最強騎士は料理が作りたい

菁 犬兎

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第三章

最終話 幸せの食卓

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リーンゴーン!リーンゴーン!

「エイ!ヤァ!トオ!」

「わっ!ちょっと!!強い強い!!アデ!」

アタタタ!もう!相変わらず手加減を知らないんだから。
僕は剣術は得意じゃないのに。

「ちょっとハスティ?真面目にやってよ!」

「あのね?何度も言ってるでしょ?僕じゃティナの相手にならないよ。僕以外と打ち合ってよ!」

「・・・・だって。お母さん忙しくてあんまり相手してくれないんだもん」

いや、お母さんと打ち合ったって勝てっこないよ。
いつも最後はべそかくんだから、いい加減やめときなよ。

「お兄ちゃん!お姉ちゃーん!もうすぐお母さんお仕事終わってご飯の準備するから手伝ってってー!」

「え!もうそんな時間?しまった!!お父さん帰って来ちゃうじゃない!!ハスティ!!」

「僕の所為なの?本当ティナは、勝手だよね。無理矢理付き合わせた癖に」

「お兄ちゃん抱っこ!」

「ハイハイ。お前はティナみたいにはならないでね?ユティア」

ここはサウジスカル帝国。僕達三兄妹が暮らしているサンチコアはその国の首都にあたる。僕の父は、この国のお城でお仕事をしている騎士団長なんだ。凄いでしょ?

そしてお母さんはサンチコアで大人気の料理店の店主で料理を作ってる。季節限定でだけど。

「おかあさーん!ただいまー!!」

「お疲れ様。あ、野菜洗うよ」

「おかえりなさい。ハスティ、ティナ、ユティア。あれ?怪我してます?」

怪我?怪我なんかしてたかな?ちょっと擦りむいただけだよ?

「ありゃー?ティナ、またハスティを相手に本気だしたんです?駄目ですよ?ティナは普通の子の数倍強いんですから、私に似て」

お母さんは昔、とても強い騎士だったんだって。
見た目はそんな風に見えないのに実際に戦うと本当に強いみたい。ティナがいつも悔しがってるみたいだから。

「全然強くないもん!!お母さんにだって一度も勝てないし」

「そうですねぇ。お母さん強すぎるのでティナは大人にならないと私には勝てないかもしれないですね?ドンマイ!」

お母さんって、人の励まし方下手だよね?あ、煽ってるのかな?ティナの闘争心に火をつける意味で。

「念の為消毒しましょう。ハイトさんが心配しますから」

「今度ギャドさんに打ち合ってもらお。あの人なら怪我しないし」

「ティナ。ギャドさんも騎士さんの指導係で毎日忙しいんです。邪魔しちゃ駄目ですよ?」

「でも私いずれ騎士になるって言ったらギャドさん喜んでたもん!お父さんは大反対してたけど・・・・」

当たり前だよ!男ばかりの騎士団に娘を入れたい父親なんかいるもんか!本当ティナって変わってるよなぁ。

「そうですねぇ?ハスティは料理人になると言ってますし、やはり血は争えませんねぇ」

「おかあさーん私も抱っこぉ」

「お!抱っこして欲しくば這い上がって来るのです!楽をしてはいけませんよ?」

「ティファ。何言ってるの?普通に抱っこしてあげて。そしてそんな教育方針が第2第3のティナを生み出すといい加減気付いて欲しいなぁ?」

「あー!お父さーん。わーい抱っこぉ!」

「ただいまユティア!今日も良い子にしてたかな?」

「してたぁー!白い生地ひたすら叩いてしばいてたー!」

「・・・・・・・ティファさん?」

「あ、そろそろ料理の続きを作らないとですね?ハスティ手伝って下さい」

お母さんお父さんにとても弱いんだよね。
僕知ってるんだ。言う事聞かないお母さんをお父さんすぐ大人しく出来るんだ。でも、どうやってるのかは分からないんだ。聞いても大人の事情とかで教えてくれないから。

