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初恋は気づかぬまま散った(10年後。さ何とか君視点)
初恋は気づかぬまま散った13
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「……やっぱりそこ、突っ込むか?」
ばつが悪そうな表情であさってな方向に視線を逸らす翔に、確信する。
……やっぱりこいつ、過去のあれこれを全部無かったことにしようとしてやがった!!
思えば翔は、昔からそうだった。
翔の、数少ないながらも最大の悪癖。
『翔、バドミントンのペア、俺と組もうぜ』
『ざけんな、清二郎! 翔のペアは俺だ!』
『……ラケット、もらい行ってくるな』
『『いや、だから、ペアどっちにするか決めろよ』』
こいつはーー都合が悪い状況になると、すぐ、逃げようとするんだ。
「逃げ方だけ、いっちょ前に成長しやがって……」
「いや、だってほら……何か居たたまれねーじゃん。今さら、さあ」
「っ翔! 俺は! 俺は、ずっと……」
憤りのままに告げようとした謝罪の言葉は、喉につっかえて上手く出てこなかった。
無かったことにしたいくらい嫌な過去を、今さら蒸し返しても、翔を嫌な気分にさせるだけなんじゃないか。
全て無かったことにして、昔のように接してくれる翔の優しさに感謝して、それ以上は言及すべきじゃないんではないか。
「猛……?」
困惑げにこちらを伺う翔の目の中には、嫌悪や怒りの色は無かった。
翔にとっては、全ては、終わった過去のことなんだろう。
それでも……俺にとっては、まだ終わってない。
俺はまだ、あの過去の後悔から抜け出せていない。
だから……言わないと。
終わらせないと、いけないんだ。
翔の為じゃなく……俺自身の為に。
「……俺はずっと、あの時の言葉を謝りたかった。最低なことを言った。……ごめん」
ようやく口にすることができた謝罪に、翔は目を円くした。
「………え?」
「ずっと後悔してた……今、思えば、翔が怒って俺から離れて行ったのも当然だと思う。それだけ、あの時の俺は、最低だった」
「ちょ、ちょっと待てよ。猛!」
何故か血の気の引いた顔をした翔が、俺の言葉を遮った。
「あの時の言葉って、何のことだ? 俺、お前に謝られる覚えなんかないぞ………。そもそも俺、お前に怒って離れたわけじゃねぇし」
………………は?
「……お前が襲われた後、俺がΩを一括りにして最低だって言ったから、怒って離れたんじゃねぇのか?」
「何でそんなんで、怒んだよ。お前が俺がΩだって気づいているわけなかったし、言い方はあれだったけど一応あれ俺を慰めようとしてくれたって分かってたし。そんな言い方すんなって注意はしたけど、最初から全然怒ってねぇよ」
「じゃ、じゃあ、何で離れて……っ!!」
「いや、普通に………クラス、替え?」
「はあああああああ?」
過去の苦い記憶が、後悔が、がらがらと音をたてて崩れ去って行くのが分かった。
俺は……俺は、一体何の為に、ずっと……!
ばつが悪そうな表情であさってな方向に視線を逸らす翔に、確信する。
……やっぱりこいつ、過去のあれこれを全部無かったことにしようとしてやがった!!
思えば翔は、昔からそうだった。
翔の、数少ないながらも最大の悪癖。
『翔、バドミントンのペア、俺と組もうぜ』
『ざけんな、清二郎! 翔のペアは俺だ!』
『……ラケット、もらい行ってくるな』
『『いや、だから、ペアどっちにするか決めろよ』』
こいつはーー都合が悪い状況になると、すぐ、逃げようとするんだ。
「逃げ方だけ、いっちょ前に成長しやがって……」
「いや、だってほら……何か居たたまれねーじゃん。今さら、さあ」
「っ翔! 俺は! 俺は、ずっと……」
憤りのままに告げようとした謝罪の言葉は、喉につっかえて上手く出てこなかった。
無かったことにしたいくらい嫌な過去を、今さら蒸し返しても、翔を嫌な気分にさせるだけなんじゃないか。
全て無かったことにして、昔のように接してくれる翔の優しさに感謝して、それ以上は言及すべきじゃないんではないか。
「猛……?」
困惑げにこちらを伺う翔の目の中には、嫌悪や怒りの色は無かった。
翔にとっては、全ては、終わった過去のことなんだろう。
それでも……俺にとっては、まだ終わってない。
俺はまだ、あの過去の後悔から抜け出せていない。
だから……言わないと。
終わらせないと、いけないんだ。
翔の為じゃなく……俺自身の為に。
「……俺はずっと、あの時の言葉を謝りたかった。最低なことを言った。……ごめん」
ようやく口にすることができた謝罪に、翔は目を円くした。
「………え?」
「ずっと後悔してた……今、思えば、翔が怒って俺から離れて行ったのも当然だと思う。それだけ、あの時の俺は、最低だった」
「ちょ、ちょっと待てよ。猛!」
何故か血の気の引いた顔をした翔が、俺の言葉を遮った。
「あの時の言葉って、何のことだ? 俺、お前に謝られる覚えなんかないぞ………。そもそも俺、お前に怒って離れたわけじゃねぇし」
………………は?
「……お前が襲われた後、俺がΩを一括りにして最低だって言ったから、怒って離れたんじゃねぇのか?」
「何でそんなんで、怒んだよ。お前が俺がΩだって気づいているわけなかったし、言い方はあれだったけど一応あれ俺を慰めようとしてくれたって分かってたし。そんな言い方すんなって注意はしたけど、最初から全然怒ってねぇよ」
「じゃ、じゃあ、何で離れて……っ!!」
「いや、普通に………クラス、替え?」
「はあああああああ?」
過去の苦い記憶が、後悔が、がらがらと音をたてて崩れ去って行くのが分かった。
俺は……俺は、一体何の為に、ずっと……!
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