最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

文字の大きさ
137 / 144
第三章

エルシャナはセルシスを叱りたい

しおりを挟む
「あの木、燃やしちゃおっか?」

おーおー珍しく本気で怒ってるなぁ?
自分が操られたの、そんなに気に入らなかったのか?
でも、自業自得だぞ?あの木の事はデズロ様に任せて手を出すなって、父様がちゃーんと釘さしてたよな?

皆さま御機嫌よう。私はセルシスの兄のエルシャナだ。隣が三男のケルベナ。私達は只今セルシスを説教中なんだが・・・・。

「陛下。話によればアレは精霊の類です。ただの人間が精霊に手を出す事など出来ませんよ?基本彼等と我々は必要以上の接触を禁じられています。彼等の能力が只人に力を与える事を防ぐ為です。ゼクトリアムがあの木から切り離されたのも、それを防ぐ為でしょう?」

お?ケルベナ今日はよく喋るね?
もしかしてお前もちょっと怒なのか?セルシスに怒なのか?

「えー?でも、危害を加えて来たのはあちらだよ?俺が知らない間に戦争になりそうだしさぁ?どうすんのコレ」

「元々オスカールは調子に乗りすぎていたのでコレを機会に少し自重してもらえばいいさ。サクッと片付けよう」

そんな事よりも私はお前の勝手な単独行動に怒っているんだが?セルシス陛下?

「陛下・・・・何故勝手に大樹に近づいたりしたんです?子供の頃から危険だとあれほど言われていましたよね?」

「・・・・俺、あの木嫌いなんだよね」

「いや、まぁ。好きな奴はあまりいないな?」

「あの木は俺達の爺さんも操って、一度この国を壊そうとしている。それなのに、父様が全てを背負って、デズロ様をこの国に連れて来てまで守る価値があるのかな?俺はずっと疑問だったんだ。この国にあの木は必要なのかって」

セルシスって意外と真面目というか、一番父様とデズロ様に懐いていたな。私も疑問に思った事はあるが、正直だからといってあの木を、どうにかしたいとまで思った事はない。

「だから、燃やそうと?」

「いや、調べている過程で弱点部位がないか確認する為にギリギリまで近づいた時、近くに立っていた者に大樹の枝を渡された」

「大樹の近くに人が?それは、一体何者です?」

「それが、ローブを羽織っていて、多分女だと思う。俺もその後すぐ意識がなくなったからなぁ」

平民?デズロ様がいないとはいえ、あんな場所にどうやって入り込んだんだ?あそこに行くには宮廷内を一度通るか、もしくは下から上まで飛んで来る方法しかない。
デズロ様の結界もあるのに、どうやって?

「・・・・何処かの国の刺客か?目的は一体?」

「・・・・ハイトが、大樹に捕らえられたのと関係しているのかも知れない」

そうか。私達もハイトの事を知ったばかりだからな。
大樹を元に戻して得をする人物ってことか?

いや、そんな者は居ないはずだ。
そもそも、私達でさえ知り得なかったものを誰が知る事が出来た?ん?そういえば・・・。

「・・・最近ずっとハイトにまとわりついていたご令嬢がいたな?あれは、どこの家の子供だ?」

「え?ああ。リューゲン家じゃなかった?あそこ三人姉妹
だったよね?」

確かにそうだが、あの家にハイトと同じぐらいの歳の娘は、確かいなかったのでは?

「・・・・あの家は皆すでに嫁いでいましたね?末端貴族なので特に気にかけていませんでしたが」

「じゃあ、あの女は誰なんだ?」

「まさか、その女があの木の結界を解いて大樹をハイトの下へ導いたと?」

「確か彼女も魔力保持者持ちの勘違い令嬢の一人としてまぎれてたね?でも、確かに魔力は結構強かった。でも、デズロ様には敵わないよ?」

「ウィース。陛下久しぶりだな?」

ギャド。
君傷だらけだけど、どうした?
大樹はハイト以外、傷をつけなかったと聞いているけど?

「珍しくボロボロだね?どうしたの?」

「ちょっと暴れるティファを止めたので。アレは俺じゃないと死んでたな?アハハ」

そこで笑えるお前を心底尊敬する。私なら、泣くな。

「で?オスカールとの開戦も近い。街は破壊されて復旧に時間がかかる。大樹を手引きした奴の目的も分からない。さて?何処から手をつける?」

「オスカールかな。街の復旧作業は新しい魔術部隊、ササラに一任する。大樹の事は、ハイトがなんとかするんでしょ?」

お?やっと冷静になってきたな?じゃあ私達もそのご令嬢とやらを探してみるか。きっと姿をくらませたはずだからな。

「一つお願いがあるんだが?」

「なにかな?迷惑かけたし、少しだけなら聞いてあげるかもよ?」

「ティファに大樹に近づく許可を。ハイトが帰って来るまでずっと」

それは難しいな。
デズロ様がいれば話が別だが、ティファ一人で近づくのは危険すぎる。

「ハイトは任せろと言ったが、セラが今のハイトにはティファが必要だと言ってたんだ」

「セラが?」

「あの木には恐らく、始まりの記憶が残されている可能性があるらしい。今のハイトがその記憶に飲み込まれないように、ティファの手助けが必要なんだと。そもそも、オレ達は大樹が何故この地に降り立ったのかを知らない」

