42 / 59
運命を求めた男(雄大視点)
運命を求めた男26
しおりを挟む
「……水、飲む? カケ」
「……うん」
ヒートから解放された俺達に訪れたのは、本能から解放された後の、重苦しく気まずい空気だった。
「……他に何かいる? 取ってくるよ。俺」
少しでも、カケの好感度を回復させたくて、俺は甲斐甲斐しくカケの世話を買って出た。……我に返ったカケと向き合うことを、先延ばしにしたかったというのもある。
「……そこの、棚の中に……」
「うん」
「緊急用アフターピルが入ってるから……持って来てくれ」
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
どう見てもαにしか見えないカケが……そんなものを、わざわざ常備しているということは。
「………………うん」
少しの沈黙の後、水のペットボトルとピルを持って来て、カケに渡した。
「ありがとう……」
「…………」
ペットボトルの水でピルを流し込むカケを、絶望的な気持ちで眺めていた。
「後……悪いけど、体がべたべたで気持ち悪いから、濡れタオル持って来てくれないか」
「……うん」
洗面器にお湯を溜めて、タオルと共に運んだ。
「……俺が拭くよ。カケ」
「ああ……ありがとう」
どろどろに汚れたカケの体を、水気を絞った温かいタオルで拭く。
乾いた精液でかぴかぴに引きつる肌を綺麗にしているうちに、気がつけば目から大粒の涙が流れていた。
「雄大……? お前、何で……」
「……カケ、言いたくないなら、言わなくても良いんだけど……」
……同じ加害者である俺が、泣く権利なんかない。だけど……。
「カケ……昔、さっきのアフターピル使うような目にあったりしたの? そのせいで、男が駄目になってたんなら……俺……俺……」
………もしそうならば、俺は何て酷い行為をカケに強いたんだろう。
どれだけ、カケを傷つけたんだろう。
罪悪感でしゃくりあげて泣く俺に、カケは苦笑を漏らしながら、寝たまま手を伸ばして、慰めるように頭を撫でてくれた。
「……違うよ。馬鹿。あれは、万が一の為に親父が持たせてくれた奴。俺は、正真正銘、お前が初めてだよ」
「じゃあ……何で」
「俺のは、ただの発達性バース適応障害。脳にΩ因子が届かず、自分をΩと認められなかっただけ。……お前に抱かれて、大分治ったけどな」
カケの言葉は、さして俺の罪悪感を軽減させはしなかった。
「………じゃあ、カケは、自分がΩと受け入れられないまま、俺に抱かれてくれたの?」
「……ああ。つまらない理由で、お前を傷つけて、本当に悪いことを……」
「--つまらない理由なんかじゃないよ!」
寝ているカケの腹に、泣きながら縋りついて謝罪する。
「ごめん……ごめんね。カケ。……つらかったでしょう。自分の性を認められないで苦しんでいたのに、俺が執拗に運命のΩを探したせいで、カケをますます苦しませていたんだね。……それなのに、俺はヒート中のカケの元に押しかけて、こんな目に遭わせて……」
「……話を聞いてたか、雄大。俺の障害は、お前に抱かれれば治る程度のものなんだぞ。今はまだ完治はしてないけど、回数を増やせば、そのうちいつか普通のΩに戻れる。それが分かってて、俺はお前から逃げ続けたんだ。恨まれはしても、謝られる覚えはない。……謝るなら、迷惑をかけた管理人さんにしとけ」
「……寮の管理人さんには、後で適当な理由つけて謝罪しとくよ。……それはそれとして。何で、カケが自分が嫌な選択肢を選ばなかったことで、俺が恨む権利があるの? カケのことも、運命のΩのことも、俺が勝手に好きになって、執着しただけだよ。カケが気持ちに応えられなくても、仕方ないことでしょ……」
「……うん」
ヒートから解放された俺達に訪れたのは、本能から解放された後の、重苦しく気まずい空気だった。
「……他に何かいる? 取ってくるよ。俺」
少しでも、カケの好感度を回復させたくて、俺は甲斐甲斐しくカケの世話を買って出た。……我に返ったカケと向き合うことを、先延ばしにしたかったというのもある。
「……そこの、棚の中に……」
「うん」
「緊急用アフターピルが入ってるから……持って来てくれ」
その瞬間、頭の中が真っ白になった。
どう見てもαにしか見えないカケが……そんなものを、わざわざ常備しているということは。
「………………うん」
少しの沈黙の後、水のペットボトルとピルを持って来て、カケに渡した。
「ありがとう……」
「…………」
ペットボトルの水でピルを流し込むカケを、絶望的な気持ちで眺めていた。
「後……悪いけど、体がべたべたで気持ち悪いから、濡れタオル持って来てくれないか」
「……うん」
洗面器にお湯を溜めて、タオルと共に運んだ。
「……俺が拭くよ。カケ」
「ああ……ありがとう」
どろどろに汚れたカケの体を、水気を絞った温かいタオルで拭く。
乾いた精液でかぴかぴに引きつる肌を綺麗にしているうちに、気がつけば目から大粒の涙が流れていた。
「雄大……? お前、何で……」
「……カケ、言いたくないなら、言わなくても良いんだけど……」
……同じ加害者である俺が、泣く権利なんかない。だけど……。
「カケ……昔、さっきのアフターピル使うような目にあったりしたの? そのせいで、男が駄目になってたんなら……俺……俺……」
………もしそうならば、俺は何て酷い行為をカケに強いたんだろう。
どれだけ、カケを傷つけたんだろう。
罪悪感でしゃくりあげて泣く俺に、カケは苦笑を漏らしながら、寝たまま手を伸ばして、慰めるように頭を撫でてくれた。
「……違うよ。馬鹿。あれは、万が一の為に親父が持たせてくれた奴。俺は、正真正銘、お前が初めてだよ」
「じゃあ……何で」
「俺のは、ただの発達性バース適応障害。脳にΩ因子が届かず、自分をΩと認められなかっただけ。……お前に抱かれて、大分治ったけどな」
カケの言葉は、さして俺の罪悪感を軽減させはしなかった。
「………じゃあ、カケは、自分がΩと受け入れられないまま、俺に抱かれてくれたの?」