「ティナ、手見せて」

「え?いや、でもぉ」

因みにティナもお父さんには逆らえない。お父さんいつもは穏やかだけど怒らせるととても怖いんだ。ティナは何度かお父さんが本気で怒る所見た事あるみたい。ティナお転婆だから。

「やっぱり、擦り切れてる。あの訓練棒ティナには大き過ぎるから。今度ティナに合うサイズのを買いに行こう」

「・・・・え?いいの?」

「あとちょっとで騎士入団試験を受けられる年齢になるからね。ギャドとヨシュアが楽しみにし過ぎてて困るなぁ」

結局お父さんも許しちゃうんだね?甘いよなぁ。まぁきっとティナなら大丈夫だと思うけどさ。

「今度お城に皆んなで行こう。ユティアの魔力も年々増えて来てるしそろそろお祖父ちゃんにみてもらった方がいいと思うんだ」

「「「お祖父ちゃん!!」」」

やった!!お祖父ちゃんに会えるんだ!僕お祖父ちゃん大好き!とっても優しいし、色んな魔法見せてくれるし子供の遊びも一緒にしてくれるんだ!!会ったら何しよう!

「・・・父は悲しい。父よりお祖父ちゃんの方が好きなんだね?」

「ち、違うよ!」

「そんな事ないもん!!お父さんも大好きだし!!」

「アハー!おとうさーん」

ユティアは明らかに分からずやってるね?でもナイスだよ!ここでへそ曲げるとお父さん後で面倒だから、ちゃんとフォローしておかないとね?僕達優秀!!

「はーい!ふざけてないでテーブル開けて下さーい!ご飯食べますよー!」

え?相変わらずご飯できるの早い。いつの間に?

「じゃあ僕、着替えるね」

「はーい皆、席ついて下さい」

今日のご飯は青菜の彩り和え物に芋と鶏肉のシチュー。特製のチーズはパンに塗るんだよね?コレ美味しいんだぁ。

「お待たせー!じゃあ皆食べよう」

「「「頂きまーす」」」

「はい!召し上がれ?」

お母さんのご飯毎日食べても飽きないんだ。いつも美味しいんだよ?この国でお母さんの料理を知らない人なんているのかな?お母さんが料理店を開く時期はいつも行列が出来るもんね?

「それにしても、宿舎の奴等この時期が終わればまたティファのご飯食べれるのに、お店に来たんだって?」

「はい。わざわざ並んでお金払って行きました。私稼いでます!!」

「・・・・僕。そんなに稼ぎが少ないかなぁ?」

「え!!違いますよ?!目的は稼ぐ事ではないですが、貯蓄は大事です!!」

お母さんお金貯めるの好きだよね。この前ベロニカさんとその話で盛り上がってたもんね?フィクスさんも稼ぎ、少ないのかなぁ?

「ねぇ。何でお母さんは騎士だったのに料理人になったの?勿体ないよ」

「あはは!そうですね?昔よくそう言われました。でも、私はティナみたいに剣を握るのが好きじゃなかったんです」

「そうなんだ?強いから好きで騎士になったんだと思ってた・・・・」

そういえば今まであんまりお父さんとお母さんの昔の話って聞いたことない。ギャドさんやヨシュアさんやフィクスさん達の馴れ初め話なら聞いた事あるのに。

「お母さんは、ここの国の人じゃないんだよね?どうやってお父さんと出会ったの?」

ん?何で二人共止まってるの?それで何で笑いあったの?
凄い気になるんだけど。

「そうですねぇ?ちょっと長くなるので、食べながら聞いて下さい。お母さん実は、最初敵国の捕虜としてこの国に捕らえられたんですけど・・・・・・」

「「「えええええええーーー!?」」」

ここはサウジスカル帝国サンチコア。
ここには陽気な住人達と、とても有名な料理人がいる。

彼女の名はティファ。

元最強騎士で、今は愛する家族に大好きな料理を毎日作っている。僕の、愛する母である。

「だから料理が作りたいって思ったんですよ?」

彼女は今日も幸せに生きている。
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