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運命を求めた男(雄大視点)
運命を求めた男1
その、脳が蕩けるほどの、甘く芳しい匂いを嗅いだ時。
俺は、ただただ、歓喜した。
これが、俺の運命のΩの香り--俺の為に存在する、ただ一人の番の匂い。
いままでの、孤独で苦しいばかりの日々は、今日この為にあったのだと、そう思った。
彼--僅かに垣間見えたその姿は、男性のΩのようだった--に出会い、彼を愛する為だけに、俺はこの世に生まれたんだと悟った。
俺の性器は一瞬にしてガチガチに熱く昂ぶり、口からは獲物を求める飢えた肉食獣のような荒い息が漏れた。
支配したい。
犯したい。
項を噛んで--番にして、閉じ込めてしまいたい。
体全身が、本能が、そう叫んでいるのが分かった。
……それ、なのに。
「--待って! 俺の運命!」
被っていた帽子を深く被り直し、顔すらこちらに判別させないようにして--俺の運命は、逃げだした。
必死に後を追おうとしたが、運命の番の香りにあてられて、すっかり腰砕けになった俺の足では、とても追いつかないくらい、彼の足は速かった。
待って。
待って。
俺の、運命。
俺の、唯一。
「--運命である君まで、俺を置いて行くのっ……!?」
泣き叫んだその声も。必死に伸ばした手も。
既に背中すら見えなくなった彼には、届かなかった。
『--ごめんなさい。雄大。お母さんを、許してね』
3歳の頃。俺は「運命のα」を見つけた母に、捨てられた。
『でもね……貴方も将来、αかΩ、どちらかに診断されたら、きっと私の気持ちが分かるわ。「運命の番」というのは、それだけ神聖で……特別なものなの。けして抗えないものなの。……だから、仕方ないのよ。たとえその結果、幼い息子を捨てることになったとしても、仕方ないのよ』
自分に言い聞かせるようにそう言って、艶やかに笑った母の顔は……俺が知らない「Ω」の顔をしていた。
『--いかないでっ! おかあさん! ぼくが、わるいことをしたなら、あやまるからっ! これからは、もっといいこになるからっ! ……ぼくをおいていかないで!!!』
必死に泣き叫びながら追い縋る俺を、振り返ることすらせずに、母は見知らぬαの男と共に去って行った。
『いいか、雄大。--お前は、あの愚かな女の息子だが、俺の血を継いでα性を持つ可能性があるから、家に置いてやってるんだ。中学で別のバース性と判断された時点で、宮本の籍から外すからそのつもりでいろ』
……残された俺を取り巻く環境は、どこまでも冷たいものだった。
政略結婚で母を娶った父親は、とても彼女を愛していたとは思えなかったが、自らの矜持を貶められること関しては敏感だった。
母の裏切りへの復讐のように、父は俺に対して冷酷な態度を貫いた。
母が出て行ってすぐに(恐らく母がいた頃から既に愛人だったのだろう)後妻として収まり、弟を孕んだ継母はなおのことだった。
家の使用人達も、父や継母の怒りを恐れてか、宮本の名を汚した母に対する怒りか、必要最小限の義務的な態度でしか俺と関わろうとはしなかった。
そして俺の孤独は、宮本の家庭でだけではなかった。
俺は、ただただ、歓喜した。
これが、俺の運命のΩの香り--俺の為に存在する、ただ一人の番の匂い。
いままでの、孤独で苦しいばかりの日々は、今日この為にあったのだと、そう思った。
彼--僅かに垣間見えたその姿は、男性のΩのようだった--に出会い、彼を愛する為だけに、俺はこの世に生まれたんだと悟った。
俺の性器は一瞬にしてガチガチに熱く昂ぶり、口からは獲物を求める飢えた肉食獣のような荒い息が漏れた。
支配したい。
犯したい。
項を噛んで--番にして、閉じ込めてしまいたい。
体全身が、本能が、そう叫んでいるのが分かった。
……それ、なのに。
「--待って! 俺の運命!」
被っていた帽子を深く被り直し、顔すらこちらに判別させないようにして--俺の運命は、逃げだした。
必死に後を追おうとしたが、運命の番の香りにあてられて、すっかり腰砕けになった俺の足では、とても追いつかないくらい、彼の足は速かった。
待って。
待って。
俺の、運命。
俺の、唯一。
「--運命である君まで、俺を置いて行くのっ……!?」
泣き叫んだその声も。必死に伸ばした手も。
既に背中すら見えなくなった彼には、届かなかった。
『--ごめんなさい。雄大。お母さんを、許してね』
3歳の頃。俺は「運命のα」を見つけた母に、捨てられた。
『でもね……貴方も将来、αかΩ、どちらかに診断されたら、きっと私の気持ちが分かるわ。「運命の番」というのは、それだけ神聖で……特別なものなの。けして抗えないものなの。……だから、仕方ないのよ。たとえその結果、幼い息子を捨てることになったとしても、仕方ないのよ』
自分に言い聞かせるようにそう言って、艶やかに笑った母の顔は……俺が知らない「Ω」の顔をしていた。
『--いかないでっ! おかあさん! ぼくが、わるいことをしたなら、あやまるからっ! これからは、もっといいこになるからっ! ……ぼくをおいていかないで!!!』
必死に泣き叫びながら追い縋る俺を、振り返ることすらせずに、母は見知らぬαの男と共に去って行った。
『いいか、雄大。--お前は、あの愚かな女の息子だが、俺の血を継いでα性を持つ可能性があるから、家に置いてやってるんだ。中学で別のバース性と判断された時点で、宮本の籍から外すからそのつもりでいろ』
……残された俺を取り巻く環境は、どこまでも冷たいものだった。
政略結婚で母を娶った父親は、とても彼女を愛していたとは思えなかったが、自らの矜持を貶められること関しては敏感だった。
母の裏切りへの復讐のように、父は俺に対して冷酷な態度を貫いた。
母が出て行ってすぐに(恐らく母がいた頃から既に愛人だったのだろう)後妻として収まり、弟を孕んだ継母はなおのことだった。
家の使用人達も、父や継母の怒りを恐れてか、宮本の名を汚した母に対する怒りか、必要最小限の義務的な態度でしか俺と関わろうとはしなかった。
そして俺の孤独は、宮本の家庭でだけではなかった。
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