「……ああ。つまらない理由で、お前を傷つけて、本当に悪いことを……」
「--つまらない理由なんかじゃないよ!」
寝ているカケの腹に、泣きながら縋りついて謝罪する。
「ごめん……ごめんね。カケ。……つらかったでしょう。自分の性を認められないで苦しんでいたのに、俺が執拗に運命のΩを探したせいで、カケをますます苦しませていたんだね。……それなのに、俺はヒート中のカケの元に押しかけて、こんな目に遭わせて……」
「……話を聞いてたか、雄大。俺の障害は、お前に抱かれれば治る程度のものなんだぞ。今はまだ完治はしてないけど、回数を増やせば、そのうちいつか普通のΩに戻れる。それが分かってて、俺はお前から逃げ続けたんだ。恨まれはしても、謝られる覚えはない。……謝るなら、迷惑をかけた管理人さんにしとけ」
「……寮の管理人さんには、後で適当な理由つけて謝罪しとくよ。……それはそれとして。何で、カケが自分が嫌な選択肢を選ばなかったことで、俺が恨む権利があるの? カケのことも、運命のΩのことも、俺が勝手に好きになって、執着しただけだよ。カケが気持ちに応えられなくても、仕方ないことでしょ……」
102
あなたにおすすめの小説
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
【完結】王宮勤めの騎士でしたが、オメガになったので退職させていただきます
大河
BL
第三王子直属の近衛騎士団に所属していたセリル・グランツは、とある戦いで毒を受け、その影響で第二性がベータからオメガに変質してしまった。
オメガは騎士団に所属してはならないという法に基づき、騎士団を辞めることを決意するセリル。上司である第三王子・レオンハルトにそのことを告げて騎士団を去るが、特に引き留められるようなことはなかった。
地方貴族である実家に戻ったセリルは、オメガになったことで見合い話を受けざるを得ない立場に。見合いに全く乗り気でないセリルの元に、意外な人物から婚約の申し入れが届く。それはかつての上司、レオンハルトからの婚約の申し入れだった──
婚約破棄で追放された悪役令息の俺、実はオメガだと隠していたら辺境で出会った無骨な傭兵が隣国の皇太子で運命の番でした
水凪しおん
BL
「今この時をもって、貴様との婚約を破棄する!」
公爵令息レオンは、王子アルベルトとその寵愛する聖女リリアによって、身に覚えのない罪で断罪され、全てを奪われた。
婚約、地位、家族からの愛――そして、痩せ衰えた最果ての辺境地へと追放される。
しかし、それは新たな人生の始まりだった。
前世の知識というチート能力を秘めたレオンは、絶望の地を希望の楽園へと変えていく。
そんな彼の前に現れたのは、ミステリアスな傭兵カイ。
共に困難を乗り越えるうち、二人の間には強い絆が芽生え始める。
だがレオンには、誰にも言えない秘密があった。
彼は、この世界で蔑まれる存在――「オメガ」なのだ。
一方、レオンを追放した王国は、彼の不在によって崩壊の一途を辿っていた。
これは、どん底から這い上がる悪役令息が、運命の番と出会い、真実の愛と幸福を手に入れるまでの物語。
痛快な逆転劇と、とろけるほど甘い溺愛が織りなす、異世界やり直しロマンス!
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした
紫
BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。
実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。
オメガバースでオメガの立場が低い世界
こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです
強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です
主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です
倫理観もちょっと薄いです
というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります
※この主人公は受けです
義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!
ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。
「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」
なんだか義兄の様子がおかしいのですが…?
このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ!
ファンタジーラブコメBLです。
平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。
※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました!
えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。
※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです!
※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡
【登場人物】
攻→ヴィルヘルム
完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが…
受→レイナード
和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。