」

「どうかしらね?泳がされたのかもしれないわよ?気付いてないだけで何処かに密偵が・・・・いないわねきっと」

分かりませんよ?現に目の前に完全に気配を消せる人がいますからね?まだもぐもぐ頬張ってますがね?
紅茶でも飲んで下さい。喉につっかえてますよ。
こんな無害なリスみたいな顔して狂人なんですから本当油断できません。

「ところで、それは何を作ってるんです?」

「ああ。スープパスタよ」

スープパスタ!!
イイですね!どんな味付けにしました?気になります!

「一口下さい!」

「嫌よ。私のお昼ご飯だもの」

「えーーーー!じゃ、じゃあ私のご飯も一口あげますから」

「い・や!私、貴方の料理食べたくないの」

ガーーーーーン。
何故でしょうか?物凄いショックです。ここに来て初めて本気で泣きそうです。

「いいじゃん。一口くらい食べさせてあげたら?」

「・・・フィクスさん」

いいんですよ。ベロニカがケチなのは今に始まった事じゃありません。余りにも断られるから後半は殆ど実力行使と上官の特権で言う事聞かせてましたので。あ、それが嫌われた原因でしょうか?あはは?

「何で食べる物がちゃんとあるのにわざわざ?この人の料理の方が明らかに美味しいんだから食べる必要なんてないでしょ?」

「うわぁ君卑屈だね?」

何でしょう?
なんか、おかしな空気になってきました。

ベロニカって真面目すぎる所があるから心配です。
騎士になったのだって高潔な女騎士を崇拝してですもん。

え?誰だそれって?私らしいですよ?その過程は私に会った瞬間に抹消したと言ってましたけども。あはは?

「あ、いたいた。ご飯まだだったの?」

あ、最近ベロニカの監視に付いたマッジンさんがやっと来ました。監視してない監視役なのです。

「キリがいいところまで、やってしまいたかったので」

「ふーん?ん?何コレ」

「・・・スープパスタよ。ここの人達なんでいちいち人の食べる物が気になるのかしら?」

そうですね。確かに私達がいた国はこんなのんびりしてませんでしたもんね?人の事なんて見てなかったですよねぇ。

「へぇ。俺食べた事ない。どんな味付けにしたの?」

「どんなって。貝類があったからそれで出汁をとってにんにくと唐辛子野菜の屑のスープをストックしてあったからそれと合わせて・・・」

ふむふむ?それでそれで?

「説明されても分かんない。一口頂戴」

「はぁー一口だけですからね?」

えーーーーーーーー!?なんでなんでぇ?私は断られたのになんでマッジンさんはいいんですかぁ!狡い!マッジンさん狡いです!!

「へぇ!あっさりしてるのに味がしっかりしてるね。凄く美味しい」

「え?そう?それは、上手くいったみたいで良かったわ」

「・・・・・ベロニカ」

「じゃあもう良いわね?私はご飯を食べて来ますので」

えええーーーーー!!今、今ぁ!私にも一口くれる流れじゃなかったです?マッジンさんのさり気ないパスありましたよね?なかったです?あ、行かないで!

「うぎゅぅぅぅぅぅぅ」

「ティファ。どこから声出してるの?面白いよ?」

ハイトさん、そんな満足気な顔して揶揄わないで下さい。
あぅ。ベロニカのスープパスタ・・・・。

「それにしても、あの子も料理上手なんだね?ティファ程じゃないにしても」

「・・・上手ですよ。彼女の実家は料理店ですし」

「は?そうなのか?」

「はい。本人はそれ程料理が好きではないみたいですので、自分の分しか作りませんが。特に出汁の取り方がとても上手なんです」

実は彼女の知識をかなり参考に料理に生かしているんです。だってその方が美味しくなるんですよ!

「そもそも、なんでティファあの子に崖から突き落とされたの?」

「それは確かに気になってた。あの子も国に帰れなくなってるし。状況が全く伝わって来ないんだけど?」

いや、私もまさかあの時、崖から蹴り落とされるとは思ってなかったです。はい。でも再会して、私わかっちゃったんですよねぇ。多分全部私の所為です。

「恐らくですけど、私を逃す為だと。逃げている途中にベロニカが捕まってしまって。私達その所為で捕まったんですが、どうもそこまでは相手の計画通りだったみたいなんですよね」

「ん?どゆこと?」

「私が逃げ出す事、全部知られてたみたいですね。ベロニカ、もし自分が捕まっても構わず逃げろと私に念を押してましたから。でも、私捕まっちゃって」

落とされた時はやっぱりベロニカが私を殺そうとしてたんだって思ったんです。彼女があの人達に何やら命令されてた事はなんとなくわかってましたし、だってベロニカ分かりやすいんですもん。

「私をどうにかしたいなら、わざわざ崖から落とさなくても良かったんです。そのまま捕まれば処罰されますから。それに、ベロニカ、私が生きていた事を知っても驚かなかったですよね?」

「「「あ」」」

「きっと私と王子に板挟みにされて追い詰められたんだと思います。あの子キャパ越えすると思いもしない行動を取る事がある問題っ子ですから」

それさえなければもっと上に行けたと思うんですよね。
まぁ行かなくて正解だと思いますが?上はイカ墨並みに真っ黒なのです。

「ベロニカは頑固な所があるので、決してそれを認めないし口にも出さないと思います。何とか、和解できるといいんですが・・・・」

あぅーーーーこんな事になるなら権力振りかざさなければ良かったですかね?どうしましょう・・・ベロニカのスープパスタ・・・・。
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