そうだな。
確かに、それが分かれば打開策も出るかもな?
今まであの木には謎が多過ぎた。大樹と核の分離。ゼクトリアム家があの木に近づけないようにしたオレ達皇族のレインハート家。そして、数年前起きた核の暴走。

「大樹は、一体何がしたいんだろう?」

「大樹がずっと求めていたのは彼を真実愛し、彼と共に生きてくれる人なんじゃないの?」

「え!?デズロ様?あ、お父様!久しぶりー!」

「久しぶりー!じゃないぞ?セルシス・・・」

真実愛すとは、また重いな?人間と精霊がずっと一緒に居られるわけがない。

「多分さぁ?大樹は人を人でない者にしようとしたんだと思うよ?つまり、不老不死にさ?それをレインハートの先祖が止めたんじゃないの?だってさ?そんな人間誕生させたら絶対的な力でもって世界を支配されちゃうかもしれないもんねぇ?」

成る程・・・。
しかしゼクトリアムと大樹は特別な盟約で繋がっている為完全に引き離す事はむずかしかったんだな?
だから、力を削ぐために、わざわざ核を取り出してゼクトリアムが守っていたんだな。

「その、長年の大樹の願いを、まさかティファが叶えるかも知れないなんて・・・・・僕、本当に初耳ナンダケド?」

いや、私は知りませんよ?
詳しい話はそこにいる傷だらけの人にでも聞いて下さい。
巻き込まれるのはまっぴら御免です。アハハ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

田舎農家の俺、拾ったトカゲが『始祖竜』だった件〜女神がくれたスキル【絶対飼育】で育てたら、魔王がコスメ欲しさに竜王が胃薬借りに通い詰めだした

月神世一
ファンタジー
​「くそっ、魔王はまたトカゲの抜け殻を美容液にしようとしてるし、女神は酒のつまみばかり要求してくる! 俺はただ静かに農業がしたいだけなのに!」 ​ ​ブラック企業で過労死した日本人、カイト。 彼の願いはただ一つ、「誰にも邪魔されない静かな場所で農業をすること」。 ​女神ルチアナからチートスキル【絶対飼育】を貰い、異世界マンルシア大陸の辺境で念願の農場を開いたカイトだったが、ある日、庭から虹色の卵を発掘してしまう。 ​孵化したのは、可愛らしいトカゲ……ではなく、神話の時代に世界を滅亡させた『始祖竜』の幼体だった! ​しかし、カイトはスキル【絶対飼育】のおかげで、その破壊神を「ポチ」と名付けたペットとして完璧に飼い慣らしてしまう。 ​ポチのくしゃみ一発で、敵の軍勢は老衰で塵に!? ​ポチの抜け殻は、魔王が喉から手が出るほど欲しがる究極の美容成分に!? ​世界を滅ぼすほどの力を持つポチと、その魔素を浴びて育った規格外の農作物を求め、理知的で美人の魔王、疲労困憊の竜王、いい加減な女神が次々にカイトの家に押しかけてくる! ​「世界の管理者」すら手が出せない最強の農場主、カイト。 これは、世界の運命と、美味しい野菜と、ペットの散歩に追われる、史上最も騒がしいスローライフ物語である!

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

幼女はリペア(修復魔法)で無双……しない

しろこねこ
ファンタジー
田舎の小さな村・セデル村に生まれた貧乏貴族のリナ5歳はある日魔法にめざめる。それは貧乏村にとって最強の魔法、リペア、修復の魔法だった。ちょっと説明がつかないでたらめチートな魔法でリナは覇王を目指……さない。だって平凡が1番だもん。騙され上手な父ヘンリーと脳筋な兄カイル、スーパー執事のゴフじいさんと乙女なおかんマール婆さんとの平和で凹凸な日々の話。

【完結】姉は聖女? ええ、でも私は白魔導士なので支援するぐらいしか取り柄がありません。

猫屋敷 むぎ
ファンタジー
誰もが憧れる勇者と最強の騎士が恋したのは聖女。それは私ではなく、姉でした。 復活した魔王に侯爵領を奪われ没落した私たち姉妹。そして、誰からも愛される姉アリシアは神の祝福を受け聖女となり、私セレナは支援魔法しか取り柄のない白魔導士のまま。 やがてヴァルミエール国王の王命により結成された勇者パーティは、 勇者、騎士、聖女、エルフの弓使い――そして“おまけ”の私。 過去の恋、未来の恋、政略婚に揺れ動く姉を見つめながら、ようやく私の役割を自覚し始めた頃――。 魔王城へと北上する魔王討伐軍と共に歩む勇者パーティは、 四人の魔将との邂逅、秘められた真実、そしてそれぞれの試練を迎え――。 輝く三人の恋と友情を“すぐ隣で見つめるだけ”の「聖女の妹」でしかなかった私。 けれど魔王討伐の旅路の中で、“仲間を支えるとは何か”に気付き、 やがて――“本当の自分”を見つけていく――。 そんな、ちょっぴり切ない恋と友情と姉妹愛、そして私の成長の物語です。 ※本作の章構成:  第一章:アカデミー&聖女覚醒編  第二章:勇者パーティ結成&魔王討伐軍北上編  第三章:帰郷&魔将・魔王決戦編 ※「小説家になろう」にも掲載(異世界転生・恋愛12位) ※ アルファポリス完結ファンタジー8位。応援ありがとうございます。

処理中です...