最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第二章

ササラも魔物を食べてみたい

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「ササラ、分かる?」

「ええ。しかし、突然現れましたね?」

こんにちは。お久しぶりですね?宮廷魔術師のササラです。義父であるデズロ様の下、この国の生活を支える為、日々働いています。

働いている、と言われても皆様ピンと来ないと思いますので、簡単に説明させていただきましょう。

サウジカル帝国の宮殿魔術師は他国からの魔法や魔術の侵略行為を受けた時、それに対抗する為、普段から国と国の境目に魔法防壁を張っています。

これは主に攻撃を感知するものであり、完全に相手の攻撃やこちらの国への侵入を防ぐものではありません。

それ以外には、この国のありとあらゆる生活用品を動かす為、宮廷最深部にあるクリスタル"アースポント"に私達の魔力を日々流し込み魔力を貯め、それを地中からこの国全体に送っています。このクリスタル、結構曲者で魔力を持っていれば誰でも魔力を流せるわけではありません。

ですから、それが出来る者はとても貴重な人材として大事に扱われます。皆様ご存知の通りデズロ様がその一人です。

説明が長くなりましたが、つまり私達は敵や良からぬ輩がこの国へ侵入すると、すぐに察知出来るのです。

そして今、正にその良からぬ者が現れましたね。

「あちゃーー。この位置はサンチコアだぁ。運がいいのか悪いのか・・・・。ササラ、僕ちょっと先に行ってるね?エルハドにも知らせておいて?」

「分かりました、すぐに使いの者に行かせます。私もサンチコアへお供します」

「駄目駄目。ササラはエルハドの指示を待ってから来て?僕急いで確認したい事があるからかっ飛ばしたいの」

「・・・成る程。了解しました」

この人に本気を出されたら私でも付いて行けません。
デズロという人物はいわゆる天才魔術師と言われるもので、実は私達の数百倍の魔力を体の中に所持しています。

アースポントも、元々はデズロ様が産み出したものでした。それまでこの国では各街に専属の魔術師が配置され、街の管理を行ってましたが、デズロ様のお陰で今や宮廷内から魔力を送る事ができるようになりました。

ここまで聞くとデズロ様ってなんて有能なんだ!と、思いますよね?

ええ、確かに有能ですよ?

ですが、彼自身は史上最悪の人間です。
その能力の3分の1でいいから良識ある人間でいて欲しいものです。あんな我儘放題の人物をこの国に招いた皇帝陛下は器が大きいのか、はたまた、ただの考えなしだったのか・・・・。

「ササラ?心の中で僕の悪口言うの止めて?顔にはしっかり出てるからね?」

「止めても行くのでしょう?サッサと行ってください」

「冷たいなーササラは?エリスとラットの方が僕に優しいよ?パパ泣いちゃうよ?」

何がパパなんですかね?
貴方親らしい事した事ありましたか?迷惑しか、かけられていませんよ?いいからサッサと飛んで行きなさい。

「あ!もし途中でギャド見かけたら、ちゃんと見張っておいてね?ティファに変な事しないようにさ?」

デズロ様。ギャドにはティファに変な事を仕掛ける勇気はありませんよ。

そして貴方にしては珍しく騙されていますね?本当に注意すべき人物は既にティファに色々手を出してますよ?
まぁ私はギャドを見張れと言われましたから。この事は勿論デズロ様には教えません。




そんな訳で私は遅れてサンチコアに着いたのですが。

「さっきまで全く魔物の気配なんてしませんでしたが、何故突然?」

それにしてもティファはデズロ様と見た目が全く似ていませんね。やはり母親に似ているのでしょうね?ティファがこんなに綺麗なのですから、母親もさぞかしお美しい方だったのでしょう。きっとデズロ様にまんまと騙されてしまったのですね?可哀想に。

「まだ調査中だね。とにかく急いで王宮に・・・・・」

「ふぁあああああああああ!!!」

わっ!?ティファ?私はちょっとビックリしましたよ?どうしたのかな?いきなり変な声出して。

「ライスベガです!こんな所に、ライスベガが・・・」

うん?ああ、あの魔物の事ですね?
確か隣の国は地底が安定してない為、瘴気も多くて魔物も沢山いるらしいですから、ティファはあの魔物をよく知っているのですね?

「ササラさん、ハイトさん。私ここに残ります。どうぞ宮廷に行ってください」

「まさか、ティファ一人で闘うつもり?駄目だよ。武器も持ってないのに」

待ってハイト君。
ティファの表情をよく見てご覧?アレは決して使命感とかで魔物を討伐しようとしてる訳ではないですよ?あの顔は自分の獲物を見つけた時に見せる歓喜の表情です。なんで分かるのか?デズロ様も良くあの顔をしますから。やはり血は争えないですね。

「ハイトさん。ライスベガは最高に美味なのです」

「え?美味って、食べて美味しいって事?」

「はい、とんでもなく。しかも全ての部位に違う美味しさがあって、一匹で色々な味を楽しめるやつなんです」

・・・・・・・ゴクリ。

・・・・・さて、私はギャドでも探しに行きましょうか。
ハイトはもう駄目そうですから。

「ティファ?勿論それはティファが料理、するんだよね?」

「はい!勿論です!!私は何度もあの子達を捌いて料理しましたから!くふぅ!アレがまた食べられるなんて。よだれが出ちゃいます!」

うん。やっぱり私も残ってティファのご飯食べていくとしましょう。

だって、あのティファがよだれが出る程美味しいという料理、ハイトじゃなくたって食べてみたいでしょ?
仕事?デズロ様とギャドに丸投げするので御心配なく。

「私はアイツの急所を知っていますので、動きを止めている間に胸の真ん中を狙って攻撃して下さい」

「動きを止めるって、どうやって?」

「へい!そこの清掃員の方!ソ・レ・貸して頂けませんか?」

「え?あ、いいけど。こんなのどうするの?それより早くここから逃げないと」

そうですよ。ティファ?ここはハイトに任せて君は下がってもらえませんか?貴方に何かあったら今度は山に穴が開くどころではすみませんから。

あと、貴方が今握っているデッキブラシ。何に使うんでしょう?あの魔物の急所、その先端のブラシで擦るのかな?

「大丈夫です!今から私がパパッと倒して料理しますから!この有能なデッキブラシで!」

「ティファは、何事も面白おかしくしないと気が済まないタチなの?」

いや、ハイト。ティファは大真面目だと思うよ?

目の前の現実をちゃんと受け入れよう。
事実この後彼女、本当に魔物を討伐しましたから。

勿論、デッキブラシ一本で。

「では、いざ!解体ターイム!!」


その後、私はどうしたのかって?結論から申しますとその流れで食べました。ライスベガ。この世の物とは思えない位美味しかった!また食べたいので、やはり今回の事件ちゃんと調べようと思っています!また現れませんかね?
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