最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第二章

閑話その3

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「本日はお招き下さり、ありがとうございます」

「こちらこそ。来てくれて嬉しいわ。セラ様」

「おう、セラ!よく来たな!悪りぃな?急に呼び出して」

「ギャド!!貴方またそんな言葉遣いを!!セラ様に失礼でしょう?」

五月蝿えなぁ。
今まで俺の事なんて気にもかけなかった癖にセラが婚約者になった途端に豹変しやがって。器用なもんだな?

「いいえ?私は慣れておりますから。どうぞお気遣いなく。ギャド様、今日はティファ様がケーキをわざわざ作って下さったのでお待ちしたのですが、宜しかったでしょうか?」

「あら?それは噂の料理人の?とても腕が良いと伺っておりますわ?」

「はい!彼女の作る料理はとても美味しいのですよ?是非食べて見て下さいませ。あ、ギャド様も」

何だよ?不服そうだな?俺が居たら都合が悪いのか?ん?

「なんだ母様。呼び出しておいて何かと思えば珍しい。お兄様と、これはこれは!セラ様、お久しぶりでございます」

「ジェラルド様。お久しぶりでございます」

はっはーん?母よ?もしやセラを懐柔して婚約者を、俺からジェラルドに変える魂胆だったな?ミエミエだな。
セラが気付いて困った顔してるだろうが。

「最近兄様とラブラブなんでしょう?噂で伺いましたよ」

ちょっと待て!!なんだその浮ついた噂!!アホか!
い、いつ俺とセラが、その、ラブ・・・とか。

「そ。そうなのですか?ギャドがまともに女性とお付き合い出来るとは思えませんけれど?」

「困りましたわね。そんな噂が流れているだなんて、ちょっと恥ずかしいですわ」

そ、そうだそうだ!!即刻犯人を捕まえてそんな噂嘘だと
白状させないといけねぇな?誰だそんな事広めた奴は!!

「兄さんも赤くなってないで、何か言ったらどうなんです?セラ様が恥をかくことになるのですよ?ちゃんと責任は取るんですよね?」

「あ、当たり前だろ!お、俺が何とかする!」

「だ、そうですよ?母様。では二人の結婚の準備の相談でも致しましょうか?」

「え?ええ、そうね。で、でも。ギャドは家督を継がないのだから、こちらで勝手に話を進めるのはどうかと思うのだけれど?」

あれ?ナンデソンナ話ノナガレニ?

おかしいぞ?これは、ただのお茶会の筈だよな?
うちのババァが急にセラを呼び出したって言ってたから、慌てて来ただけなんだが?何?俺達結婚するのか?

「セラ様のお父様はどのように?」

「私には弟がおりますから。家督は弟が継ぎます。ギャド様がこの家を継がないのであれば、私は騎士団長のギャド様に嫁ぐ事になりますね。それが、一番波風が立たない方法かと」

そうだぞ。変に欲を出すと身を滅ぼすからな?大人しくしとけ!

「そうですわね?私、ちょっと気分が優れないので席を離れますわ。セラ様申しわけありません。どうぞお気になさらずゆっくりしていってね?」

「はい。お心遣い感謝致します」

チッ!逃げやがったな?
それにしても、相変わらず、うざい。

「すみませんセラ様。うちの母が。あの人ちょっと我儘な所があるので。思い通りにいかないとすぐ拗ねるのです」

「気にすんな。いちいち相手にしてたらキリがないからな?」

「ふふ。大丈夫です。それより、ケーキ食べませんか?」

お!そうだった。
ティファのケーキ美味いからなぁ。

「お!噂のケーキですね?私も噂を聞いて一度食べてみたいと思ってました」

今日は何のケーキかな?お、おおお?

「え?ショートケーキ?凄いな、あ、だから氷が付いてるのか」

綺麗に作るもんだなぁ?ちゃんとスポンジがフンワリしてる。食べるのもったいねぇけど、美味そう。

「うわぁ美味しそうです!頂きます!」

オーーーーーッうっっま!!コレ美味!!周りの濃いクリームがふわふわのスポンジとよく合う。それに間に挟まってる苺が酸っぱくて丁度良い。

「・・・・・こ、これは!こんな食べ物初めてです!」

あ、懐かしいな。俺も初めての時はそんな反応だったわ。
今じゃティファの味が当たり前だからな。日々感謝しねぇとな?やっぱティファ教立ち上げっか?

「成る程。兄さんが帰って来ないのはコレもあるんだな?でも、たまにはこっちにも顔を出してくれ。俺一人だと本当に疲れる。あの人の相手するの」

「悪りぃ。でも最近は帰って来てるだろ?」

「セラ様に会うついでに、だろ?本当、セラ様、婚約してくれて助かりました。この人一生独身だと思ってましたから」

「いいえ。そんな・・・・」

あーーーージェラルド?それ以上は俺の良心が痛むから、やめてほしい。

「さて、お茶も飲んだし帰るか?俺もこのまま宿舎に行くわ!あの人に宜しくな?」

「はいはい。セラ様是非またご一緒しましょう」

「はい。お邪魔致しました」

最近は目の回るような忙しさなんだぞ?
全く。余計な事をしないでくれよ。頼むから。

「あの、すみませんでした。お忙しいのに。でも、何故私が招かれたと分かったのです?」

「宰相が教えてくれたんだよ。俺の母親の企みなんてすぐわかるだろ?多分それで声をかけてくれたんだな?」

「そうでしたか。申し訳ありませんでした」

何でセラが謝るんだ?俺が迷惑かけたんだろうが。

「私と婚約したばかりに、面倒な事が増えてしまいましたね?」

「セラ何か勘違いしてねぇか?」

「え?勘違い?」

まぁ、そりゃそうだな?
あの流れで婚約すればしょうがなく婚約したと思うかもな?だけどそうじゃねぇよ。

「俺は自分でお前の提案を飲んだ。今はちゃんと昔の事思い出したし、俺はこの婚約期間中ちゃんと、お前と向き合うと決めているし、婚約者としてセラを扱う。その事をセラが謝る必要はないんだぜ?」

「え?ギャド様思い出したのですか?」

う!!うぐっ!思い出してました。大変、申し訳ない・・・・。

「そう。そうなんだ。謝らなきゃなんねぇのは俺だよな?すまなかった」

ん?なんだ?何でそんな大きな瞳を開いてこっちを見るんだよ。あ、あんま見んなよ。

「・・・ギャド様、じゃあ昔の私とのやり取りも思い出して下さいました?話した事も覚えてます?」

「あ、ああ。正確じゃねえけど。何でだよ?」

「そうなんですね?思い出したんですのね?」

っう!な、何だよ嬉しそうだな。それならもっと早く教えてやれば良かったのか?女心なんて俺にはわかんねぇよ。

「嬉しい!!なんだか、昔に戻れたみたい!!」

あ、そうか。俺、馬鹿だな。
また勘違いしてた。セラが好きなのは今の俺じゃなくて、昔の出会った頃の俺が好きなんだな。
いや、別にそんな事はわかってたんだけどな。
改めて実感すると、キツイな。
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